日本という国で



日本
 2005/4-





135.白     2005 4/15


「旅の終わり」を強く実感することができなかったオレだが、それは日本に帰ってきてからも同じだった。
 1年半ぶりの日本に「懐かしさ」はまったく感じなかったのだ。すべてに慣れすぎてしまったというわけではなかった。
 その逆だ。「まだ旅は続いていて、オレはまた新しい国へ来た」そんな感覚だった。

 成田空港までナグが迎えに来てくれていた。オレは特に「迎えに来て」とは言っていなかったし、ナグも「迎えに行く」とは言っていなかった。しかしオレは来てくれていると信じていた。
 空港を出てナグを探す。やはりいた! というわけだ。
 空港から電車に乗る。「車内の広告の文字がすべて理解できる」という日本人ならあたりまえのことになぜか感動。「隣の人の会話がすべて理解できる」ことにも感動。オレは目をきょろきょろさせ、車両中の人の会話に聞き耳を立てた。こんなことを「うれしい」と感じるなんて・・・。

 ナグの彼女も呼んで3人で食事をする。日本で初めての食事は焼き肉。そばやうどん、すしも捨てがたかったが、海外では意外と牛肉を食べる機会が少なく、焼き肉を選んだ。
 ところで・・・、ナグの彼女は中国人・・・。うぇーっ!? マジかよ!! 今までそんなメールもよこさなかったじゃねーか。ヤツも日本で旅をしてたんだなー。
 と、それはさておき、店では音楽がかかっている。
「なーナグ、この曲誰?」
「大塚愛」
「?? 誰それ?」
 完全に浦島太郎状態だ。
「まだ旅は続いていて、オレはまた新しい国へ来た」
 不思議な感覚だったが、まさにそのとおりだった。
 ここからが新しい生活の、新しい人生の、新しい旅のスタートなのだ。

 オレはパスポートを失ってしまったので、いつか新しい物を作り直すことになる。
 今のオレもその新しいパスポートと同じ・・・。ひとつのスタンプも押されていない真っ白なパスポートと同じで、真っ白なのだ。



136.知らぬが仏?     2005 5/20

 日本に帰って早くも1ヶ月が経ってしまった。
 今のオレはというと・・・。就職活動をしながら、旅の整理やホームページのリニューアルに精を出す毎日だ。

 日本に帰っての第一印象は「また新しい国へ来た」そんなものだったが、オレにとって日本はある意味で、実際に「新しい国」だった。
 旅に出る前のオレがいた日本と、今のオレがいる日本にはズレがある。日本が変わったわけではなく、当然オレが変わったのだ。
 旅を終えてから日本を、そして日本人を嫌いになってしまった部分がいくつもある。

 今回の旅に出る前、3年前にナグと一緒にタイを見てから感じていたことではあるが、「金や物の豊かさ」を「豊かさ」だと信じて疑わない日本人がイヤになった。それを見てオレは
「これだけ物質的には豊かでも、心は本当に貧しい国民だ」
 と感じてしまうのだ。そして、そう思ってしまう自分自身に対しても嫌気がさすこともある・・・。

 こんなことなら世界など知らなければ良かった。
「知らぬが仏」だった。そういうことなのか? いや、それは違う。
 日本を変えることはできないが、身近なところだけでも、最悪自分だけでも変えていければいいのではないか。
 そして旅で見たもの、感じたことをみんなに伝えていこう。今はそう思っている。


137.万博     2005 6/5

 愛知万博へ友人と2人で行ってきた。
 人気のある企業パビリオンは予約も取れないし並ぶのもイヤだったので、各国の空いているパビリオンを中心にまわった。

 オレの感想だが、多くのパビリオンで「ディスプレイのレベルが低い」と感じた。商売っ気マル出しの感じも好きではなかった。
「万博ってそもそも何なのよ??」
 それでも、オレのように旅が好きな人間なら充分に楽しめるとは思う。これだけ多くの国の人や物が集まることもそうはないだろう。

 特におもしろかったのは、ここぞとばかりにボっているインドやモロッコ、エジプトなどの土産物屋だった。万博に来てまで・・・。さすが!

 ちなみに旅や海外のことなどに興味がない人は、並んででも企業パビリオンを中心に見た方が良さそうだ。


138.働こう
     2005 10/5


 5ヶ月もかかってようやく就職先が決定した。まさかこれほど苦労するとは思ってもいなかった。

 それにしても就職活動を通じて、またしても日本のイヤな面がいっぱい見えてしまった。特に大きな会社ではそんなことが多かった。
 当然オレは小さな会社を選んだ。


39.おめでとう     2006 1/8

 今日は誕生日。オレは30歳になった。ついに大台・・・。

 30歳になった瞬間。オレは車の中で、オレが勝手に「旅のテーマソング」に決めた『オレタチフューチャー』を聞いていた。

 最近急に仕事が忙しくなり、深夜まで会社に残ることが多くなった。今日も12時を過ぎそうになったが、
「30歳の瞬間を会社なんかで迎えたくない!」
 そう思って慌てて帰り仕度をし、車に乗ったのが11時58分。偶然オレタチフューチャーのCDがかかっていた。

 しかし今日は、オレの誕生日ということ以上にメデタイ日なのだ!

 ナグが結婚した! 今日は結婚式!!

 結婚式にオレの誕生日を選ぶなんて、イキなことをしやがる!

 なのにまだ頼まれているスピーチの内容を考えていない・・・。
 が、実はオレ、そーゆーの苦手じゃないんです。まーマイペンライでしょ!

 結局・・・、スピーチは好評だった! オレ自身も満足の出来だった。

 ところで! ナグの奥さんは、オレが帰国した日に一度会ったあの彼女。中国人だ! お〜い!! 旅をしたオレよりもよっぽどインターナショナルじゃねーかっ!!!
 国際結婚したカップルも旅でたくさん会ってきたが、やはりいろいろと問題があるそうだ。

 ガンバレよ!!


140.1年     2006 4/14

 日本へ帰って1年が経った。
 いろいろな国を旅行している日本人、いろいろな国に住んでいる日本人、オレは海外で日本人を見ていて「順応力が高い」と感じることが多かった。
 どこの国へ行ってもすぐにその文化に適応し、そこへ溶け込む。日本人の得意技だろう。欧米人や韓国人ではこうはいかない。まして中国人などもっての他だ。
 オレも一応その日本人で、旅をした経験から言うと「特にオレは順応力が高い」と自分では思っている。言い方を変えれば「周囲に流されやすい」ともいえるのだが・・・。

 とにかくオレは日本社会に完全復帰している。旅を終えたころは、「この国の社会にうまく馴染めるだろうか?」と心配になったが、意外にも新たな環境で楽しく過ごしている。

 オレはうまく日本に復帰できたというわけだ。
 だが・・・、「これって良いことなのか?」という気持ちも心のどこかに持ち続けている・・・。
「復帰ってことは、つまり元どおりってことなんじゃねーの?」
「せっかく長い旅をしてきて、いろいろと感じてきて、いろいろと考えてきて、今のオレってもったいなくない?」
 そんなことを考えたりもしている・・・。

 でも答えはいくら考えても出てはこない。旅の中で悩み抜いた時と同じ。答えはいつか意外なところからコロっと出てくるさ。
 今を楽しみながら、気楽に行こうや!


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