第3話『雑踏の中の夢』

 1938年―――――――――。ある日、僕は隊長に呼び出された。何があったんだろう?
 「・・・『被験者』が決まった。お前だ、Gackt」
 隊長の執務室で静かに告げられた言葉。何が起こるのかは知っていた。
 「・・・そうですか」
 「・・・お前は本当にそれでいいのか?」
 「・・・僕には記憶を消されても悲しむ家族も親類も居ません。でも、彼らにはちゃんと存在する。・・・誰かの悲しむ顔も苦しむ顔ももう見たくありません。だからこそ・・・僕は申請したんです。罪滅ぼしにでもなれば。と思いました。あんな計画・・・止めれなかったから・・・」
 「・・・そうだ。あれは・・・総てを捻じ曲げた計画だ。・・・お前は俺の秘密も知っているんだろう?」
 「・・・知っています。・・・資料を見たんです。前回の『計画』実施時の・・・」
 「・・・お前はそれが怖いとは思わないのか?」
 「・・・怖い、ですよ。それは。・・・だけど・・・」
 そこで言葉を途切れさせる。
 「だけど?」
 「・・・仕方無いじゃないですか・・・こうでもしなきゃ誰も救えない・・・」

 部屋に戻ってくると最初に近付いてきたのはMasa。
 「ガクちゃん?どうしたの?・・・顔色、悪いよ?」
 「え?そう?」
 「あ。ホントだ。熱でもあるんじゃないの?この前ねー、本部の連中に風邪に効く良い薬教えて貰ったんだ。後であげるね!」
 Renが笑いながら云う。
 「・・・」
 遠くから不安そうな視線を向けるのはYou。そしてその横に居たToshiが一言。
 「・・・隊長から何か聞いたのか?」
 「・・・!」
 一瞬、凍りついた。
 「・・・元気が無いからな。・・・何かあったのか?ただでさえそいつは誰かの感情に敏感だからな」
 Youを指差しながら云う。
 「・・・何でもないよ」
 「・・・それならいいけどな。・・・だが、此処に来て戦況以上に上層部の動きが妙だ。・・・何も起こらなければいいけど、な・・・」
 「・・・上層部の事なら・・・本部の通信兵連中も妙な事云ってたよ?『被験者』を選定中だとかって・・・」
 Renの声に一瞬だけ眩暈を覚えた。
 「・・・Gackt?」
 怪訝そうなYou。
 「・・・お前何か知って・・・?」
 「知らないよ。あ・・・ちょっと行って来るね!!」

 ・・・真実に気付かれてはいけない。
 「・・・まだ・・・ダメだよ・・・」
 嗚咽が漏れる。
 「お願いだから・・・忘れないで・・・」
 きっともうすぐ自分は存在を消されてしまうけれど・・・せめて・・・貴方たちの記憶の中で・・・。

 「隊長!!!」
 Gacktが走り去った後、他の隊員は隊長の執務室へと向かった。
 「・・・何だ?雛鳥が雁首揃えて。まぁ、一人居ないみたいだが・・・」
 「・・・そんな事はどうでもいいです!ガクちゃんに何云ったんですか!?」
 「・・・何故、そんな事を知りたがる?」
 「・・・変だからです。・・・アイツ・・・今は・・・『死の匂い』しかしない・・・」
 「・・・お前が云うと説得力があるな。You」
 「・・・あと・・・気になってる事があるんですけど・・・」
 「何だ?」
 「・・・『被験者』って何なんですか!?」
 「・・・・!!!!!!」


ようやく第3話です〜・・・。ЯRプロジェクトの闇が曝け出されはじめました・・・。


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