無理やり行ってみた
《TRAVEL10》
中国 2013/10/11-14
267.マイレージ
長い間旅をしていた時、こんな話をする旅人に何人か出会った。
「えーっ! マイレージカード持ってないの?」
「マイルが貯まって世界一周航空券GETしました」
「マイル使えば毎年1回タダで旅行できるよ」
正直興味はあったが面倒だったし、「どうせ大げさなこと言ってるんでしょ」くらいにしか思っていなかった。
実際オレもマイレージカードは持っていたが、ほとんど貯まらない。国内の航空券GETでさえほど遠かった・・・。オレはマイルの貯め方を知らなかったのだ。
ところが、ある時ふとしたタイミングでマイルの上手な貯め方をネット上で知ることができ、「そういうことだったのね・・・」ということになったのだ! (詳細は秘密! 知りたい人は調べるべし!!)
それから半年。あっという間にマイルは貯まり、近場の国であれば航空券が手に入るまでに至った。今までどれだけ損していたことか・・・。へたをすれば今頃、無料で世界2周目の旅をしていたかもしれない・・・。
で、そのマイルの有効期限が切れる! ということで無理やりチケットを取ってしまった。
行先は限られていた。韓国、中国の各地、台北、マニラ。行ったことがない場所で行きたいと思えたのは北京、マニラくらい。だが、マニラへ行くには時間が短すぎる。ということで必然的に行先は北京に決まった。
出張でイヤになるほど行っている中国へ・・・。
一応断っておくが、そこまで中国が好きなわけではありませんので!
1日有給を取って3連休と繋げての4日間。友人のトモヒロくんも別便で北京へ来ることになり、現地で合流だ! 一応誘ってみたら本当に行くことになってビックリ。さすがはバックパッカー。
てなわけで、去年のソウルに続き、プチ海外2人旅第2弾となった。
268.天壇
今年の初めくらいから、北京の大気汚染が深刻化していた。「最近も改善されていない」との情報で心配していたのだが、オレを迎えてくれたのは奇跡的な青空の北京だった。幸先の良いスタート。
と思ったのもつかの間。1時間後には
「やっぱ中国だよ! ふざけんな!」
という気分になっていた。
予約していた宿の地図がまったくのデタラメだったのだ! 地図の場所はなんと学校! 誰に道を聞いても皆目見当もつかない。しかもプリントアウトしてきたネットの予約ページに記載されている住所は英語。「これを見せて中国人に道を尋ねても無理だ」という結論に至った。オレの中国語力ではこの英語の住所を漢字で書くこともできない・・・。
オレ一人だったら予約は無視して他の宿を探すこともできる。が、今回は2人。深夜に到着するトモヒロくんを空港へ迎えに行くことにはなっているが、最悪会えなかった場合は宿で合流と決めてあった。それを考えると、この宿へ行く必要がある。
こんな時こそネット! なのだが、オレはスマホを持っていないし、ネットカフェも見つからない。スマホの普及でネットカフェは中国でも激減している。
どうしようか? と考えてもしかたがないので、とにかく歩くことにした。この地域は故同(フートン)と呼ばれる古民家が集まっているいわば旧市街で、そんな風景を眺めながら歩くのはまんざらではなかった。
そんな気分で歩いていたのが幸いしたのだろうか、偶然にも探していた宿にたどり着くことができた! その場所は地図の印より東に2本、南に1本通りがずれている・・・。この程度のズレで済んで良かった。これ以上遠くへは歩く気にならなかっただろう・・・。
宿にチェックインして一休みした後、最初に向かったのは天壇。かつての皇帝たちが祀りごとを行った場所で、世界遺産に登録されている。
オレはこの「世界遺産」という言葉に弱いのだ。このキーワードが出てくると、どうしても行きたくなってしまう。それが北京市内に3つ、郊外に3つの計6ヶ所もあり、この旅でも最低3ヶ所は行く予定をしている。
これまでの旅でもこの言葉につられて、いろいろな世界遺産を訪れてきた。感動した場所、落胆した場所、それぞれ印象深いが、残念ながらそのどちらでもない場所、つまり良くも悪くもなかった場所は記憶から消えるのが早いものだ。この天壇もそんなうちのひとつかもしれない・・・。
さらに世界遺産! 次は皇帝の庭園である頤和園へ向かう・・・。
はずだったのだが、夕方のバスは大渋滞に巻き込まれてしまい・・・、バスに乗っているうちに日没。地下鉄では景色が見れないからバス! という判断が大ハズレという結果に。結局途中であきらめて、頤和園に行く途中にある什刹海でバスを降りた。北京ではどこへ行くにも時間がかかりそうだ。
オレがバスを降りた什刹海は、海という名前なのだが実際は湖だ。柳の木が植えられた遊歩道が周囲を一周していて、その周辺にオシャレなレストランやバーが集まるエリアだ。
もう暗くなっているので、店の明かりが湖に映り雰囲気が良かった。が、観光地だけあって高い店ばかり。2人ならまだ良いが、今日は一人。やはりこの辺りの店には入りづらい・・・。
おとなしく宿の周辺へ戻り、近所の安食堂で中華風丼飯を頂いた。旅をしていると食事は楽しみの一つなのだが、出張で頻繁に来ているだけに、中国ではその楽しみも半減してしまう気がする。しかもこの店はハズレ。いや、オレのオーダーがハズレだった。周りの客はほとんどが刀削麺を食べていたからだ。やはり海外では、その店の得意料理を食べないと痛い目に合うことが多い。
宿へ戻りシャワーを浴びると、あっという間にトモヒロくんを迎えに行く時間になった。地下鉄で空港へ向かい、彼と合流してタクシーで戻る。今日の出来事や、明日の予定などを話しているうちに時計は深夜2時・・・。明日は早起きをして、北京の北東へ230kmの承徳という街へ行くつもりだったが、この調子じゃどうやら行けそうにない。
歴代皇帝が祭祀をおこなった天壇 / オシャレな雰囲気の店が多い什刹海
269.万里の長城
2日目、やはり承徳へ行くのは翌日と決め、この日は万里の長城へ行くことにした。最もメジャーで観光客の多い八達嶺へは行かず、最も北京市内から近い居庸関長城を選んだ。理由はズバリ近いから! 今回の旅はたったの4日間。時間を節約して他もまわりたい。というわけだったのだが・・・。
居庸関長城へ行くには、北京市内から市バスに乗って郊外でバスを乗り換えなければならない。近いとは言っても市バスしか交通手段がないため、結局は時間がかかってしまうことになった。有名観光地の八達嶺なら高速を通る直通バスがあったのに・・・。
気を取り直して長城を登る。ここ居庸関は、険しい岩山に囲まれた難攻不落の砦で、長城は急斜面に建てられている。砦なだけあって、長城は居庸関の周囲をぐるりと一周していて、その急勾配の長城を一周するのはかなりの体力が必要だった。実際、登り口は多くの観光客で大混雑だというのに、降り口はガラガラ。つまり、ほとんどの人が途中で引き返していたのだ。
岩山と長城の迫力ある風景に夢中になっていたオレたちは、先を考えずにとにかく突き進んでしまったのだが・・・。体力がきつくなった時には時すでに遅し! もうすでに引き返す方が大変な場所まで来てしまった。進むしかない!
足がガクガクになりながらなんとか一周し、バスを降りた場所へ戻った。が、問題が発生! バスは何台か駐車しているものの、どれ1台と走り出す気配を見せない。これ見よがしに白タクが待ち構えていて、こう言う。
「北京市内まで500元。」
ありえない金額をふっかけてきたが、今回のオレたちは金があって時間がないタイプの旅行者なのだ。しぶしぶ交渉を開始、バスを乗り継いだ場所まで200元で行くことになった。この時、白タクはこの1台しかいなかったため、かなり足元を見られたが仕方がない。
旅を長くしていると、なんとなくタクシーの運転手がどんな人間か解るようになってくる。(そんな気になっているだけだが・・・)
オレは、この運転手も絶対に後でモメるタイプだなと感じていた。交渉の内容や、表情、しぐさ、顔、目。あまり信用できなかったがこの1台しかいないので乗るしかなかった。
案の定、約束の場所よりもかなり遠い場所で「ここだ」と言い出した。たしかにここにもバス停があり、ここからバスに乗って市街まで戻ることもできそうだった。一瞬、気を使って「ここからもバスに乗れるぞ」という意味でここで停まってくれたのかと思ったが、ドライバーは200元と言い放った。アホか・・・。オレたちが10元を置いて、タクシーを降りるそぶりをみせると、彼は文句を言いながら約束の場所へ車を走らせた。
普通なら気分が悪くなるところだが、オレの場合は自分の予想が当たって逆に気分が良かった・・・。
バスへの乗換地点に到着し、タクシーを降りる。しばらくしてバスが来たが、ほぼ満員・・・。ガクガクの足で立ったまま市内へ。
その後も毛沢東の写真が有名な天安門広場、北京一の繁華街、王府井などを歩き回ってクタクタになった。
宿に戻って一服した後、「マッサージに行こう」という話になった。2人とも足がヤバいことになっていたのだ。もう若くないのに無理をしてしまった。明日以降大丈夫だろうか?
持って行ったガイドブックによると、日本人に評判のマッサージ屋があるそうだ。タクシーをつかまえ住所を見せる。
ところが、何台かに声をかけても誰もこの住所を知らない・・・。
なんで??
とにかく聞きまくるしかない! ということでさらに何台かに声をかけたが全滅。そのうち、偶然にも最初に声をかけたドライバーが今度は反対車線を走ってきて、オレは同じドライバーだと気付かずにまた声をかけてしまった。
「またか! さっきも言ったけど知らないよ。一応もう一回住所見せてみな。」
と言われ、メモを渡すオレ。(旅と出張を足して中国経験が半年以上にもなったオレは、ほんの少しだけ中国語が解る。気がする。)
「この番地は知らないけど、この地名なら知ってる。近くまでなら連れて行けるけど乗るか?」
まあ近くまで行けばなんとか探せるでしょ。と考えたオレたちはこのタクシーに乗ることにした。が・・・。高速に乗ってとんでもない遠くまで走っている気がした。しかし、土地勘がないオレたちは間違っているという確信が持てない。
そのうち飛行機が近くを飛んでいるのが見えてきた。空港が近い・・・。完全に違う場所だとようやくオレたちは確信を持てた。が、なぜこうなったのか? ドライバーに騙されたか、ドライバーが勘違いしているか、のどちらかしか考えられない。昼のタクシーの話ともダブるが、このドライバーは騙すような人には感じられなかった。
結果、ドライバーは勘違いをしていた。いや、正しくはオレが悪かった。
日本語の漢字と中国語の漢字は、同じ文字でも違う場合がある。今回の勘違いは、日中の漢字の違いによるものだったのだ。それに気付かなかったオレの失敗だった・・・。
それにしても住所の漢字が難しい字だったこと、似た漢字の他の地名があったこと、しかもどちらも同じ朝陽区にあり、その朝陽区がメチャクチャ広い、といういくつもの不運が重なって、こんなことになってしまった。
タクシー代と時間を無駄にして、結局この日はマッサージも受けられずに宿に戻ることになった。
それで最初にどのドライバーも知らないって言った訳ね・・・。
居庸関の万里の長城 / 天安門
270.承徳
今日は承徳へ行くために早起き。タクシーでバスターミナルへ向かう。昨日に懲りて地下鉄よりも体力を使わない方法を選んだ。
バスターミナルで朝食を食べ、しばらくするとバスが出発。今日は出だし好調だ。
承徳は北京の北東へ4時間ほど走った場所にある世界遺産の街で、チベット仏教寺院が点在している。
チベット仏教と言えばここ数年は共産党によるチベット弾圧が叫ばれているが、清王朝を建てた満州族はチベット仏教を信仰していたため、意外にも北京市内やその近郊にはチベット仏教寺院がいくつも残っているのだ。
バスは快調に進み、3時間半で承徳へ到着。いくつも寺院がある中で、特に大きな2つの寺院を訪れた。
チベットの寺院を模した外見ではあるが・・・。どうも中身に納得がいかない!
かなり偏った意見だということは解っている。解っていてあえて書くが、チベットが大好きで、しかもあまり漢民族が好きではないオレたち2人の目には、漢民族に毒されたチベット仏教寺院に見えてしまった。
が、しかたがない。悪いのは漢民族でもチベット人でも誰でもなく、オレたち2人の目なのだ・・・。
建物はどこか漢民族的だったし、土産物屋にはチベットや仏教に関係のない「いかにも中国」な品々。僧坊にはチベット僧がいるという情報だったが3人しか見かけず・・・。
今にも雨が降りそうな重い曇り空と寒さが拍車をかけ、オレたちの気分を沈ませた。
ゆっくりしていたつもりはないのだが、2つの寺院を見ただけで北京へ帰る時間になった。来た時同様にバスで帰る。
途中大渋滞に巻き込まれまったく動かなくなってしまったが、ドライバーが気を利かせて地下鉄の駅近くで停車。
「急ぐ人はここから地下鉄に乗り換えてください。」
日本よりもよっぽど合理的で少し驚いた。それでも北京へ戻ったのは完全に夜。やはり短期の旅行でこの距離を日帰り観光は忙しすぎた。
ポタラ宮のような寺 / マニ車もある
271.故宮
あっという間に最終日。
チベット人同様、中国に国を奪われてからは肩身の狭い思いをしているウイグル人。そんなウイグル人たちの居住区が北京にあると知り、オレたちは行ってみることにした。
が、そこにはウイグル食材の市場1ヶ所、モスク1ヶ所、ウイグル料理店2軒、羊肉屋5、6軒、ウイグル人10人くらい、羊数頭。
残念ながらそれが目にした全てだった。完全に期待外れ・・・。
気を取り直して景山公園へ。この公園は故宮の北にある丘が公園として整備された場所で、丘の上からの故宮の眺めがすばらしい。本当は故宮の中へ行きたかったのだが、かなりの広さで観光するのには時間が足りなかった。北京ならまた来る機会もありそうなので、今回は外観を楽しむことにした。
全景を見ると余計に故宮のスケール感が良く分かった。これはスゴイ! 万里の長城と言い、故宮と言い、昔から労働力の確保には何の問題もなかったのだろうと想像できる。やはり中国の凄さは人の多さなのだろう。逆に言えばそれが問題でもあるのだろうけど・・・。
最後は景山公園の丘を西へ降りた場所にある北海公園。北海という湖の周辺が公園になっていて、ここにもチベット仏教の仏塔が建っている。清の国を建てた満州族はかつてチベット仏教を信仰していたため、当時から都であった北京には意外にもチベット仏教関連の史跡も多いのだ。
しかしここには白く巨大な仏塔が一基建つのみで、特にチベット好きなオレたちの興味をそそるような物は見当たらなかった。それに、本来なら青い空、青い湖、湖畔の緑に白い仏塔が良く映える公園なのだが、この日はまたしても天気が悪く、灰色の空に灰色の仏塔、黒い湖・・・。そして太陽まで白い。・・・んっ? てことは曇りではなく大気汚染??
翌日の朝に帰国のトモヒロくんと別れ、オレは一人空港へ向かった。
4日間の旅は忙しく、短すぎの感はあったが、去年のソウル同様、良い息抜きにはなったと思う。
さて、次は・・・・・・。
景山公園から眺める故宮 / 北海公園の白塔寺
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