オレタチFUTURE Reprise !!
TRAVEL14》


タイ 2016/7/15-19






294.ランニング



 前回のおさらいです。

 @死ぬまでに、世界中のすべての国へ行く
 Aチャリで世界を一周する
 B結婚したら奥さんと2人で世界を一周する
 C老後は世界で一番好きな国に住む
 D両親を海外旅行へ連れて行く

 最初の旅を終えた後、29歳のオレが立てた目標だ。

 ようやく今年の正月にDを実行したオレ。次はついにBの話です!!!

 と、なれば良いのですが・・・・・・。順番でいけば次はBなのだが、いまだにその気配は感じられない・・・。

 で、今回はAに向けたお話。(A)と言おうか、それともEと言おうか、とにかくAを実行するために、オレは20年計画を立てた。いや、正確に言うとその計画をスタートさせるまでの10年を入れると30年計画で、上記のとおり29歳のオレが決めたことなのだが、
 
 60歳になったら会社を退職し、チャリで世界を一周する!!
 それに向けて、40歳になったら20年間のトレーニングを開始する!
 
 という気の長い計画なのです。
 29歳の時点で、今から30年間トレーニングする。ではなかったところが、いかにもオレらしい・・・。

 そして、それから10年が経とうとしていた頃、そんな計画も忘れかけていた39歳のオレは、あるきっかけで登山を始めた。その翌年には、また別のあるきっかけでランニングを始める。これぞまさに運命! ってヤツですな。
 とにかくここ数年のオレは、体を鍛えている。それもこれも、最終目標はチャリで世界一周!!

 そんな状況のオレなのだが、そのランニングを始めるきっかけをオレに与えたのはナグだった。

 オレタチの地元、静岡では有名な恒例行事の、「日本平桜マラソン」。
「オレは出るから、お前も出ろ!!」
 という内容の連絡が来たのがそもそもの始まりだった。

 以前から何度か誘われてはいたものの、オレには全くその気がなかった。子どものころから短距離は得意だったが、長距離になると極端に苦手だったからだ。
 と、言いながらも、実はランニングをしていた時期も今まで二度ほどあった。「体力づくり&痩せるため」 だったのだが、その二度とも2ヶ月ほどでイヤになって辞めてしまった。
 今回の誘いに関しても、きっぱりと断るのが今までのオレだった。

 さらに時間を遡ること半年。同じような出来事があった。
「今度、山に登るから、お前も登れ!」
 トモヒロくんからの誘いだった。
 以前、なんとなく一緒に富士山には登ったことがあったが、オレも彼も登山を趣味としているわけではなかった。この時も単なるバックパッカーの気まぐれ、ノリで登っただけだった。山に登ろうと誘われても、気がのるわけでもなかったが、今回もただ何となく付き合うことにした。一回だけのつもりで・・・。
 しかし、この一回で山の素晴らしさにハマってしまったオレたち2人。その後も登山を続けるきっかけとなったのだった。

 そんなことがあり、「もしかしたらランニングもやってみたらハマったりして・・・。」 と考え、誘いに応じたのが始まりだった。
 登山と同じだった。やってみると、ナゼかあれだけキライだったランニングにハマってしまった・・・。

 オレタチは桜マラソンの10kmの部に参加し、その後も奇跡的にランニングは続いている。



295.パタヤっこ

 タイの首都バンコクから、南へ車で走ること2時間。海沿いにある街がパタヤだ。海はそれほどキレイではないのだが、バンコクから近いために人気のビーチリゾート。
 オレが初めてタイへ来た時にもここへ来たが、やはりバンコクから近いのは大きい。ちょっとした時間が余った時に、「じゃ、パタヤでも行こうか」 といった具合になるのだ。旅をしている間にも、オレはこの街へ何度も来ていた。
 いや、旅に出る前でさえも2回も来ていたのだ。ある時、旅で出会ったある日本人に、オレはこう呼ばれた 「パタヤっこ」 。
 そうかもしれない。オレはパタヤっこ。

 パタヤマラソンという大会があり、やはりナグに誘われて出場することになった。大会はちょうど日本が3連休のタイミングでスケジューリングされている。連休の前日の午後と、連休の翌日の午前に半休をもらって、3泊5日(帰りは機内泊)で参戦だ。
 今回はハーフマラソン。南国のタイなので、暑さ対策ということでスタートは早朝。それでも暑いことに変わりはなく、ふたつの丘を往路復路と計4回も越えて行かなければならない、かなりタフな大会らしい・・・。

 成田発のエアアジアを利用した。夕方出発して深夜のバンコクに到着。エアアジアなのでドンムアン空港への到着だ。
 なんとも懐かしい感覚。ナグと2人でドンムアンに降り立ち、目的地はパタヤ。オレの人生を変えたあの旅の再現のようでもあるが、あの頃とは全く違う今のオレタチ・・・。もう2002年の時のような、新鮮さと緊張感は微塵もなかった・・・。

 ドンムアンは混む。とにかく混む。正月にカンボジアから帰ってきた時もそうだったが、とにかくイミグレで時間がかかる。空港直結のホテルに予約を入れておいて正解だった。空港を出るのに1時間半もかかってしまったからだ。深夜の3時にようやく眠りについた。

 翌朝パタヤへ向かう。
 道中の車窓もナグと一緒にかつて見た、あの懐かしい景色だった。・・・んっ? そう言えばナグも、パタヤへ来るのは3回目だ。タイへ来たのが3回目なので、毎回パタヤへ来ていることになる。オレではなく、本物のパタヤっこはナグだった。

 この日のパタヤは最高の天気! パタヤの海はそれほどキレイではないが、ここまで天気が良いと海もキレイに見える。青い海に青い空、白い雲にヤシの木。カンペキなビーチ風景。さらに街中が大会ムードに染まっていて、二つの意味でテンションはMAXだ!
 大会の受付を済ませたら、後はビーチのパラソルの下でのんびりと過ごす。明日の大会にそなえて体力温存だ。本当は肝臓も温存しないと、なのだが・・・。このシチュエーションではそうはいかないのだ! もう飲むしかないでしょ!!

   
宿泊したホテルの部屋から / 天気はサイコー! 夏だぜ!!



296.パタヤマラソン

 オレタチの泊まっているホテルは、スタート地点の近くにあった。このホテルに泊まるのは実は3回目。初めて来た時からナグがここを気に入り、毎回利用させてもらっている。まさかの偶然で、スタート地点へ行くには最高の立地だった。
 ハーフマラソンは早朝の5時10分スタート。

 スタートラインへは申告タイムの早い順に前へ行けるのだが、そこはおおらかなタイの大会。いや、いい加減なタイの大会。オレタチは最前列に陣取った。見た目だけは速そうなので大丈夫!
 さぁ! いよいよスタート! と思ったが、大会のMCがマイクでランナーたちを盛り上げるだけ盛り上げて、テンションを上げさせるだけ上げさせて、スタートの合図を出さない・・・。スタート時間を過ぎてもベラベラとしゃべりまくる。出た! 海外でのマラソン大会は初だったが、スポーツの大会でもスタートが遅れるのか! まだまだオレも甘かった・・・。

 遅れた原因は、大会に出場するお偉いさんの遅刻。どこの誰だか解らなかったが、ぞろぞろとSPを引き連れ登場。王族の人かな?
 そしてようやくスタートの合図! 前の方の早い集団の中にいたが、さすがにみんな速い! その最前列からスタートしたお偉いさんは、10人ほどのSPに周りを囲ませて走っている。とにかくジャマで、しかも遅い・・・。抜くのに苦労してしまった。その間に、先行していたナグとの差はひろがるばかり。

 ナグはオレよりも前からランニングをしていて、当然オレよりはるかに速い。ナグは大会でハーフを走るのは2回目だが、前回のタイムはオレにはどうやっても出せそうもないタイム。今回のオレのテーマはどれだけナグに着いていけるか? だった。
 ところが、スタートからわずか1kmではるか前方へ行ってしまい、その後見えなくなってしまった。完全に誤算だった。もう少し勝負できるかと甘い考えでいた。

 しばらくはナグの影を探しながらペースをあげて走ったが、3km地点であきらめた。これ以上このペースで走ったら絶対にバテてしまう・・・。と思った矢先、なんとナグが後ろから現れた!
 一瞬、気付かないうちにどこかで抜いたのかと思った。知らない間にオレが先行していたのかと思った。がしかし、なんと・・・、ナグはトイレへ行っていたそうだ・・・。何やってんの・・・。
 しばらく一緒に走った。ナグの後を着いていくオレ。・・・・・・。なんかペース遅くない???
 オレに合わせて一緒に走ろうと、ゆっくり走っている。
「気にしないで先に行ってくれ!」
 そう言ったがナグは行かない。しかたがないのでオレが前へ出た。少しペースを上げる。
 ・・・・・・。ナグは着いてこなかった。あれっ??
 ナグは先に行かないのではなく、行けなかったのだ。まさかの失速!

 ようやくオレは理解した。良く考えてみると、スタート直後のナグのハイペースは異常だった。ずうずうしく最前列からスタートしてしまったため、早い人のペースに惑わされたのだ。オレが正解だった。着いていけなくて当然だった。
 結果、ナグは折り返し地点の手前でバテて、オレにすら着いてこれなくなった・・・。

 練習のタイムと比較しても、平凡なタイムでゴール。ナグには勝利した。が、こんなナグに勝ってもうれしくともなんともなかった・・・。負けてもベストタイムを出した方が、まだマシだった。
 しかし・・・、この気温の中、このアップダウンの激しいコースで、このタイムはもしかしたら上出来だったのでは? と少しだけポジティブに考えてみたら・・・、なんと! 思ったとおりで、順位的にはビックリするような成績だった。2837人中、112位! たしかにタイの大会レベルは低いとは言え、それでも上位4%以内というのはすばらしい成績でしょ!!

 やってやったぜ!

   
緊張感に包まれるスタート前 / ゴール後は達成感に!



297.オレタチFUTURE Reprise !!

 心地よい疲労感のオレタチの体。向かう先は当然ビーチ! 昨日はパタヤのビーチで過ごしていたが、今日はボートでラン島へ行き、キレイな海を眺めながら体を癒す。
 今日も天気はサイコーだ! マラソン中も途中で夜が明け、早朝のビーチ沿いを走りながら、最高に気持ちが良いと思っていたが、ラン島へ来てみると、これまたそれ以上に気持ちが良い。
 最高の青空の、暑い暑い南の島で、ビーチパラソルの影で心地よいそよ風に吹かれながら、美味しいタイ料理と、キンキンに冷えた美味いビール。横にいるのがナグでなくて美女なら・・・、とお互いが思っていたことだろうが、それでも親友とこの時間を共有できるのは最高(の次くらい)に幸せだ。
 マラソンの疲労感と、アルコール。もう今は何もできないが、何もしない贅沢がここにはある。まさに至福の時。

 パタヤにもう1泊して、翌日バンコクへ戻った。バス、BTS、ボート、トゥクトゥクを乗り継ぎカオサンへ。
 この日の夜の便で日本へ帰るオレタチは、荷物置き場とシャワーを使うために、1泊もしないのだがカオサンの安宿にチェックインした。フロントではお化粧中のガトゥーイ、つまり変身中のオカマちゃんが対応してくれた。こんなん人に見せてよく平気ねぇ・・・。

 粗末な、いかにも安宿といった感じのボロい部屋だが、最近のオレはそこそこの宿に泊まっているため、これはこれで懐かしい感じがして嬉しかった。そんな部屋でひと休みしてから階段を降りると、オカマちゃんはまだ念入りに鏡を見ながら何やらオペ中。その彼を横目に、表へ出たオレは、唖然としてその場に立ち尽くしてしまった。まさに我が目を疑うというヤツだった。
 オレタチが利用している宿は入り口が2ヶ所あり、カオサン通り側と、その裏側とにある。オレタチはその裏側から入ってチェックインし、今度は表側から外へ出て初めてカオサンを目にしたのだ。

 そこはオレの知っているカオサンではなかった・・・。
 屋台がない! 人がいない! シャッターを閉めている店もある! 知らない人が見れば普通の繁華街に見えるかもしれないが、かつてのカオサンを知っている人が見れば、ゴーストタウンも同然に見えるほどだ! どうして? なんで? 何か大事件が起こったのだろうか? まさか! 以前から体が弱っていて入院が続いているプミポン国王が!? とまで思ってしまった・・・。
 正月に来た時には今までどおりだったように感じたのだが、この半年でここまで閑散としてしまうとは何事なのか??

 バックパッカーのカオサン離れが進んでいる。という話は聞いたことがあった。ついにカオサンは死んでしまったのだ・・・。
 信じられなくてカオサンの周辺を一周したが、どこも同じ。まるで活気がない・・・。
 状況が理解できていないナグは、こんなオレを見て
「何言ってんの?」
 と言った感じだったが、オレにとっては忌々しき事態だった。オレの青春が消えてしまった・・・。カオサンは終焉を迎え、オレの旅も本当の終わりを迎えた・・・。そしてここにいるのはこの男、ナグ。
 オレの旅の始まりにも居合わせたナグ。まさかこの旅がオレの旅の終焉になろうとは・・・・・・。ナグとオレとバンコクは不思議な運命で繋がっているのか・・・。

 カオサンの現状。そんなことは知らずにここへ来たが、実は今回の旅が 「ひとつの区切り」 になるかもしれない。ということを予感していた。ナグが一緒だということが大きいが、しかしその根拠も理由もなかった。単なる予感でしかなかった。
 まさか現実になってしまうとは・・・。

 本気で、何か大事なものを失った気分だった。喪失感、虚無感に支配されていくオレ・・・。
 あの時の、あの旅の最後の朝の感覚と似ていた・・・。

 その後、王宮周辺や、ワットアルン対岸の船着き場周辺をブラブラして、宿へ急いだ。こちらへ来てからずっと天気は良かったが、雷が鳴り始めたからだ。今は雨期で、スコールがやって来る合図。
 なんとか本降りになる前に宿へ辿りついた。
 恐ろしいほどに天気が良かったパタヤから、閑散としたカオサンに来て暗雲が立ち込め、そして雨。まるでオレの気持ちを見透かしたかのようなスコールだった・・・。本当に、旅の終わりがやってきてしまったのだろうか・・・。

 事実、今回の旅に関しては時間が無くなってきた。シャワーを浴びたら、そろそろ空港へ向かわなければならない。
 荷物をまとめ、フロントへ降りる。そしてオカマちゃんの一言。

「次はいつ戻ってくるの?」

 旅をしていると、本当に不思議なことが何回も起こった。オレの心に大きな変化があると、決まって誰かが心に響く一言をオレに向けるのだ。それらは、誰しもが何気なく発しただけの、深い意味のない一言であることは解っている。オレが都合の良いように、勝手に心に響かせている。そんなことは解っている。でも、それが旅なんでしょ!

 そうだ。オレは戻ってくるのだ・・・。
 まだ、旅は終わりでなんかない。
 オレタチFUTUREはFINALではなかった。

 オレタチFUTURE Reprise !!

 実際、後でネットで調べてみると、2週間に一度だけ屋台禁止の日が設けられたとのことだった。この日がちょうどその日。
 やはりカオサンは死んだ訳ではなかった!
 しかし、今後は段階的に規制を拡大していくそうだ。衛生面を考え、将来的には屋台は消える運命にあるらしい。本当にそんな日が来ることがあったら、それこそオレの旅も終わる日なのかもしれない・・・。

   
至福のビーチ / カオサンカンサン



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