静岡県外の神酒口 3 |
室井 幸七 氏 |
福島県南会津郡下郷町 |
室井 幸七 氏の素晴らしい作品をご紹介致します。 |
サンガイマツA (三階松) |
室井 家神棚 | サンガイマツBと 宝珠の珠 |
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幅2間(お宮は、幅4尺5寸) | ![]() |
展示用 | 室井家 蔵 (売却済) |
181サンガイマツA (経木製。展示用。初公開) | |
作者 | 室井 幸七 氏(建築大工職) |
住所 | 福島県 |
板厚 | 5分 |
引き目の間隔 | 5分 |
経木の枚数 | 左右 13枚×2 真ん中 15枚×2 |
高さ(オミキスズより上) | 1尺3寸 |
高さ(全体) | 1尺9寸 |
幅 | 1尺4寸 |
瓶子の高さ | 6寸(ケヤキの1本作り) |
静岡みきのくち保存研究会 蔵 |
室井氏の他の作品紹介 |
聞き書き帖(抜粋) |
室井 幸七 氏にお話を伺いました。2004.6 |
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サンガイマツの件 |
○「この素晴らしいお飾りの名前は、何と言いますか」 「サンガイマツです。自分で命名しました」 ○「他には、形の違うものを作っていますか」 「この一種類です。大きさは、オミキスズ(瓶子)に合わせますが」 ○「オミキスズの大きさは」 「6寸と7寸です」 ○「何時頃から作っているのですか」 「50年ほど前の、21歳の頃からです」 ○「お父さんも大工さんだったのですか」 「いや違います」 ○「このサンガイマツは、誰かに教えてもらったのですか」 「自分で考えて作りました」 ○「複数のミキノクチを合わせて一つのミキノクチを作るというのは、室井さん独自のアイデアですが、ヒントは?」 「21歳の頃、下郷町の東方で、22〜23キロ先の「あしの原」という部落で、170戸も焼く大火があって、泊りがけで大工仕事に行きました。その部落の家で、長さ6寸位の古いもの(みきのくち)を見かけました。(類似品。清水市のみきのくち2の7番)。もっと面白くならないかなあと思ってね」 ○「作り方を教えて下さい」 「先ず、桧の板に、尺ノコで引き目を入れてから、ボンドを溶かした水の中に何日も浸けておきます。次に、水から取り出して水洗いします。そして、1枚刃のカンナで削り、経木を作ります」 ○「厚くて削るのが大変ですね」 「削った経木を、手で伸ばして組みます。家族に手伝ってもらわないと出来ないね。組むのは女の方が早いよ(笑)。朝から晩までやって、一対3日は掛かるね」 ○「三つ組み合わせてありますが、真ん中のものは、経木の枚数が多いのですか」 「真ん中のものは、3枚位多くします。サンガイマツを彫った板で、三つを纏めて形を整えます」 ○「すごい作品だなあ。私も真似して作ってみよう」(試作品3) 「作り方を教えてくれと来た人は多いけれど、実際に作った人は今までに一人もいないよ」 ○「展示用も、オミキスズをケヤキで作り、サンガイマツを彫り出してある素晴らしい作品ですね」 |
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宝珠の珠 | ||
「宝珠の珠」は、龍が手につかんでいる珠(龍珠。ドラゴンボール)のことで、龍の如く上昇して財運を呼び込む縁起物です。ケヤキの一本作りで、丸い珠を彫りだしてある、見事な作品です。 | ||
○「「宝珠の珠」を作ったきっかけは」 「大火のあった「あしの原」へ仕事に行っていた時に、その部落の「ゴヨウデラ」という神社(修験系?)に、「うさぎと波」の素晴らしい彫刻があってね、ものすごく好きになりました。彫刻も習いたいと思って、その部落の70歳位のちゃぶ台作り専門の職人で、彫刻の上手な人のところへ、毎日、昼休みや夕方に押しかけて仕事を見物していました。初めは嫌がられて、「帰れ」などと言われたけれど、仕事の休みの日には弁当を持参して通っていたら、「そんなに好きか。それなら教えてやる」と言われ、彫刻のやり方を一から教えてくれました」 ○「これを作ったヒントは」 「違い棚のえびづかに、珠を彫りだす人がいなくて作ったのが初めです。3寸の束の中に、1寸2分大の丸い玉を彫り出す仕事だったが大変だったよ」 ○「材料は何ですか」 「ケヤキです。硬い木の方がいいね」 ○「大きさは色々あるのですか」 「写真の物は高さ1尺5寸ですが、希望により小さいものも作ります」 ○「珠を後から嵌め込んだのではないのでしょう?1本の木の中に、丸い玉を彫り出してあるのですね。すごいなあ」 「丸く作るのが大変だよ。7分のノミを使う。1寸ノミでは大きすぎるよ」 ○「どういう所へ飾るのですか」 「神棚とか床の間に、縁起物として飾ります。家を新築した家とかが、ここで作っていると聞いて、注文して来ます」 |
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○「開運 龍の珠」
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平成17年(2005)春、佐々木会長の友人 山崎 良治 氏が、室井 氏の作品「宝珠の珠」をお手本に、「龍の珠」を試作しましたので、「宝珠の珠」と「龍の珠」をご紹介します。 |
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○「望星観音像」 平成19年秋、佐々木会長が、仕事の合間に長年製作して来た「望星観音像」が完成しました。像の台座を、室井氏の宝珠の珠を参考にして製作し、岩手県の実家の、檀那寺へ奉納しました。 南洋の戦地で亡くなった兄弟知人などの菩提を弔うためです。 |
神棚の件 |
○「神棚も大きくて素晴らしい作品ですが。会津地方では、こんな大きな神棚を使うのですか。宮城県の方でも、大きいようですが」 「そうです。お宮一つ作るのに、3〜4ケ月掛かります」 ○「すごいなあ。家なみに手間が掛かるけれど、○万円では儲けはありませんね」 「手間賃はろくに取れないけれど、お金のことを言っていたら、いい仕事は出来ないよ」 ○「会長と同じで、職人気質そのものですね」 「大内宿の、民宿大黒屋さんの、「神棚、サンガイマツ、宝珠の珠」は、私が作ったものですよ」 |
室井氏は、引退後、動物や鳥などの彫刻を製作する趣味の世界を楽しんでおられるようです。 |
雑談 |
○「「サンガイマツ」は、経木製のみきのくちとしては、その大きさ、複雑さ、美しさで、他県にもない空前絶後の作品です。竹製では、松本市のものが、国指定民俗有形文化財に指定されていますが、室井さんの作品もヒケを取らないと思います。又、「宝珠の珠」も素晴らしい作品で、「サンガイマツ」とともに、会津地方に、他に作者がいないとお聞きしました。下郷町の広報のパンフレットなどで紹介してくれるといいなあ、と思いますが、町からそのような話はありませんか」 「ないなあ。関心ないみたいだよ(笑)」(注:取材後、広報誌で紹介されたようです)。 ○「私共の清水も、経木のみきのくちの作者の数と形の種類では、日本一ですが、全然関心がありません(笑)。そこで、みきのくちの名前と存在を知ってもらいたいと、私共は活動している訳です」 |