2004/04読書日記

2004年04月01日
スラム・ダンク・マーダーその他 平石貴樹 弟の蔵書 277P -27-

 女房とは読書傾向が合わないのだが、弟とは趣味が非常に近く、自分の買った本や買いたかった本が弟のところにはうじゃうじゃある。弟は個人事業主で勝手気ままにやっているので読書量が半端ではなく、うらやましい限りである。
 この本は弟に何十冊か借りている中の1冊。

 3件の事件とおまけで構成されており、それぞれの事件もおまけもトリックがよく効いており水準は非常に高い。
 文庫本化されないのが不思議だが、解説によれば著者はトーダイの教授だそうで、文系の専門書をかなり出版している。その辺に文庫本化しない原因があるのかもしれない。
 それにしても、現在イーエスブックスで調べると絶版となっており、、この本を読みたくても読むことは難しい。 
 個人的な趣味の問題で、ちょっと引っかかりがあるので強くプッシュする気はないが、これだけの水準の本が、現在入手できないのは東京創元社の怠慢と言われてもしょうがないのではないか。
2004年04月04日
オカメインコに雨坊主 芦原すなお 文芸春秋 165P 北部図書館蔵書 -28-

 山奥の不思議な村の、不思議に暖かい物語です。主人公の画家は偶然に訪れた町で小学生の「チサノ」と知り合い、彼女の家の離れで暮らすようになる。連作短編集ですが、2話の「やまざくら」のラストなどは背筋がぞっとするような感動を与えてくれます。優しい良い話ですが、その中に作者独特の深みがあります。おすすめです。雨の日曜日の午後などに読むのにちょうど良い量ですし。
2004年04月08日
★「霧の橋」 乙川優三郎 講談社文庫 330P 579円 -29-

 直木賞作家乙川さんを初めて読みました。
 第7回時代小説大賞受賞作。
 武士を捨てて紅屋の婿になった惣兵衛だったが、角屋との確執を経て逆に自分の中の武士が出てきてしまう。
 しかし、父の仇を捨てることで妻の元に戻ることができた・・。
 と、あらすじを書いてはいけませんね。はらはらしながら楽しんで読むことができました。
 時代劇はここのところのさじ加減が大事ですね。最後はちゃんとハッピーに終わるだろうと心の底では思いながらはらはらする。
 最後は印籠を取り出して終わりだろうと思いながらも、被害者の町民たちの姿を見て同情する。
 なんて完璧な世界なのでしょうか!
 ファンタジーが長くなる理由を以前書いたことがありますが、時代劇は日本人全てが読んでいるファンタジーと言えるでしょう。
 日本という国がある限り永遠に続くでしょうね。そういう意味では歴史のない国(合衆国のことです)はダメですね。
2004年04月12日
★魔法使いとリリス シャロン・シン ハヤカワ文庫 FT 288P 693円 -30-

 綺麗なラブロマンスです。ポイントはリリスの選択になるのでしょうか?
 「彼女が”愛”を選ばなかったのはなぜか」を考えるには、リリスの精神の異質さを考慮しなければなりません。
 コミュニケーションでは補えない(彼とリリスは十分にお互いを分かり合っていたのは確実です)基本的な精神のかたちの問題なのでしょう。
 魔法使い同士の争いの場面や最後の崩壊の場面など読み応えがありますが、自分としてはもう一つだったことを付記します。
 あと、表紙のこの絵はちょっと・・。ネタバレじゃん。
2004年04月13日
呪禁局特別捜査官ルーキー 牧野修 ノン・ノベル 280P 北部図書館蔵書 -31-

 オカルトが科学に取って代わっている世界(と、いっても世界はそのままで科学に則って動いている)でのオカルト犯罪に対する警察機構「呪禁局」の捜査官「ギア」こと葉車創作の活躍を描く・・というものですが、面白い世界設定だし科学が宗教化するところなどなかなかのものだと思います。戦隊ものを下敷きにしているのも楽しい。しかし、意図したものなのでしょうが、B級的な粗雑さがどうも本当の粗雑さに感じられてしまい、ストーリーもやっつけっぽく感じてしまいます。


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