知っているようで意外と知らなかったり、勘違いをしているのが「歯の知識」です。比較的身近な事柄についてできるだけわかりやすく解説してみます。


歯と全身との関係その1
  「歯周病と糖尿病」の関係

 歯周病は歯を支える組織(歯肉・歯槽骨等)の炎症が主原因になって起こる病気です。慢性炎症は体に悪影響を与えることから、糖尿病・心筋梗塞・心内膜炎・肺炎・未熟児や早産等と関係があることがわかっています。
 以前から糖尿病になると重症の歯周病にかかりやすいことが知られていましたが、歯周病を治療すると血糖値のコントロールがうまくできるようになり、糖尿病改善に効果があることがわかってきました。
 糖尿病になると高血糖の状態が長く続くため、次のような状態が起こり、歯周病になりやすくまた重症になると考えられています。
  @白血球の機能が低下する→細菌を死滅させる機能が弱まる.
  A傷の治りが悪くかつ遅くなる
  B炎症に対する過剰反応が起こる
  C新陳代謝機能が低下する
 
血糖値のコントロールがうまくできている糖尿病患者では歯周病治療も著明な効果が現れます。また歯周病治療を行うことにより糖尿病患者の血糖値が下がり、糖尿病が改善されたという結果も現れているようです。その原因として歯周病は歯を支える組織(歯肉・歯槽骨等)の炎症であり、その炎症によって生成される物質が細胞のインスリンに対する抵抗力を高め、その結果として血糖値が上がると考えられています。(一部中日新聞より引用)
 


白脇小保健委員会講話  「歯を大切にしよう」

こちらをクリックして表示してください→kouwa.pdf へのリンク
PDFファイルを見るにはAdobeReader(無償)が必要です。ダウンロードはこちらから→  



白脇小児童からの質問回答集


 私が学校歯科医をしている浜松市立白脇小学校では平成15年度の学校保健委員会のテーマを「歯を大切にしよう」と定め、平成15年12月1日に委員会が開催されました。そのねらいとしては歯の大切さについて認識を深め、日々の生活の中で歯を大切にする態度を養うことにあります。具体的には
・ 歯の役目について理解する
・ 自分の歯にあった歯みがきの仕方を考える
・ 歯の大切さについて理解し、日々の生活の中で歯を大切にするように実践する

ということを目標としました。保健主事・養護教諭を中心にして6年生の学校保健委員が4月に行われた歯科健診結果の分析や児童全員に行った歯みがきに関するアンケートの集計を行いました。そして保健委員会には6年生全員が参加し、そこで学んだものを6年生自身が下級生に伝え、さらに家庭へも情報伝達していくということでした。
 当日は私も20分ほど時間を頂いて「なぜ歯を大切にしなくてならないのか」というお話をしましたので、これからその話の概要と白脇小学校の児童の皆さんからたくさんの歯と口に関する質問をもらったのでそれに対する回答を書いてみました。

白脇小学校のみなさんからの質問
【むし歯に関するもの】

Q1どうしてむし歯になるの
 皆さんのお口の中にはむし歯菌が住み着いています。普段は悪さをすることはありませんが、甘いもの(糖分)が口の中に入ってくるとそれを分解して酸を作ります。その酸が歯の表面を溶かし、むし歯菌はさらに歯の中に入って行き、歯がぼろぼろになるのです。これがむし歯です。

Q2 歯みがきしてもむし歯になるのはどうして
 むし歯菌の住みかである歯垢はベタベタしたもので歯の表面につくとなかなか取れません。従って歯みがきをしても歯垢がとりきれないで残っていることが多いのです。特に歯のかみ合わせの溝の中や歯と歯の間などは歯ブラシの毛先が届きにくい部分です。こうした部分の歯垢が取れなくてむし歯になります。どうですか?皆さんのむし歯はどこにできていますか?このような部分ではないでしょうか?100%歯垢が除去できればむし歯はできないはずです。歯磨きをしない人はほとんどいないでしょう。ところが日本人の9割以上の人はむし歯を経験しています。それほど歯みがきだけでむし歯を予防することは難しいのです。
 また逆に「あまり一生懸命歯みがきしないのにむし歯にならない」という人もいます。これはその人のは自体の固さや食べ物の好みなどの生活習慣に大きく関係していることを意味しています。従ってむし歯を予防するには「歯みがき」「歯を硬くする」「食習慣」の3つのことを考えていかなくてはいけないのです。現在ではフッ化物を利用して(フッ素塗布・フッ素洗口)歯の表面を硬くしてむし歯に対する抵抗力をつけることがもっとも有効だと考えられています。

Q3 動物はむし歯になるの
 野生の動物がひどいむし歯になったという話は聞きません。しかし人間に飼われている動物はむし歯や歯周病にかかります。野生の動物のえさは加工されていないので硬く、糖分も多量に含まれていないのに対し、人間によって作られたえさは天然のものと比べ柔らかく、歯につきやすくなっています。また犬や猫などはお菓子も含め、人間と同じものも食べることも多いので、むし歯を持った動物が増えているようです。

Q4 むし歯は治るの
 通常は一度むし歯で穴の開いてしまった歯は元に戻りません。つまり治らないのです。従ってバイ菌に侵されてぼろぼろになった歯の部分はきれいに取り除いて人工的なものを詰めたり、かぶせたりして治します。
 しかし最近の研究でわかってきたことがあります。それはほんの少しむし歯になりかかった歯、つまり酸によって歯の表面が少し溶け始めた状態では条件によっては唾液中のカルシウムによって再石灰化が起こることが確認されています。つまり治るのです。というよりむし歯の進行をとめることができるといったほうが良いのかもしれません。
 したがって以前は小さな初期のむし歯は早めに見つけてすぐ詰めたほうがよいといわれていましたが、最近ではプラークコントロールやフッ素応用を行い、削らないで経過を観察する方法をとることも多くなってきています。

Q5 むし歯になりやすい食べ物とは
 前にもお話したようにむし歯菌は糖分を分解して酸を作ります。従って糖分をたくさん含む食べ物がむし歯になりやすい食べ物といえます。甘いもの、つまりお菓子やジュースは砂糖をたくさん含んでいますから、一番むし歯を作りやすいものです。スポーツドリンクなども意外に多量の砂糖を含んでいます。スポーツの時たくさんのスポーツドリンクを飲む人の中には小さい子と同じように歯の根元に一度にたくさんのむし歯ができてしまう人がいるので注意が必要です。
 では砂糖でなければよいのかというとそうでもありません。果物には果糖といわれる糖分が含まれていますが、やはりむし歯菌は果糖からも酸を作り出します。したがって果物や果物から作った100%のジュースでもむし歯になるのです。
 しかしキシリトールなどの人口甘味料からは酸が作られません。さらにむしば菌の働きを抑制する作用があるといわれていますので、キシリトールが入っているものはむし歯になりにくい食べ物といえるでしょう。
 糖分が入っているとむし歯になるからといって塩分なら良いだろうと考える人がいるでしょう。確かにむし歯にならなくても塩分の取りすぎは生活習慣病の原因になりますので、糖分と同じように塩分・油分の量にも注意が必要です。

Q6 むし歯菌はどこからくるの
 生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはむし歯菌はいません。成長する過程でお母さんが口移しで食べ物を与えたり、同じスプーンやお箸を使ったり、またかわいいからといってチューッとキスしたりすることにより、大人の口の中からむし歯菌が感染するといわれています。いったんむし歯菌が口の中に入り込むとずっと住み着いてしまうのです。
 むし歯菌の感染を完全にシャットアウトすることは現実的には無理かもしれませんが、同じスプーンを使わないように注意したり、お父さん・お母さんの口の中を清潔に保つことでかなり効果があることがわかっています。

【歯のはえかわりについて】

Q1 歯はなぜ抜けたりはえたりするのか
 人間の顎の骨は高校生くらいまで成長して大きくなります。あごが大きくなるにつれて必要な歯が必要な本数はえてきます。さらにあごが大きくなると乳歯より大きな永久歯がはえてきて機能を果たすようになります。神様のおかげで人間の歯は非常に都合よくできているのです。答えになっていないかな?

Q2 歯が一本も抜けていないが・・・(1年生)
 1年生の多くは一番奥に6歳臼歯という大きな歯がはえ、前の乳歯がはえかわってくる時期ですが、人によって多少遅かったり、早かったりします。1〜2年くらいは、ずれることはあります。ただ生まれつき永久歯の本数が足りない人もいますので、一度レントゲン検査をして永久歯の位置と本数を確認すると良いでしょう。

Q3 乳歯はどうしてぐらぐらになってくるのか
 乳歯の下には永久歯のもとが骨の中に埋まっています。骨の中で永久歯がだんだん形ができてきて出てきます。その時乳歯の根をとかしながら出てくるのです。そのため乳歯の根はだんだん短くなり、支えが無くなってぐらぐらしてしまいには抜けてしまうのです。

Q4 大人の歯は抜けるともうはえてこないのはなぜ
 人間の歯は乳歯と永久歯と2種類しかないからです。一般に下等動物ほど何回も歯のはえ代わりがあるといわれています。サメなどでは歯がかけた場合に、次々と次の歯がすぐ出てくるように構造になっています。

Q5 乳歯と永久歯の数は
 原則として乳歯は全部で20本、永久歯は28本(親知らずを含めると32本)です。

Q6 いつごろまでに子供の歯が全部ぬけていたらよいのか
 一般的には12〜13歳くらいで永久歯の歯並びになるといわれていますが、Q2でも書きましたが、歯のはえかわりの時期は人によって1〜2年の差が出てきます。

Q7 友達はみんな歯が抜けたのに自分の歯は全然ぐらぐらしてこないが
 前の質問でも答えましたが一番多いのは人によって抜ける時期がずれることがあるためです。これは心配することはありません。しかし骨の中の永久歯の位置がずれていたり、もともと永久歯が先天的に無い場合があります。一度歯科医院でレントゲンを取ってみるのが良いでしょう。

【歯みがきに関するもの】

Q1 朝と夜歯みがきしているが2回したほうがよいのですよね
 もちろんです。しかし2回歯みがきすればそれでよいというものではありません。食事をして数十分で歯垢ができ始めるといわれています。従ってむし歯・歯周病の原因となる歯垢を取り除くということからすれば、食事の後できるだけ早く歯みがきをすることが必要です。また夜寝ている間は唾液の分泌が少なくなり、むし歯・歯周病が進行しやすい状況になります。そうしたことから考えると毎食後と夜寝る前に歯みがきをするのが理想といえます。

Q2 歯みがきは何分くらいすればいいの
 これも歯みがき回数と同じく、何分と決められるものではありません。しかし上、下、前、奥、裏、表と全部きれいにするにはどんなに早くやっても5分はかかるでしょう。できれば10分くらいかけてゆっくりと丁寧に行いたいものです。一度時計で時間を測りながら歯みがきしてみると良いでしょう。意外と時間のたつのは遅いものです。自分は3分くらい歯みがきしているよ、という人はおそらく1分そこそこしか磨いていないことがわかると思います。

Q3 歯をみがく時、歯みがき粉はつけたほうがいいの
 歯みがき粉の成分として主なものは発泡剤・研磨剤・香料・湿潤剤・粘着剤などですが、むし歯予防の目的でフッ素が入ったもの、知覚過敏の予防のための薬剤が入ったものなど、それぞれの目的を持っていろいろな薬剤が含まれていることが多いのです。したがって歯みがき剤をつければそれらの薬の効果が期待できます。しかしあまりたくさんつけすぎると口の中が泡ぶくだらけになってしまって、長くみがけません。結果としてさっぱりした感じはするものの一番大事な、「歯垢をとる」ということがおろそかになってしまうことになります。
 歯ブラシの頭の部分の4分の1くらいを付けてみがくか、最初は何もつけないで充分に時間をかけてブラッシングし、最後の1分くらいで少量の歯みがきペーストをつけてみがく、このような方法を私はお薦めします。

Q4 歯をみがく時、おじいちゃんは塩をつけてみがくけどいいの
 塩はシュウレン作用といって歯ぐきを引き締める効果がありますので悪くは無いと思います。歯みがき粉の中にも塩が含まれているものもあります。ただあまりこれにこだわらないほうが良いでしょう。

Q5 歯ぐきはみがいていないけどいいの
 歯周病で歯ぐきが腫れているような場合、歯と一緒に歯ぐきを磨く(マッサージをする)ことによって、腫れが取れ引き締める効果があります。しかし健康な歯ぐきの場合には歯ブラシが当たりすぎると歯ぐきが下がってしまって知覚過敏などの原因になることがあります。したがって歯と歯ぐきの境目を磨くつもりでブラッシングを行えば、適度な刺激が歯ぐきに伝わるはずですので特に意識して歯ぐきを磨かなくてもよいでしょう。

Q6 歯みがきすれば甘いものを食べても大丈夫なの
 ブラッシングが本当に完璧にできて歯垢が100%除去できれば理論的にはむし歯はできないはずです。しかし現実にはそれほどの完璧なブラッシングができる人はまずいないと言っても過言ではないでしょう。それほどブラッシングは奥の深いものなのです。歯みがきをするということと歯垢が取れるということは違うのです。歯磨きは大切なことですが過信してはいけません。

【その他】

Q1 歯の役目ってかむことだけなの
 歯の一番大事な役目は噛んで物を食べることです。しかし歯には次のような重要な役目があります。
・ 顔の表情を作る・・・笑った時、怒った時など感情を表現するのに役立ちます。
・ 物を飲み込む(嚥下)・・・私たちが噛んでこなれたものを飲み込む時、舌を前の歯の裏側や上あごの部分に押し付けます。歯が無くても飲み込めないことはありませんが、むせたり、頬や唇の筋肉に必要以上の負担がかかってきます。したがって食べると言う一連の動作には歯は無くてはならないものと言えます。
・ 言葉の発音に必要・・・もし歯が無いと息が抜けてしまってうまくしゃべれないのは容易に想像できると思います。
・ 歯を食いしばって力を出す・・・重たいものを持ったりする時に口をあいたまま力を入れることができますか。やはり食いしばるでしょう。歯を食いしばることによって強い力を出すことができるのです。
・ 脳への刺激・・・噛むことによって脳に刺激が加わります。チューインガムを噛んだりすると眠気がとれます。よく噛む子供は頭蓋骨が発育し、結果として脳も発達してきます。つまり頭がよくなるということです。さらに8020(80歳で20本の使える歯を残すこと)を達成しているお年よりはとても元気で、自立した質の高い生活を送られている方が多いという調査結果が出ています。
 歯にはこうした役目があり、人間が人間らしく生きていく源といってもよいでしょう。

Q2 歯はどのくらいじょうぶなの
 歯の表面のエナメル質は人間の体の中で一番硬い組織です。私たち歯科医師が石のように硬いエナメル質を削るには石かダイヤモンドを使います。しかし歯みがき剤に含まれている研磨剤で強い力でごしごし歯みがきすると、何年か後には削れてくることもあるので注意が必要です。

Q3 歯はなにからできているの
 歯の主成分はカルシウムとリンです。そしてこれらが結合したハイドロキシアパタイトという結晶からできています。

Q4 八重歯になるとどうなるの
 八重歯というのは最後にはえてくる糸切り歯がはえるスペースが無くて外側に出てはえてきたものをいいます。まず見た目が悪いです。欧米では八重歯は悪魔の歯といわれ大変嫌われます。また八重歯になると隣の歯との隙間に歯垢が溜まりやすく、むし歯や歯周病が起こりやすくなります。場合によっては唇の裏側が八重歯によって傷がつくこともあります。

Q5 なぜ糸切り歯があるの
 肉食動物のキバのなごりだといわれています。したがってキバの役目と考えればよいでしょう。先端がとがった形をしているので、ものに噛み付いて引きちぎったり、糸を噛み切ったりするのに適しているから、糸切り歯と名がついたのでしょう。また糸切り歯は顔の表情に大変重要な役割を果たしています。もし糸切り歯がないと口元に張りが無くなり、覇気の無い顔立ちになります。

Q6 親知らずは全員はえるの
 必ずしもそうとはいえません。現代人はだんだんあごが小さくなり、一番奥に位置している親知らずがはえるスペースが無くなってきており、横に曲がってはえたり、一部だけ顔を出したり、完全に顎の骨の中に埋まって出てこなかったり、場合によっては生まれつき親知らずがまったくない人もいます。

Q7 歯並びの悪い人と良い人がいるのはどうして
 いろいろな原因があるのですが、一番大きく関係しているのは顎の骨の問題でしょう。一般に顎の骨が大きくて頑丈な人は良い歯並びをしているようです。顎が小さくて歯が並ぶスペースが十分に無い人の場合には叢生といってジグザグの歯並びになることが多いようです。

Q8 どうしたら歯が丈夫になるの
 小学生になるとまだはえていない永久歯も含めてほとんど歯の頭の部分は出来上がっているのです。つまり皆さんがお母さんのおなかの中にいる時にお母さんからもらう栄養や小さなうちの栄養状態によって決まってしまうのです。従って小学生以降になって自分の歯を丈夫にするというのは現実には不可能だと言えます。しかし、フッ素洗口やフッ素塗布によって歯の表面を硬くしてむし歯に対して抵抗力をつけることはできます。

Q9 前歯はギザギザしているけど、大人になったらどうなるの
 はえたての前歯は「発育葉」といって山型にギザギザしています。ところが大人になるにつれて下の歯とかみ合うことにより、少しずつ磨り減り、ギザギザが消失していくのです。これを咬耗といいます。

Q10歯ぐきがやせるのはなぜ
 大きく分けて二つの理由が考えられます。一つは歯周病の進行に伴って歯が埋まっている骨が吸収し、それに伴って歯ぐきが下がっていくのです。もう一つは歯ブラシの使い方が強すぎたり、ブラッシングの方法が間違っていたりして必要以上に歯ぐきに刺激が加わりすぎて、歯ぐきが下がっていくのです。

Q11歯並びが悪いとどうなるの
 まずブラッシングがやりにくくなりますので歯垢が残りやすくなります。従ってむし歯や歯周病が起こりやすくなります。そして歯並びは言葉の発音と密接な関係がありますので、歯並びが悪いときれいな発音をすることが難しくなります。さらにひどい場合には唇・頬・舌などに傷を作ることもあります。また歯並びは顔の表情にも関係しますので、歯並びが悪いと当然外観が悪くなりますので他人に与える印象もずいぶん変わってきます。

Q12歯はなぜいろいろな形があるのか
 奥歯は専門用語では「臼歯」と言いますが、親知らずを除くと上下左右それぞれ4本ずつあります。奥の2本を「大臼歯」、手前の2本を「小臼歯」と言い、その名の通り臼のような形をしており、食べ物をすりつぶすのに都合の良い形をしています。
 前歯は専門用語で「切歯」と言い、上下左右それぞれ3本ずつあります。真ん中の歯を「中切歯」、隣の歯を「側切歯」、さらにその隣を「犬歯」と呼びます。これらは食べ物を噛み切るのに都合の良い形をしています。前でものを噛み切って小さくし、奥でさらに噛み砕いて飲み込みやすくする、という一連の動作がスムーズに行われるような形や配列をしています。

Q13フッ素ってなに
 フッ素は自然界に存在する微量元素で人間にとって必要不可欠なもので、歯や骨を作るのに必要な元素です。小魚などの海産物、お茶、野菜などに多く含まれています。フッ素にはむし歯予防効果がありますが、この場合のフッ素はフッ化ナトリウムという化合物で体内に取り込まれます。そして歯質と反応してフルオロアパタイトという硬い組織をつくり、酸に対する抵抗力ができます。

Q14歯を大切にしなかったらどうなるの
 私が平成15年12月に白脇小学校保健委員会で行った講話を参考にしてください。

白脇小児童からの質問回答集の最初に戻る


白脇小H15歯科健診結果


 私が歯科校医を勤める浜松市立白脇小学校でH15年12月1日に学校保健委員会が「歯を大切にしよう」というテーマで開催されました。鈴木美智子養護教諭によってまとめられた結果を6年生の保健委員が委員会の席上発表を行ったので、その結果を掲載します。






G:要精検 歯科医師による診断が必要な歯周疾患を認める者。(歯石の沈着があって
歯肉に炎症のある者。広範囲に歯肉の炎症を認める者。歯周炎の疑いが
るものなど。
GO:要観察 歯肉に軽度の炎症症状を認める者で定期的な観察が必要な者。注意深い
口腔清掃により炎症症状が消退するであろう程度の歯肉炎の者。



歯垢1:若干の付着 歯面の1/3以下に歯垢の付着を認める者で、口腔清掃指導を要すると判断
される者。
歯垢2:相当の付着 歯面の1/3以上に歯垢の付着を認める者で、口腔清掃指導を要し、場合
によっては生活指導や健康相談を行う必要のある者。


【解説】 浜松市立白脇小学校のむし歯・歯肉炎の罹患率は浜松市内の小学校の中でほぼ真ん中くらいの位置にあります。永久歯のむし歯は少ないように見えますが、学年ともに増加しているのが気になります。処置を完了した子を含め、むし歯になった子供の割合は全学年ともかなりの割合を示していて、処置率は上がっているもののむし歯自体の発生は相変わらず多いことがわかります。歯肉炎についてはGとGOを含めるとやはり学年ともに増加しているのがわかります。また歯垢の付着状態とほぼ同じ増加傾向を示しています。

健診結果の最初に戻る


白脇小児童の歯みがきアンケート結果

 白脇小学校生徒全員にとったブラッシングに関するアンケート結果を鈴木美智子養護教諭がまとめてくれましたので掲載します。

















【解説】
 歯みがき回数については1日2回が圧倒的で約7割、1回が2割、3回が1割となっています。歯みがき時期については朝、夜、寝る前がほとんどで昼がわずか4%でした。つまり小学校にいる時間帯ということで昼食後の歯みがきをどうするか、今後の課題といってよいでしょう。1回の歯みがきにかける時間については7割ほどが3分くらいという回答でしたが、ほとんどの人の場合実際に磨いている時間より時間が長く感じるものであるということと、歯みがきで大事なことは歯垢が取れることであり、何分やればそれでよいというものではないことを理解してもらいたいと思います。歯垢染色液を用いて磨き残しをチェックしてみる機会を持つことが必要でしょう。うちの方による仕上げ磨きについては7〜8歳ごろまでは必要だとされています。すくなくとも自分で歯みがきをした後の点検はしてあげるのがよいと思います。


歯みがきアンケート結果の最初に戻る



知覚過敏

 第一回目は「知覚過敏」です。冷たい水を飲んだり、甘いものを食べたり、歯ブラシが当たった時に歯の根元がツッキィーンとしみるあれです。その原因・対処法などを考えてみましょう。
 正しくは
「歯頚部知覚過敏症」あるいは「象牙質知覚過敏症」と言われます。


【知覚過敏の原因と起こる理由】
 ブラッシングの際、強い横磨きを行ったり、必要以上に歯肉マッサージを行うと、歯肉が下がって歯根が露出してきます。この部分は歯冠表面のエナメル質と比べると柔らかく、不正なブラッシングで簡単に削れてしまい、内層の象牙質がむき出しになってしまいます。
 またエナメル質は人体で一番硬い組織ですが、歯磨剤を大量に使い、強い横磨きを行うと、歯磨剤に含まれる研磨剤の働きにより、やはり削れて中の象牙質が露出してきます。
 象牙質には象牙細管という管があり歯の神経(歯髄)までつながっています。象牙質が露出した部分に冷たい水などが当たると、その刺激が象牙細管の中の伝達物質を通して歯の神経(歯髄)が伝わることによって知覚過敏が発生すると考えられています。
 





強い横磨きにより歯肉が退縮し、歯根が見えてきている(黄色に見える部分)。空気が当たっただけでも強い痛みを訴える。
ブラッシングはしっかり行っているので歯肉は非常に綺麗である。上のブリッジのプラスティックが削れていることからもブ
ラッシング圧が強いことがうかがわれる。


【知覚過敏の対処法】

@ ブラッシング方法を見直す。
 ブラシを歯に当てる圧力が強いことが多いのでまずはこれを改善することが必要です。できるだけ弱い力で歯垢(プラーク)が除去できるように歯科医衛生士による指導を受けることをお薦めします。力を弱める一つの方法としては歯ブラシをわしづかみにしないでペンを持つようなグリップでブラッシングするのも良いでしょう。
 次にストロークの大きな横磨きはやめて小刻みに振動させるような方法が良いでしょう(スクラビング法)。前の歯については表も裏も歯ブラシを縦にして1本ずつ縦磨きをする方法もお薦めです。毛先の角が歯と歯の間に入ってたいへんよく磨けます。試してみても損は無いでしょう。
A 歯磨剤
 歯磨剤はつけすぎないようにしましょう。歯磨剤の中に含まれている研磨剤の作用によって歯の削れが促進されます。1センチも付ければ十分でしょう。最初は歯ブラシのみでブラッシングを行い、十分にプラーク(歯垢)を落としてから、歯磨剤を付けて1分間ほど磨く方法もお薦めします。
 歯磨剤はフッ素入りのものが良いでしょう。フッ素は歯の表面の再石灰化を促す作用があるので知覚過敏にも効果があるはずです。フッ素入りの歯磨剤を使用したときには、歯磨き後は軽くうがいをする程度にとどめてください。うがいで口の中をすすぎすぎるとフッ素が流れ出てしまいます。
B 歯科医院での治療
 上記の方法を試しても改善されない場合や症状が強い場合には歯科医院での治療を受ける必要があります。
 原因のところでも書きましたが、知覚過敏は歯の表面が削れ、中の象牙質が露出し、象牙細管が開口するために起こると考えられていますので、歯科医院ではこの開口部をふさぎ、水などの刺激を遮断する方法を取ります。
 当医院ではサンメディカル社の「MSコート」という知覚過敏抑制剤を使用して効果が現れています。知覚過敏のある部位にMSコートをこすり塗りすることにより、歯質カルシウムと反応して、開口した象牙細管を封鎖し、さらに象牙質表面にも薄い皮膜を形成します。この方法は即効性があり、また効果も長期間にわたります。また1回で完治しなくても数回同じ処置を繰り返すことにより改善されるケースが多いと言えます。
 症状が強い場合には当医院ではレーザー照射を併用する場合もあります。レーザー治療は全く痛みの無いもので軽度の麻酔作用もあり、上記の方法と併用することにより一層の効果を期待できます。


知覚過敏の最初に戻る