世界が気になる今日このごろ
日本 2008/4-
219.ただいま 2008 4/19
オレは東京の大学に通っていた。もう卒業して10年も経つなんて信じられないが、静岡の実家を出て東京で一人暮らしをしていた。最初の2年ほどは長期休みなどで静岡へ行くと「久しぶりだな」と感じ、休みが終わって東京へ戻るとそこで再び「久しぶり」と感じたものだ。しかしそれに慣れてくると、静岡と東京のどちらでも何も感じなくなった。そこで初めて両方が自分の庭になり、行動範囲が広がったことになる。
今のオレにもそれがあてはまる。8ヶ月ぶりに踏んだ日本の地。8ヶ月ぶりに吸った日本の空気。まったく何の感情も沸き起こってこない・・・。自分の行動範囲が世界にまで広がった嬉しさと同時に、もう世界中どこへ行っても新鮮な気持ちになれないのでは? という寂しさを感じた。
前回の旅の終わりと同様に、千葉にあるナグの家で1泊してから静岡へ帰った。まるでたったの1週間くらい留守にしたかのような感覚しかなかった。旅で得たものは多いが、失ってしまったものも多い。特に感動という感情がマヒしている・・・。それだけ旅をしていると感動が日常的にころがっていて、それが当たり前のようになってしまう。まるで老人が人生をとおして感じていいくことを、オレは旅をとおして短期間のうちに感じてしまったようだ。
と、感傷的になってはいられない・・・。明日からは就職活動だ。先が思いやられるが、まぁとりあえず「ただいま」です。
220.祈りよとどけ 2008 5/3
日本に帰って2週間が経った。やりたいこと、やらなければならないことが多すぎて、結局何もやれていない今日このごろ・・・。
ところで世界中でいろいろな問題を目にしてきたが、日本にも問題は山積みなんだなと感じずにはいられない・・・。だが求職中のオレ自身も、就職難というその問題の渦中にいるというのに、そんな身近な問題よりも気になることがある。チベット問題だ。
この夏に開催される北京オリンピックの聖火リレーは、このチベット問題やウイグル問題、中国民主化運動、その他さまざまな問題を巻き込み各方面で混乱している。3年前にオレが初めて中国に行った時にも、こんな国でオリンピックを開催して大丈夫なのか? と思っていた。バッシングの嵐、ボイコットする国も出てくるだろうと思っていた。やはり当然の結果となっている。中国はそんな国なのだ。
オレは今回の旅でも、ラサで大規模な暴動の起こる前のチベットを訪れている。前の日記でも書いたが、チベットでこんなことがあった。チベット仏教の聖山カイラスの麓の町、タルチェンにいた時のことだ。オレは泊まっていた宿の隣にある商店の親子と仲良くなり、何度か店の中でお茶やお菓子をいただいたりしていた。オレもこのチベット人親子も、お互い中国語はほんの少ししかできない。そこでガイドブックに載っていたチベット語会話集を使っての会話だったのだが・・・、娘が本を見てまず最初に言った言葉が印象に残っている。
「ギャミ、ヤポミンドゥ」
中国人は良くないという意味だ。オレがこの町に来る直前、町にある巨大な仏像が中国政府によって破壊された。その時タルチェンに滞在していた日本人の書き込みが宿に残っていて、それによると当然ながら当時の町は騒然としていたそうだが、公安が力ずくでそれを抑えたそうだ・・・。オレがいた時もまだ公安がうろうろして家々を巡回していたし、チベット人たちもまだ怒りが収まっていないような雰囲気だった。この親子も悲しいと言っていたし、中国政府は大キライだと言っていた。
「オレもキライだよ。ギャミ、ヤポミンドゥ。ラマ、ヤポドゥ!」
オレがそう言うと、親子は窓の外を気にしながら小声になって繰り返した。ギャミ、ヤポミンドゥ。・・・こんな会話を聞かれただけでも公安に何をされるか分かったもんじゃない・・・。
その後ラサへ向かったオレだったが、その時もラサの有力な寺であるデプン寺が警官隊によって包囲されている最中だった。アメリカで勲章を授与されたダライラマの、お祝いの式典を阻止するための措置だった。
この1週間ほど前にもポタラ宮前の広場で暴動が起きそうになったとも聞いている。このようにオレがいた去年の秋の時点で、大規模暴動の予兆はあったのだ。そして冬に大暴動。春、オリンピックの聖火リレー。夏、オリンピック。
オレにはこの一連の出来事がすべて政府に仕組まれていたように感じる・・・。つまりだ、政府がチベットにおける弾圧を強めたことは暴動を誘発するための意図的なものだったのだと。今回、この暴動が起きなくても、いつかは暴動が起きただろう。それをあえてオリンピック前に誘発させたのではないか? そしてオリンピックが成功に終われば、問題を乗り越えた民族の団結をアピールできる。
すべてがプロパガンダではないのか? チベット人たちは利用されたのではないか?
オレの目が見た中国は完全にそんな洗脳国家だ! 毛沢東が文化大革命で破壊したチベットの寺には「日本軍が壊した」と平気でウソを書いてあるし、オレたちが中国のTVを観ていればウソばかりで笑えてくる。ところが海外の情報が規制されている現地の人々は、真実を知ることすら出来ない! つまりそのプロパガンダを、洗脳を信じるしかないのが現状・・・。オレは漢民族がキライだが、その漢民族こそが一番の被害者なのかもしれないような気もする・・・。
ダライラマと中国政府が対話する準備を進めているとも報道されているが、この話も疑わしい。これも政府に有利に働くようなフェイクでしかないんじゃないか? きっと次におこる何かに繋がっていくはずだ・・・。
そして問題はチベットだけではない。お隣の新疆ウイグル自治区でも独立問題は激化していきそうな流れだ。とにかく、これらの問題が平和的に解決されることを祈る。チベタンの祈りがとどくことを・・・。
チベタンの祈りがとどくことを願う
221.サイクロン 2008 5/6
ミャンマーをサイクロンが襲った。死者は1万人以上とも報道されている。去年の11月にもバングラデシュがサイクロンの被害を受けて、3400人の死者を出している。ミャンマーもバングラデシュも世界の最貧困国だ。当然このような貧しい国での自然災害は被害も拡大してしまうし、復旧にも多大な時間がかかる。特に軍事政権による独裁、弾圧が続くミャンマーでは政治問題も絡んできて、海外からの援助もうまくいかないかもしれない。
ミャンマーはオレの大好きな国のひとつだ。オレがミャンマーへ行ったのは4年半前のことで、当時から、いやもっともっとずっと前から国内には軍事政権と民主化運動の衝突が問題になっていた。外国人であるオレにそんな政治問題を嘆くミャンマーの人も多かったくらいだ。
ミャンマーにはビルマ人をはじめ、シャン族やインダー族などさまざまな人たちが暮らしているが、だれもみんな旅行者のオレにはとても良くしてくれた。ほとんどが仏教徒のミャンマーでは功徳を積むことが第一とされているからだ。これだけ問題山積みの国にあって、この精神を現代でも守っているのは尊敬に値する。貧しいにもかかわらず、ご飯を食べさせてくれたりしたことも何度もあった。
そして彼らは勤勉でまじめだ。まともな教育も受けていないのに独学で英語や日本語を覚えた人も多かったし、騙されたりしたこともなく、治安も良かった。オレの感じた限り、世界で一番「人の良い」国だった。
そんな国に限ってこんな事態になる。どこもそうだ。インドネシア、スリランカ、バングラデシュ、チベット、パキスタン・・・。
そんな人たちのために、オレも何かしなければならない。何かしなくては。いつかはみんなに恩返しをしたい。と、いつもオレは書くだけ、言うだけで何もできない・・・。世界のどこかでこのようなことがある度に、オレは何もできない自分が情けなくなる。
でもこうやって誰かに読んでもらって、少しでも、気持ちだけでも伝わっていって、それが広がって、なにかの力が生まれる。これが最初の一歩になる。そう信じている・・・。
貧しい人々のために先進国の支援が必要
222.今度は地震・・・ 2008 5/13
ミャンマーのサイクロン被害から1週間以上が経った。やはり被害状況が日に日に明らかになるにつれて被災者数は増えて、死者は最悪10万人にのぼるとも報道されている。しかも、各国からの援助物資を軍事政権が横取りし、被災者には何も届いていないというような情報さえある。これじゃ支援なんかしても逆効果じゃないか! しかも、それを隠すために海外の報道関係者はおろか援助団体の入国まで拒んでいる。軍事政権。ヤツら・・・ここまで腐っていたとは・・・。
で昨日、今度は中国で大地震。すでに1万人の死者が確認されていて、不明者はさらに大勢いる。サイクロンにしても、地震にしても、天災の恐ろしさを痛感させられた。・・・が、もし同じものが日本を襲ったとしたら・・・、オレは専門家ではないが、それでも自信をもって「ここまでの被害はない」と思える。建物や道路の耐久性も、被災後の対応も、当然ミャンマーや中国とは違う。つまり先進国と途上国の差。
「格差」これは当然国内にもある。その「地方格差」を一番強く感じた国は中国だった。この国は国内の格差がとんでもなく大きい。発展度も、物価も、いろいろなものの質も、人間も・・・。例えばラーメン。雲南省の田舎で2元(約30円)のものが、大都市の上海では10元(約150円)ほど。同じようにビールは、田舎では大瓶で3元(約45円)。都市部では缶ビールでも5元(約75円)以上だ。都会には高層ビルがバンバン建ち、キレイな地下鉄が走り、人々は日本人のオレたちと同じような服を着ている。一方の農村では未だに土やレンガ、藁の家も多いし、ボコボコの道路をオンボロなバスが走り、薄汚れて穴の開いた服を着ている人がほとんど。
このような「都市と農村の格差」同様に、「漢民族と少数民族の格差」も大きい。
今回の地震の被災地は四川省、雲南省、甘粛省など、チベット族をはじめ多くの少数民族が暮らしている地域だ。ニュースでは成都や重慶など都市部の報道ばかりだが、農村部は? 少数民族は? 気になる・・・。
地震の場合建物の倒壊による被害が多いと思うので、大きな建物の少ない農村部では被害そのものは少ないだろうが、援助や復旧といった面では問題が多いだろう。しかもここのところのチベット騒動なんかも絡んで、政治的な軋轢も生じてくるだろう。やはり気になる・・・。
223.やっぱりこっちもか 2008 6/20
冬のチベットで起こった暴動は予想していたとおり、ウイグル族の独立運動にも火を付けた。四川の大地震といい、オリンピック前の中国はたいへんだ。そのオリンピックの聖火リレーが新疆ウイグル自治区を通った。ウルムチではテロの予告もあったりで、厳戒態勢だったようだ。何事もなくて良かったが、これもまた政府によるプロパガンダなのでは? もともとテロの予告自体がでっちあげなのでは? などとすぐに思ってしまう中国政府嫌いのオレだった・・・。
それにしても、イスラム教徒の一部はテロをよく起こしているが、これでイスラム教=テロ組織というイメージがついてしまうのは自分たちが損をすると思う。イスラム教と聞いただけで良くない印象を持つ人は多いはずだ。旅行者目線からすればイスラム教徒はやさしい人たちばかりなのに・・・。
新疆のウイグル族たち
224.本当の旅の終わり 2008 7/24
日本に帰ってきてから3ヶ月。失業保険をもらいながらの就職活動をしつつ、旅のDVDを作ったり、ホームページのリニューアルなどをして過ごしていた。
そして最近、就職が決まった・・・。
1回目の旅も、今回の旅も、日本に帰ってきた時に「旅が終わった」という実感がなかった。1回目の旅から帰ったあと、前の会社に就職した時も、もう旅はしないとは決めてはいたものの、心のどこかで「もしかしたら」という気持ちがあったのかもしれない。就職することに対して、特に心境の変化もなかった。
ところが、今・・・。これから就職するにあたって
「これで本当に旅が終わってしまったんだ」
という、まるで夏休みの最後の日のような虚しさに襲われている。オレの心は、夕暮れ時にヒグラシの声が悲しく響くあの光景につつまれているのだ。
こんな気分になっている最近の自分から、オレは自分の正直な気持ちが感じ取れた。
「本当にもう旅はしない」
きっとオレはそう決めたのだろう・・・。
225.大丈夫かよ? 2008 7/27
先日、中国雲南省の昆明で連続バス爆破テロが起こった。こんなことが起こる度に、旅をしていたオレに何事もなくて良かったと思うのと同時に、一歩間違えば・・・と考えゾッとする。
今回の事件、新疆ウイグル自治区の独立運動組織が犯行声明を出した。オリンピックも標的にしているとも言っている。まったく多くの人が予想していたとおりの展開だ。本当にこれからどうなってしまうのだろう? 大丈夫かよ? 中国・・・。
それにしても・・・、いつの間にかこの日記は社会派タッチになってしまった。ジャーナリスト気どりかよ! オレは・・・。
226.本当に大丈夫かよ? 2008 8/6
今度は新疆ウイグル自治区のカシュガルでテロが起こった。今年に入ってからいろいろと起こっているラサ、ウルムチ、昆明、カシュガルはどこもオレの行ったことがある町で、余計に関心が高い。
前回の日記にも書いたように、オリンピックでテロを起こすと犯行予告を出した独立運動組織。マジでやばいんじゃないの? 本当に大丈夫かよ? もう開幕は目前だぞ!
227.オレの目はごまかせません 2008 8/9
昨日、ついに北京オリンピックが開幕した。オレはオリンピックといってもサッカーくらいにしか興味がないが、今回ばかりは違う。いろいろと問題が多い今回の大会は、やはり注目度も高い。
開会式はテロも起こらず良かった。しかしオレは開会式を見て、またしても中国政府に不信感を抱く結果となった。
それは開会式に出てきた多くの少数民族。オレの目には明らかにニセモノに見えた。少数民族の衣装を着ただけの漢民族じゃねーかっ!! 多くの人は分からないだろうが、オレや中国各地を旅した人、もちろん中国人にはバレバレだ。よくもまあこれだけのバッシングを受けておきながらこんなことができたもんだ! 近いうちにきっとバレてさらにバッシングされることは明らか!
それに各民族の団結と言いながら、やっていることは正反対。結局は漢民族至上主義を見せつけているだけじゃねーか!!
始めから分かっていたことだし、いい加減呆れてしまっているが、それでもやはり怒りを感じてしまう・・・。
228.ほれ見たことか 2008 8/15
オレの目は正しかった。やはりオリンピックの開会式に出てきた少数民族はニセモノだった! そればかりかCGの花火や歌が口パクだった少女など、バッシングの嵐。ほれ見たことか! いったい何やってんだ? いったい何やりたいんだ?
近年急成長してきた中国だったが、やはりオレが上海タワーを見て虚勢としか思えなかったように、この国は見せかけだけだったのだ。ニセモノだったのだ! ハリボテ国家なのだ!!
229.届いた伝言 2008 9/15
このホームページから、オレのアドレスへ直接メールを送れるようになっている。が、残念ながら(当然ながら?)今まで1通のメールも来なかった・・・。
ところが先日初めてのメールが届いた! そしてその内容はなんと! 「アリさんからの伝言」だった!!!
アリさんは、5年前インドネシアのスマトラ島へ行った時に知りあった人だ。しばらくの間、彼の家でお世話になっていた。そしてその1年後、スマトラで地震があった・・・。彼の村は震源のすぐ近くで、海岸近くの小さな漁村なのだ。津波の被害が心配だった・・・。
地震から4年間、オレは彼と連絡をとっていない。怖くて連絡がとれなかったのだ・・・。
地震があった当時、まだ旅を続けていたオレは偶然にもインドネシア国内、バリ島に滞在していた。アリさんに連絡をとろうか? アリさんの村まで行こうか? しかし怖かったのだ。もしも村が壊滅的な被害を受けていたら・・・、もしもアリさんの家族に不幸があったら・・・。そう考えると怖くなり、自分のキレイな思い出を守るために連絡をしないことにしてしまった・・・。
そして去年、またしてもスマトラ島で大きな地震が起こったが、やはり連絡はとれなかったオレ・・・。
そんなオレに今回のメール。送ってくれたのはNGOの関係で、アリさんの村を訪れた方だ。アリさんはかつて、そのNGOの援助により日本で研修を受けていた。その方はネットでアリさんの村について調べているうちに、このホームページを見つけてくれたらしい。そしてアリさんからの「元気だよ」という伝言と近況の写真を送ってくれたというわけだ。オレが村にいた時にはまだ奥さんのおなかの中だった一番下の子も写真には映っていた。5年の月日を感じる・・・。
アリさんはオレのことを覚えていてくれ、連絡もこないので心配してくれていたそうだ。本当に悪いことをしてしまった・・・。それに地震の被害はほとんどなかったという話に安心。
それにしても今回の件にはビックリした! メールをくれた方に感謝した!! そして感動した!!!
やっぱこんなことがあると旅ってサイコーって思うよね。
アリさんの家族とオレ
230.ムンバイのテロ、バンコクのデモ 2008 12/5
オレはTVの映像を見て、画面にくぎ付けになった。
「タージマハルホテルが燃えてる・・・」
タージマハルホテルとはインドのムンバイにある高級ホテルで、オレも今年の2月に行っている。行ったと言っても当然オレなんかが泊まったわけではなく、外から見ただけなのだが、そのタージマハルホテルが燃えている。しかもTVではテロだと言っているではないか! 外国人観光客を人質に立てこもっている!? なんか大変なことになってる・・・。
11月27日、インド最大の都市ムンバイの10ヶ所で同時多発テロが起こった。銃や爆弾を使った襲撃、立てこもりにより200人近くの人が犠牲になった。外国人も多く含まれている。オレが行ったことのある場所も2ヶ所含まれている。
世界のどこか、特にオレの行ったっことにある場所で事件や事故、災害が起こるたびにオレは怖くなる。しかも今回の場合は外国人旅行者もターゲットになっている。オレがその場所にいてもなんの不思議もないのだ・・・。
インド政府は犯人がパキスタン絡みだと主張しているが、本当のところはどうなのだろう? インドとパキスタンは仲が悪いので、先が心配だ。このテロをきっかけにインドがパキスタンに報復なんてことになってしまうのだろうか?
最近、もうひとつ大変なことになっている国がある。タイだ。反首相の市民団体が市内や空港で座り込みデモを行い、空港は占拠され旅行者は足止めされている。
しかしインドは本当に心配だが、こちらはそうでもない。というのも、どうもオレの目にはその市民団体が「お祭り気分」、「イベント感覚」でデモをしているように見えるからだ。政府は非常事態宣言を出しているが、デモをしている本人たちはこの状況を楽しんでしまっているようにも感じられる。TVやネットの映像や写真を見る限り、緊張感、緊迫感が伝わってこないのだ。
場所は変わるが、タイとカンボジア国境では国境線をめぐる争いで両国の軍がにらみ合っている。こちらも何度か映像を見たが、なんとも和やかな雰囲気・・・。必殺の「マイペンライ精神」だ。やはり緊張感がない・・・。今回のデモも同じだった。
それがタイらしいといえばタイらしいし、だからオレはタイが好きなのだ。
「だからそれほどヤバいことないよ」
勝手にそう思っていた。
ところが・・・、ついにデモ隊と軍の武力衝突が起こり死者まで出てしまった・・・。今回ばかりはやり過ぎだったのだ。おいおい、こっちも心配になってきたぞ!
231.時間の感覚 2009 4/19
昨年秋から続いているタイの政情不安は、未だに収束を見ない。パタヤで開かれる予定だったASEANも中止に追い込まれた。ここまで長引くとは思ってもいなかったし、時間が経つにつれて事態は深刻化しているようだ。ところが日本のメディアはこれを大きく取り上げてはいないので、イマイチ状況が分からないのは事実。タイ好きなオレは心配なわけで・・・。
タイといえば、今はソンクラーン(水掛け祭り)の時期だ。今年はこんな状況なので盛り上がらなかったのかな? 去年は楽しかったな・・・。
などと考えていたが、そこでオレはふと思った。
「あれからまだ1年しか経っていないんだ」
つまりオレは旅から帰って来てからの1年をとても長く感じていた。
一般的には「歳をとると時間が経つのが早くなる」と言われているだろう。実際オレも何年か前までは強烈にそのことを感じたこともあった。大学の4年間は高校の3年間よりも短く感じたし、最初の会社にいた5年間も大学の4年間より短く感じた。特にその5年間は最悪で、今思い出してみるとあっという間だった。それだけ生活が単調だったのだろう。
とにかくオレの中の時間の流れも、歳とともに早く過ぎるようになっていた。旅を始めるまでは。
オレが旅を始めたのは今から約6年前。この6年、正直言って長かった。そしてそれは旅をしている間だけではなく、日本にいる間も含めてのことだ。1回目の旅と2回目の旅の間の2年間、そして旅を終えてから今日までの1年間。この6年間は、その前の5年間と比べて2倍にも3倍にも長く感じた。
それだけ充実していたのか? それだけ意味のあるものだったのか? それだけ大切なものなのか? 答えはYESだ!! 自信を持ってそう言える!
232.初めての海外 2009 5/31
新型インフルエンザってやつが流行っている。ついに人類とウィルスとの最終戦争が始まってしまうのだろうか・・・?
こんな状況なら世界中どこにいても同じだとオレは思うのだが、日本人の多くは「海外は危険」と思っているようだ。そのうち「日本にいる方が危険」という状況になることだってあり得ると思うんだけどな。
たしかに日本は清潔だ。しかし、それは無意味に過剰な潔癖症で過保護なだけ。だから軟弱な人間が多いんでしょ。特に子どもなんか可哀そうだ。ってまあオレもその軟弱くんの一人なんだけど・・・。ただ、それを知っているだけまだましなのかな?
で、最近オレはその「危険な海外」に行ってきました。久々の海外旅行。ではなく、初めての海外出張! まさかオレが海外出張なんかに行くなんて思ってもいなかった。今オレが働いている会社は中国に工場があって、自社工場以外にも外注先や仕入れ先がいくつか海外にある。今の時代日本で物を作っても儲からないということなのだが、オレ個人的にはこの社会構図が気に入らない。オレの会社や、日本や先進国の会社が気に入らないんじゃない。あくまでもこの社会構図、つまり世界の格差が気に入らないのだ。
金のある先進国が、賃金の安い国の労働力を求める。当然の流れだろう。それに労働者側からしても給料が良く技術力もある外資企業は魅力だろうし、現地企業からしても高く商品を買ってくれる先進国の企業は上客だろう。それでもオレは気に入らない。金のあるない、先進国か途上国、そんなことで優劣が決まるのが気に入らない。
とオレが言ったところでどうなるわけでもないし、とにかくオレもそんな仕事をしている。
これだけ旅が好きで海外が好きなオレだが、やはり海外出張となるとまったくの別ものだった。ってあたりまえか・・・、だって仕事だもんな・・・。
233.ウルムチ騒乱 2009 7/20
ウルムチがヤバいことになってる。去年のチベットのようにウイグル人と漢民族との衝突が起こった。オリンピック前からウイグルの独立運動が活発化していたが、ついに起きてしまったかという感じだ。
旅の中でオレが見た目からも、ウルムチや新疆ウイグル自治区におけるウイグル人と漢民族の経済格差、社会的格差は歴然としたものがあった。両者の仲が悪いのも一目瞭然だった。もともとこの地に住んでいたのはウイグル人。後から入って来たのが漢民族。悪い言い方をすれば漢民族は「侵略者」。それはチベットにおいても同様だ。
だからオレはチベット人やウイグル人をなんとなく応援したくなる。
しかし今回の事件、ここから生まれるものは憎しみと悲しみだけだ。ウイグル人と漢民族の溝が深まるだけだ。去年のチベットにも同じことが言える。結局は報復合戦になって負の連鎖が起こるだけでしょ?
と考えてみたその次の瞬間、オレはこうも思った。
「オレがそう思うのも平和ボケした日本人だからなんだ・・・」
何かを勝ち得るには犠牲が必要なのかもしれない・・・。これまでいつの時代もどこの国もそうだったように。日本だって例外ではない。そしてオレタチはその尊い犠牲の上に生きていることを忘れてはいけないのだ。
234.こんな身近にありました 2009 8/23
多くの国を旅してきたオレだが、実は国内を旅行することはあまりない。旅から帰ってきて、「今度は日本でも旅してみようかな」などと思ってもみたが、それもまだ実現させていない。
そんなオレはこの夏休み、富士山に登ってみることにした。パートナーはトモヒロくん。日記にも何度も登場しているが一応書いておくと、中東を旅している時に知り合った友人で、その後東ヨーロッパ、タイ、カンボジアでも一緒だった。彼とは日本でもちょくちょく会っている。今年の5月には、やはり中東で知り合ったマツモトさんと3人で再会をはたした。オレとマツモトさんは3ヶ月もの間をともにし、中東、東ヨーロッパ、中米と大陸をまたいで旅を共有している。そのマツモトさんは現在アルゼンチンで働いていて、今回は永住のための準備で一時帰国となったのだ。
やはり3人集まると旅の思い出話が尽きない。日本社会に復帰したオレ、プロの写真家を目指すトモヒロくん。海外へ永住するマツモトさん。今は三者三様のオレたちだが、みんな根っからの旅人だった。
少し話が脱線したが、とにかくオレはトモヒロくんと富士山を登ってきた。
オレは静岡に住んでいて、富士山は生まれた時から身近な存在だった。そこにあるのがあたりまえだった。県外から来た人が富士山を見て感動している姿を目にすることもあるが、残念ながら静岡に住んでいるオレはこの山に感動したことはない。そして、今まで一度も登ったことがないというのも県外出身の友人たちからすると「静岡人なのになんで?」ってなことになるが、とにかく今回が初挑戦なのだ。夜登り始めて、御来光を見たあと下山。そんなプランだった。
天気はあいにくの雨・・・。夏とはいえ、雨の降る夜の富士は過酷な状況だった。雨と風が強くて寒いことはもちろん、雲に入ると視界はほとんどゼロになった。ライトも霧に乱反射してしまい、足もとまで明かりが届かない。極寒の暗闇・・・。登山ルートも分かりにくく、一歩間違えば滑落の危険もある。ちょうどオレたちの登る1ヶ月前には死亡者がでているが、このような状況だったのだろう。そう考えると気を抜けない。
朝4時ころ、オレたちは御来光ポイントへ到着。雨も止んだことから雲の上へ出たと予想される。凍えそうになりながら日の出を待った。
空が明るくなり始めると、ようやく周りの状況が目に見えてきた。眼下には雲海がひろがっている! 厳しい環境の中をがんばったかいがあった! あの雨の中を登ってきたからこそ、この雲海の景色にたどり着いたのだ!
そこから登る太陽は、本当にキレイだった。日本でこれだけの風景に出合えるとは思わなかった。旅をして感動のスイッチが入る基準点がかなり高くなってしまったが、これなら文句ない。久々に感動させられる風景に出合えた。
今まで子どもの頃からあたりまえのようにそこにあった富士山。ものスゴい感動が、こんな身近にありました。
雲海に上る御来光
235.またですか・・・ 2009 10/12
またか・・・。
9/30、インドネシアのスマトラ島沖で大きな地震が発生した。スマトラ島沖は世界有数の地震多発地域だが、最大の被害を出した2004年12月の地震以来、大きな地震はこれで4度目。その間には隣のジャワ島でも大きな地震が3回起きている。その度に多くの被災者を出しているが、オレが心配なのはやはりアリさんたちの村だ。
アリさんの村、パシルバルはスマトラ島の小さな漁村。毎回地震がある度にその報道を見て、震源地がいつもパシルバルのすぐ近くなので心配になってしまう。1年前、オレにアリさんからの伝言を伝えてくれたNGOの方の話では、地震の被害はそれほど深刻ではなかったそうだ。それでもやはり心配にはなる。
今年の夏、静岡でも大きな地震があった。幸い被害はほとんどなかったが、同じ地震がインドネシアで起こればかなりの数の建物が崩壊しただろう。中国の四川大地震がそうだったように、日本と途上国の差で被害も大きく変わってしまうのだ。また今回も、世界の格差についてを考えさせられた。
などと言っているうちに、今度はフィリピンで台風被害により多くの人が亡くなった。やはり同じ台風が日本に来てもこれほどの被害は出なかっただろう。
世界の格差がなくなる。いつの日か、そんな理想の世界が実現するのだろうか・・・。
236.やっぱ違う 2010 1/24
去年の11月に中国、12月にはベトナム、今年に入って1月に中国。このところ海外出張が続いている。
去年の5月に初めて海外出張で中国へ行ったが、その時に薄っすらと感じたこと。今回の3回の出張でまたそれを感じた。
「出張で海外へ行っても海外へ行った気にならない」
遊びと仕事なので当然といえば当然なのだが、旅と出張は同じ海外でもまったく違うものだ。
帰国からもうすぐ2年が経とうとしている。そろそろどこか行こうかな?
ベトナム、ハノイのホァンキエム湖
237.予知夢 2010 3/15
ここ何年かの間に、世界中で大きな地震が起こっている。最近でもハイチとチリで大地震が起こった。規模的にはチリの地震の方が大きかったが、被害的にはハイチの方が大きかった。カリブ海の最貧国ハイチと、ブラジル、アルゼンチンと共に南米をリードしているチリ。何回も何回も書き続けているが、貧しい国ほど天災の被害は大きい。こんなことがある度に世界の格差について考えるオレだが、考えれば考えるほどイヤになってくる・・・。
ところで、大地震はオレにとっても身近な存在だ。というのも、オレの住んでいる静岡県ではもう何十年も前から「いつ東海地震がきてもおかしくない」と言われ続けているからだ。しかもオレの家は海の近くにあり、大津波が来れば一発で海の藻屑となる恐れがある。
そんな環境で育ってきたからだろうか? 実を言うと・・・、オレはある時期、地震の予知夢を見ることがあった! 中学の3年から大学1年までの5年間。地震の夢を見ると、必ずどこかで大きな地震が起こったのだ! 正直自分でも怖くなったことすらあった。が・・・、そんな超能力的なできごとも、もう十数年と起きてはいない・・・。
ところが! ここ2ヶ月くらい、週に1回くらいの割合で地震の夢を見る。崩れた家の下敷きになって、津波で息ができなくなり目が覚めることも珍しくない・・・。
これは予知夢ではなく、最近地震が多いからだとは思うのだが、それでも何となく気持ちが悪い今日このごろ・・・。
旅とも世界ともあまり関係がない日記になってしまった・・・。
238.本気になっちゃった・・・ 2010 4/17
半分はお祭り気分。オレを含めタイを知っている人ならそう思っていただろうバンコクのデモ。なのに・・・。ついに本気になっちゃった・・・。銃撃戦にまで発展するとは事態は深刻。しかも日本人カメラマンを含む多くの方が亡くなってしまった。それに、場所がカオサンの近くというからまた驚き。TVで見たその現場は、オレも何回も通っている場所・・・。
今回暴れているのはタクシン派。タクシン元首相を支持する地方出身の貧しい人たちで、赤いTシャツを着ているので赤組と呼ばれている。去年もアセアンを中止に追い込むようなデモを行っている。
彼らとは別で、一昨年デモを行い空港を占拠したりしたのは反タクシン派。黄色いTシャツを着た黄組だ。オレが心配しているのは「今回の騒動が治まった後、今度はこの黄組が動き出すのではないか?」ということだ。
早くなんとかしてくれないと、気軽に遊びにも行けないじゃないか! 実際、観光客は激減して観光業界は大ダメージらしいし、タイが最も盛り上がるソンクラーンの水かけ祭りも中止! あんなに楽しい祭りが・・・。
と思いきや、こんな混乱の中にもかかわらず、ちゃんと祭りは盛り上がっていたみたい! さすがタイ! やっぱそうでなきゃ! カオサンもいつも通りみたいだし、やっぱマイペンライだぜ! って感じかな。
と、政治が混乱しているのはタイだけではない。キルギスのビシュケクでも暴動があった。これまたTVの映像に知っている場所が映っている。何回か遊びに行った大学、良く食べに行ったレストラン・・・。そんな映像を見る度に、
「オレがその場所にいてもおかしくなかった」
と思い、無事に旅ができたことを感謝したりする。
で、次はオレが行ったことのない場所の話だが、またしても中国で大地震が起こってしまった。一昨年の四川、今回の青海、地震があった地域はその中でも、チベット族が多く住む地域だ。しかも高地の山岳部ということで救助も困難だという。チベット人は漢民族と比べ貧しい生活をしている人が多いので、なおさら心配。
それにしても最近地震が多すぎる。アイスランドでも火山が噴火しているし、まるで地球が怒っているようだ! 前回書いた「夢」の件もあるし、本当に怖い。
ちなみに、明日で帰国して丸2年になる。その間のオレを振り返ると・・・、なんとも情けなくなるような日々・・・。所詮、結局は平和ボケした日本人の一人なんだ。オレも。
こんなに楽しい祭りは中止になんかできません!
前へ 次へ
日記もくじ ホーム