3:Ries[リース]
「はぁ…」
先程の事を思い出し、ソーマは溜息をつく。
(私は一体、どうなってしまったのでしょうか…)
「ちょっと、そこの少年!」
背後から、女性がソーマを呼び止める。
が、自己嫌悪に陥っているソーマはそれに気付かない。
「こら!こっち見なさい、ソーマちゃん!!」
びくっ!
気付いて、その女性の方を振り向く。外見だけをみれば、まだ少女で通りそうだ。
少なくとも…
「か…母さん?」
15歳の子を持つ母とは到底思えない。
「母さん、じゃないわ!まったく…。」
途端、リースが涙ぐむ。
「酷いわ!私の事を無視するなんて!!」
その様子にソーマは苦笑する。
「嘘泣きは通用しませんよ。」
途端にぴたりと泣き止む。
「ちぇっ。何だ、残念。久しぶりにソーマちゃんの慌てふためく姿が見れると思ったのに。」
「それより!何でここにいるんですか?」
少し強い口調で問い質す。
その様子に、リースが目を潤ませる。
「ソーマちゃん…怖い。」
「目を潤ませても駄目です!」
「怒ること無いじゃない!」
「逆ギレしないでください!」
「ねぇ〜ん、ソーマちゃ〜ん♪」
「いい加減にしてください!で、何でここにいるんですか?」
「ストーキング。」
「…」
無言のソーマ。その目には、怒気を超えて殺気が浮かんでいる。
「もぅ、ソーマちゃんは固いんだからぁ♪硬いのは…」
「…麻酔無しで盲腸摘出しましょうか?」
メスを片手に、にこやかに言う。ある意味、怒鳴られるより怖い。
「判ったわよぉ。」
ふくれっ面で言う。
「…もう一度訊きます。何でここにいるんですか?」
「…ソーマちゃん、悩みがあるでしょ。」
急に真剣な顔つきになるリース。
「悩みの無い人なんて、いるんですか?」
半ば呆れながら問いかける。リースはその問いには答えず呟く。
「…夜な夜な見る悪夢。」
どきっ!
「自分を支配する、もう一人の自分。」
図星を突かれて驚きの表情を隠せないソーマ。
「ど…どうしてそれを?」
「私に不可能は無いわ!」
リースの一言に呆れた表情を浮かべる。
「種明かししても良いけど…とりあえず、場所を移動しましょ。ここはギャラリーがいて落ち着かないわ。」
といって、リースはそのまま歩いていく。
「待ってください!」
その後を、ソーマが追いかけていく。
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