両親を連れて行ってみた
《TRAVEL13》
タイ、カンボジア 2015/12/30-2016/1/4
289.目標
オレは目標を立てるのがキライだ。
それは自分を縛り付け、可能性を殺してしまうものでしかない! そう考えているからだ。
目標を立ててそれに向かい、予定を立ててそのとおりに行動する。そんなつまらない人生はない! とまで思っている。
そんなオレが・・・、目標を立てた。
それは旅から生まれたものだ。
旅をして、多くを感じとり・・・、そして生まれた人生の目標・・・・・・。
それは漠然としていて抽象的で、そしてものすごく大きなもので、だいそれていて、バカげている。とんでもなく難しいことだが、実は誰にでもできること・・・。
の話は今回はしません!
その 『人生』 の抽象的な大目標とは別に、具体的な 『旅』 の目標もいくつか生まれていった。
@死ぬまでに、世界中のすべての国へ行く
Aチャリで世界を一周する
B結婚したら奥さんと2人で世界を一周する
C老後は世界で一番好きな国に住む
D両親を海外旅行へ連れて行く
最初の旅を終えた後、29歳のオレが立てた目標だ。
それからもう、10年が経ってしまった。
ごく普通の人の感覚でいったら、@から順番に難易度が高いと思う。が、残念ながら39歳の、今のオレにはBの、しかも世界一周よりも結婚が最大の難関・・・。
そんな悲しい話もしません!
今回はDの話です。
290.どうなることやら
きっかけはマイルだった。マイルの上手い貯め方を心得てくると、以前の日記にも書いたが、結構なマイルが貯まる。が、問題は貯めることではなく、使うことだということにようやく気付いた。
せっかくマイルが貯まっても、それを使いたいタイミングで予約が取れないのだ!
使いたいタイミングは皆同じで、相当な倍率になるからだ。
今回も2人が東南アジアまで行けるだけのマイルが貯まっていた。あるいは3人が東アジアへ行けるだけの。
オレの分は購入するとして、両親2人分をマイルで取って、3人で東南アジアへ行こうということにした。目標Dを達成する絶好の機会だったのだ。
が・・・、案の定予約が取れず・・・。
だが思い立ったが吉日。ちょっとした臨時収入もあり、思い切って全員分を購入して旅行へ出かけることにした。
行先はバンコクとシェムリアップ、メインはアンコールワット観光だ。
両親は2人そろっての初海外。
はたしてどうなることやら・・・・・・。
静岡市上空より南アルプス
291.トンレサップの夕日
今回は当然のことながら、宿はそこそこのホテルを日本から予約してきていた。バンコクに到着し、スワンナプーム空港からエアポートリンクとBTSを乗り継いで、駅直結のホテルにチェックイン。なんて楽なんだ。次回以降もこのパターンでいこうかな。
到着したのは夜。さて海外で初めての食事には、とにかく 「これぞタイ料理」 という定番中の定番を並べてみた。パッタイ、カオパット、トムヤンクン、ソムタム・・・。2人とも美味しそうにとまではいかなかったが、なんとか食べてくれてホッとした。最悪、毎日ハンバーガーやピザ、あるいは日本食ということも覚悟していたので良かった。
翌朝、シェムリアップへのフライト時間まで2時間ほど自由な時間があったため、ワットサケットへ行くことにした。ここへは何度も来たことがあったが、この日はちょうど仏教行事が行われていて、とても雰囲気が良かった。この寺は丘の上に建っていて、階段を登って行かなければならないので両親の体力も心配だったが、それも問題なし。とりあえずまたひとつクリアといった感じだった。
ホテルに戻り、空港へ向かい、チェックインを済まして昼食、そしてフライト。昼の便だったので視界は良好。見慣れない景色の窓の外に、両親は当然ながらオレまでも見入ってしまった。
シェムリアップに着くとイミグレの長蛇の列に時間がかかり、やっと空港を出たかと思ったら、今度は空港まで迎えに来たホテルの運転手がうまく見つからない。結局はドライバーが手にしていたカードの、オレの名前が間違っていたというオチだったが、かなりの想像力を働かせないとそれに気付かないような間違え方だった。我ながら良く気付いたものだ。
そんなこんなで宿に着いたのは夕方になってしまった。本当は両親を少し休ませてやりたかったが、時間がない。トンレサップ湖へ行きたいのだ。
トンレサップ湖は東南アジア最大の湖で、水上に家を浮かべてで暮らす人々が集落を形成している水上村の観光や、夕日や朝日を見るために多くの外国人観光客が訪れる。今回はその集落もそうだが、とにかく夕日を見たい。いや、見せてやりたい。
急いでトンレサップ湖へ向かった。しかし、湖まで向かう間の赤土の砂埃にまいってしまった。トゥクトゥクをチャーターしていたからだ。しまった! 車で来るべきだった・・・。オレでさえキツかったのだから、潔癖症の母親には辛かったようだ・・・。
さらに、悪評で有名なトンレサップのボートトリップ。ボートのチャーターがとんでもなく高い・・・。両親もいて時間もない状況、今回ばかりは割り切ってすぐに決めるべきだったが、バックパッカー精神がそれを邪魔してしまった・・・。安くチケットを買う方法を探し、他のボートと交渉し・・・、などとしているうちに日が傾きはじめた。
しかたなく高級おんぼろボートに乗り込む。
しばらくしてお決まりの 「学校へ寄らないか?」 と船頭。学校へ寄らせて寄付金をせしめるのだ。しかし、その金は実際に学校へはまわらないというウワサ。
「No! We don't donate!」
学校へ行かないか? という問いに対して、寄付はしないと答えたオレ。こいつ解ってるな。と思わせれば、それ以上はうるさく言ってこなくなる。
当然、このやりとりは両親に説明することはしなかった。今回はオレが今まで見てきた美しいものと、その裏にある現実のうち、前者だけを見せてあげたい。「現実を知るには歳をとりすぎている。」 オレは勝手にそう決めていた・・・。
トンレサップの夕日はキレイだった。
もう15年も前の、まだオレが旅に出る前の話だが、オレは親友のナグと2人でマレーシアのランカウイ島へ行き、そこで人生で最高の夕日を見た。なんのことはない、ごく普通の夕日だったが、海外旅行という付加価値が、そのありふれた風景を人生で最高というレベルまで高めてくれた。
旅を経験した今のオレ、つまりキレイな風景に慣れすぎてしまったオレは、この日のトンレサップの夕日を単なるキレイと表現したが、両親はどのように感じたのだろうか? ランカウイでのあの日のオレと同じように、この付加価値を感じてくれていたのだろうか・・・?
トンレサップの水上集落 / トンレサップの夕日
292.アンコールワットの朝日
トンレサップから宿に戻り、夕食を食べたら早めに就寝。
明日は早起きをして、アンコールワットの朝日を見に行く! しかも明日は元旦。アンコールワットでの初日の出! この旅行の中で1番楽しみにしていた時間だ。
車もうまくチャーターでき、チケット売り場もそれほど混雑せず、問題なくアンコールワットまで辿りついた。だいぶ早く来たつもりだったが、朝日を見るのに1番人気の池の周辺はほぼ場所が埋まっていて、場所どりに苦労した。それにしても凄い人だ。12年前はここまで人は多くなかった。
そんな中、空が明るくなり始めた。雲ひとつなかった。本当は雲があった方が朝日や夕日はキレイなのだが、ここはアンコールワット。そんなものは超越した風景なのだ。
赤紫になった空にアンコールワットの美しいシルエットが浮かび上がり、手前の池にはそれが映り込む。何度見てもサイコー!
旅をしていると何度か経験したことがある、「一度行って良かった場所に、再び行って減滅する。」 というパターン。実を言うと、今回もそれが怖かった。
オレが旅をして数多くの絶景を見てきた中でも、アンコールワットの朝日はトップクラスの風景だった。今回、2度目のこの風景を体感することによって、もしも 「イマイチ」 と感じてしまったら、前回のその 「最高の風景」 のイメージすら壊しかねない。
ところが、そんな心配はまったくもって不要だった。そんなすばらしい風景。そうそうあるもんじゃない!!
空は刻々と表情を変え、そして日は昇った。
今まででナンバー1の初日の出だった。オレは今年厄年なのだが、そんなものを完全に吹き飛ばしてくれた。最高の厄払いになった。・・・・・・、そう信じたい・・・。
一回、ホテルに戻り、朝食後に出直す予定を組んだ。アンコールワット遺跡群には無数の遺跡があるが、代表的な3つだけを見て廻ることにして、ゆっくりめに出発。とにかく両親の体力に合わせたスケジュールを考えることが第一だった。
タプローム、バイヨン寺院、アンコールワット。夕方戻って一休みし、そのままホテルのレストランで夕食。やはり遺跡の観光はそれなりに歩行距離も長くなり、両親はもとより、2人を連れて気遣いをしなければならないオレまで疲れてしまった。
夕方は夕日を見に行きたかったし、夜も街のレストランへ行きたかったが、今回は無理は禁物なのです。
翌日、バンコクへ戻るフライトの時間まで土産物を見て街をまわったが・・・、 シェムリアップは前回来た2004年と比べると、全く別の街に変貌を遂げていた。建物はキレイになり、道路は整備され、ホテルや各種店舗は圧倒的に増加している。当然、街中で見かける外国人の数もケタ違い。
アンコールワットに人が多かったわけだ。
当然そんなことは知っていたし、ネットやテレビで映像を見たこともあった。が、やはりその場に来てみて体感することが一番! 百聞は一見にしかず。これも長く海外を旅して、強烈に感じたことのひとつだ。今回もまさにそれだった。
いったいどこまでいってしまうのか? どこまで変わってしまうのだろう? シェムリアップを心配する旅行者は多い。「もうこの街は死んだ」 とさえ言う人もいる。以前のこの街を知る者の多くが同感だろう。オレもそのひとりなのだが・・・、その反面、年をとったせいか、今回は両親と一緒だったせいか、 「この方が楽だし快適だな」 とも思ってしまった。
旅を終えて7年半。そろそろオレも、普通の人の感覚に戻ってきたのかもしれない・・・・・・。
アンコールワットで初日の出 / 昼のアンコールワット
293.やっぱりここバンコクです
バンコク。オレの第二の故郷とも言える街。
オレの故郷は、オレという命が生まれた街、静岡だ。そして、バックパッカーとしてのオレが生まれた場所はこの街、タイのバンコク以外のどこでもない。
何年も前から両親を連れて来るならこの街だと考えていた。単純にアテンドするのに 「慣れている街の方が良い」 ということもあるが、それ以上に 「第二の故郷だから」 という特別な感情があった。
ワットプラケオ、ワットポー、王宮、ワットアルン、と定番のお決まり観光コースを見て廻った。ついでにちょっとだけ、カオサンにも寄りながら。
歩く距離も長く、暑さもあり、両親の体力的にはキツいかも? と心配したが、何回か休みながらだったので、2人ともなんとかがんばってくれた。
残りの時間は土産物を買うために、バンコクのニューショッピングスポット、アジアティック・ザ・リバーフロントへ向かう。
これまで、再三 「両親の体力を心配して〜〜〜」 と書いてきたが、実際に心配していたのは母親だった。オヤジは趣味でウォーキングをしていることもあり、脚力は問題ないとオレは考えていた。
ところが、これだけ老いてもさすが女性。なぜが故に女は買い物が好きなのか? 「甘いものは別腹」 のごとく土産物を物色している間は体力を消耗しない。とにかく歩き回った・・・。
しだいに消耗するオレとオヤジ。いや、むしろ好き勝手に動き回る2人に気を使わなければならないオレが一番キツい! オレの場合、体よりも、頭よりも、気を使うことが最も体力を使うのです・・・。
つまり、普段はな〜んも気を使っていないんだね。
それはここ、タイに根付く 「マイペンライ精神」 に繋がっているのですよ!
と、心底タイを愛してしまったオレは、この第二の故郷へ両親を連れてきてみたかった。その夢はかなえたが、そう考えてみると今回の旅は、オレのための旅だったような気がしてきた。良く考えれば、無理やり連れてきたと言えばハズレではない。両親は、それなりに楽しんでくれたようにオレには感じられたが、実際のところはどうだったのだろうか・・・?
ただ・・・、オレが夢をかなえたのだから、それだけで2人とも満足してくれるはず・・・??? でしょ???
とにかく、何事もなく無事旅を終えられて良かった!
ワットプラケオ / アジアティークの夜
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