VOL. 20
● 1年戦争
第7話 【攻防】
年も変わって3月上旬に裁判所から「期日呼出状」が郵送されてきて第1回目の調停は、3月25日と決まった。調停を申請してから当方の請求内容と主張の根拠を纏め直し、A4用紙で49頁分の資料を用意して準備万端です。そしてこの調停開始をもって『石原軍団損保』との物損交渉の外交は完全に遮断される事となりました。
提出用資料 | |
P1〜P5 | 賠償交渉経過まとめ ・・・ 加害者・被害者の主張 |
P6〜P9 | 加害者側(石原軍団損保)からの全提示資料 |
P10〜P11 | 被害車両写真(事故前状態) |
P12〜P13 | 被害車両写真(事故後状態) |
P14 | 平成17年1月現在の中古車市場価格資料 |
P15〜P17 | 修理費用見積もり (2社提示分) |
P18〜P19 | 第1回請求カスタム費用 |
P20 | 最終請求カスタム費用 (申告漏れ分 追加修正) |
P21〜P49 | カスタム部品 領収書控え |
請求内容 | ||
過失割合(被害者:加害者) | 100:0 | |
請求金額 | 車両 | \1,680,000 |
カスタマイズ費用 | \2,990,064 | |
装具費用 | \71,736 | |
引上げ費用 | \21,000 |
3月25日当日、裁判所に早めに到着して『引手倉君』と『石原軍団損保』の到着を待ちます。調停が行われるフロアの各個室部屋の殆どは、消費者金融との調停で占められていました。皆さん、ローンでカスタマイズをするのも結構ですが、ご利用は計画的に!
ほどなくして『引手倉君』が到着。ズボンの後ろポケットに「期日呼出状」を突っ込んで明らかに「何で自分がこんな場所に呼ばれなければならないんだ!」という顔をしています。常識ある社会人なら社交辞令でも怪我の回復具合でも聞きそうなものですが一切の挨拶なし。おそらく外交が遮断された事で『石原軍団損保』から何も喋ってはいけないという指示が出ていたと思われます。うかつな事を喋って交渉が不利になってはたまりませんからね。続いて『石原軍団損保』が到着。しかし今までの担当者ではなく、新しく課長代理になった『佐賀さん(仮名)』から名刺をいただく。「さては前任の課長代理は飛ばされたか?」と思いましたが真相は分らず終い。私が追求したい真相はそんな事ではなくて事故発生原因と賠償請求の是非です。
調停は当事者同士が一同に会して自らの主張を述べる事は出来ません。必ず個別に調停委員(2名)を介して歩み寄りを求めるものです。しかし、こちらは安易な譲歩をする気はない為、作成した資料を一部は裁判所に、もう一部は『石原軍団損保』に提示しました。そして事故発生状況から賠償交渉経過、請求内容とその根拠を時間をかけて調停委員に説明していきます。やっぱりというか調停委員の第一声は「凄い資料ですね。今まで調停でこれだけの資料を準備してきた人はいませんよ」というものでした。それはそうでしょう。こちらは裁判をヤル気で準備してきたのですから。
また調停委員の言う事には「大将さんの気持ちは分らないでもありませんが、調停はあくまでも双方の歩み寄りによって双方が納得した状態で和解を得るものです。事故にあわれて、これだけの資料を作成してきた努力やバイクへの思い入れは察するに余りありますが、この請求内容は実現不可能でしょう」と。こちらもそんな事を言ってくるのは先刻承知の上なので、「当方の要求の満額回答が希望ですが、こちらも譲歩しない訳ではありません。しかし、それには先方の主張の具体的根拠や事故発生原因を明確にしてもらいたいという事です。」と応えて1回目の調停は終了。『石原軍団損保』に渡した資料は持ち帰って精査してもらう事になりました。
約1ヵ月後に第2回目の調停が行われましたが話は平行線のまま。私からはカスタム代金として請求している金額は、部品の装着からの経過年数によって評価損が発生していると考えて請求金額を減額する譲歩案を提示しますが、『石原軍団損保』は納得しません。
調停委員:「壊れたバイクの部品なんかは売って現金化することは出来ないのですか?」
「その売却代金で不足分を補う事で譲歩しませんか?」
大将: 「確かに今はネットオークション等で部品の売買を行うことが流行っています。しかし私のバイクは希少車で全国にオーナーがそれほど居ません」
「そんな中で誰に売るというのですか?そして壊れたバイクでどれだけの利用できる部品があるというのですか?」
「『石原軍団損保』の方にも伝えていただきたいのですが、そこまで言うのでしたらそちらで売却先を見つけてきて下さい」
こちらも『石原軍団損保』がどんな根拠を元に支払い提示額を算出し調停交渉の中で何を要求したいのか全く見えないため、書面での回答を要求しました。2回目の調停が終わっても先方から全く譲歩案が提示されず終了してしまいました。
3週間後に第3回目の調停が行われ調停委員から私に対して大幅な譲歩をするよう勧告されました。こちらには全く非が無い為、拒否します。
調停委員:「あなたのやり方は調停には向いていません。調停は双方の譲歩をもって成立するものです。」
「そんなに譲歩するのがイヤなら最初から裁判をすれば良かったじゃないですか!」
大将: 「こちらは裁判をする気で準備をしていたのを『石原軍団損保』が最終的に非を認めて請求に応える事を期待して調停にしたのです。」
「しつこく言いますが、私はお金が欲しいのではありません。壊されたバイクを元通りに直して欲しいのです。」
「『石原軍団損保』が提示する金額で修理可能であるのなら先方の責任において修理してくれれば譲歩しましょう。まぁ、無理だと思いますけどね。」
「譲歩とおっしゃいましたが3回の調停において『石原軍団損保』からどんな譲歩案がありましたか?何も無いでしょ?」
「双方の提示金額の中間で妥結する事を目的に、先方が最初から少ない金額を提示してくれば損をするのは私でしょ?」
「こちらとしては請求金額の内、普通車1台分相当の大幅譲歩案も提示しているんです。カブ1台分じゃないんですよ。普通車1台分ですよ。」
「とにかく、あなた方が説得するべき相手は私ではなく、『石原軍団損保』です。」
さすがの調停委員もこれには黙ってしまいました。
こちらから提示した大幅譲歩案以上の譲歩をする気は無い事を『石原軍団損保』に再度伝えてもらい、次回での決着を目指す事になりました。