VOL. 29
● Dead or Alive 〜今、話そう〜
第5話 【激励】
一夜明けて周りが明るくなってくると部屋の様子が分かってきました。部屋は4人部屋でボクの他に若い方が2名,年配の方が1名入院していました。しかし防火カーテンで仕切られていてベットに固定されたままの状態だったのでどんな方が入院しているかはこの後、1週間ほど経過するまで分かりませんでした。事故翌日は相変わらず痛みが激しく両脚が激しく燃えるような感覚に襲われます。上半身を起こして両足を見ても包帯でグルグル巻きにされているので様子を窺い知る事はできません。ただベットの端には滑車が取り付けられ右脚に突き刺さった金属棒にワイヤーが掛けられ、おもりで引っ張られている事だけは見て取れます。看護師や担当医師が消毒に来た際にも患部の様子は見る事はできませんでした・・・というか、怖くて見る気になれませんでした。ただ看護師の話だと左足の甲部は骨や神経が見える程、肉が削られているとの事。どうやらトラックの下敷きになった際にアスファルトとの摩擦で大根おろし状態になった模様です。事故時はハイカットのライディングシューズを履いていましたが、後から見たらボロボロになっていました。普通のスニーカーだったらもっと悲惨な状況になっていた事でしょう。この話を聞いた時には一気に血の気が引きましたが、看護師は患部を見ても顔色一つ変えずに治療をしています。「流石はプロだなぁ・・・」と思いましたが、後から聞いた話だと「今までこんなひどい傷は見たことないわよ」と言われました。無くなった甲の肉はどうやって治すのだろうと思いましたが、これはまた別の機会にお話ししましょう。
手術予定日は1/19(金)に決定しました。手術日まではずっと右脚にはおもりを吊られたままの状態になるのでベットの上から動く事が出来ず寝返りもできません。食事も洗顔もトイレもすべてベットの上です。ずっと仰向けの姿勢となっている事で、日に日に背中やお尻が痛くなってきました。ベットをリクライニングしたり上半身だけでも横向きになったりして少しでも血行不良を緩和します。寝たきり生活は本人も介護する方も大変だと実感しました。
事故翌日に家族が入院に際してのいろいろな生活用品を持ってきてくれました。こんな目になっても懲りずにバイク雑誌、ラジオ、携帯電話の充電器、着替えや食事用品など。とりあえずバッテリー切れした携帯電話を充電して自分のHPの掲示板に書き込みをしてくれたスクーデリア・オクムラの奥村社長にメールをしました。すると奥村社長からは、『俺はね、あなたとショップとお客さんの関係を超えて付き合っているつもりだから、昨日ウチに来てくれて腹を割って話をしてくれて、ほんとにうれしかったんだよ。 (中略) しばらくは辛いけど、痛いけど、怪我は治る。バイクもウチで直す。仕方ないことなんだよ、こんな事もあるさ。自分を責めるなよ、絶対に!こんな時こそ、前向きだよ!』とのメールが返信されてきました。まるでボクの心情を察していたかの様な内容で、嬉しくて涙しながら何度も読み返しました。そして再びバイクに乗る事を目標にボクの憧れのGPライダーであるバリー・シーンやマイケル・ドゥーハンの様に諦めないで復帰しようと誓ったのでした。