VOL. 27 
 FREEDOM
 第4話  【納車】
 
 年末に車両はお店に届いたものの登録に必要な書類が本国から届いていなかったので、納車までの間は購入先であり東海地区でのMV AGUSTA正規取扱いディーラーとなる浜松の『タイラレーシング』に展示される事になりました。この時点で国内にはまだ20台程しか輸入されておらず、全国のMV AGUSTA取扱い店でも試乗車や展示車を揃える事は困難な状況でした。この為に車両入荷の情報を聞きつけた現オーナーや、これから購入を検討している人達が毎週、多く訪れていました。
 このF4-RR1078は国内の排ガス規制や騒音規制をクリアする為にエンジン回転数が8500rpm程でリミッターがかかります。本国仕様では190PSの高出力を誇るエンジンですが日本仕様はDUCATIの最新モデルと同様に100PS強にデチューンされています。慣らし運転中や日常的な使い方であれば6000rpmも回せば事が足りるので問題ないでしょう。フルパワー化する方法が判明後、必要であれば解放すれば良いわけですし。
 そして年明けから毎週のようにバイクを眺めに行く事、1か月半。2月中旬に登録が完了したのでいよいよ納車可能との連絡を受けました。私鉄とバスを乗り継いで『タイラレーシング』に赴き、ガレージでスタンバイされていたF4-RR1078にいよいよ火が入れられます。軽いクランキングの後、目覚めた1078ccのエンジンは、ジャラジャラと今まで乗っていたホンダ車では聞いた事がないメカニカル音と長短4本のサイレンサーから奏でられる調べに聞き入ります。暖気が十分に行われたところで取扱説明を受けて、一度エンジンを切ります。そしてバイクに跨りポジション合わせを行います。F4-RR1078のステップは可変式で位置を変更できる様になっているので自分好みに仕上げることができます。ボクは標準の位置のままでOKを出しました。しかしハンドルが遠くシート高が高すぎて片足すら届かない状態で前後のサスペンションも全然動かない位、高荷重設定になっていたのでサスペンションのアジャストを前後ともに最弱に、リヤのリンクを一番短くしてもらって車高を下げてもらいました。各部が馴染んできて動きの渋さが無くなってきたら徐々にアジャストを戻しながら好みのセッティングを出していこうと思います。
 慣らし中となる1000Kmまでは5000rpmの回転数に制限されていますが、さすがは1100ccです。トルクフルなV型エンジンばかり乗り継いできたので最初は違和感を感じましたが、排気量にものを言わせて加速していきます。そして4000rpmを超えてからの排気音はまさにミュージックと呼んでも差し支えなく、レーサーを含めて日本車でこれに勝る排気音を奏でるバイクにお目にかかった事はありません。バイク雑誌のインプレッションでは10000rpm以上の回転数となると更にエキゾーストノートが刺激的になるというのですから楽しみです。しかし750ccのF4はこれよりももっと官能的なサウンドを奏でるというのですから、ついつい回してしまうというのも頷けます。
 自宅では仕事から帰ると毎日のようにガレージ内でせっせと磨いて一人、悦に入るのでした。

その名は F4-RR1078

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