VOL. 29 
 Dead or Alive  〜今、話そう〜


第10話  【乗車】

 事故発生から2ヶ月半の入院生活と退院してから地元、浜松の整形外科医院へのリハビリ通院によって、その年のゴールデンウィークを迎える頃には松葉杖からT字杖を併用した歩行ができるまで回復しました。それから更にリハビリは続きます。主には怪我によって可動範囲が狭くなってしまった右膝と右足首のストレッチと右脚全体の筋力が衰えてしまったので筋力を回復するトレーニングです。それも全ては再びバイクに跨るために!
 6月初旬になるとT字杖の使用も不要となり、ゆっくりですが自力で歩行ができるようになりました。しかしまだ右脚の筋力が衰えたままなのでポジションの楽なVFR-VTECに跨っても膝が曲がりません。そしてバイクが倒れても両脚で支えられない状態なので更なる時間を要しそうです。浜松の整形外科医院への通院に切り替えてから間もなくして同僚の手助けを借りて傷ついたVTR1000SP-1をスクーデリア・オクムラへ修理に出しました。同店の元デモ車両という事でオールペイントされていたり、市販パーツ類にも色々と手が加えられていたりと、浜松のバイクショップへ修理依頼する事ができなかったからです。当分の間は乗れそうにもなかったのでリハビリ期間を利用して時間をかけて修理してもらう事にしました。
 7月にVTR1000SP-1の修理も完了し、友人の手助けを受けて再び引き取りに行きます。レーシングスタンドで直立状態になったVTR1000SP-1に跨ってみるとまだ右膝が曲がらないのでステップに足がかかりません。当面はVTR1000SP-1に跨れるまで膝が曲がるようになるのが目標です。そんな目標を胸に秘め、リハビリ生活を続けた8月初旬。まだ右膝の曲がりは完全ではありませんでしたが、VTR1000SP-1を自宅駐車場から10m先のガレージまでエンジンをかけて乗ってみました。事故後、半年ぶりに乗るバイク。この瞬間の為に歯を食いしばってリハビリに励んできました。たったの10mですがエンジンの鼓動を全身で感じると共に、再びバイクに乗れた嬉しさがこみ上げてきたのでした。
 そして8月中旬に開催された『バイクのふるさと浜松2007』にホンダドリーム浜松店の常連さん仲間が交通安全パレードに参加するという事で見学に行く事にし、修理完了後、ボクの乗車を待っていたVTR1000SP-1で会場を訪れたのが本格的なライダーへの復帰記念日です。まだ右脚が不自由な状態で停止時は左足でしかバイクを支えられない状態で公道に繰り出したので絶対に転倒はできません。そしてスピードに眼が追い付かなかったのでとても疲れました。
 駐輪場でボクのVTR1000SP-1を見かけた仲間が次々と復帰を祝う声をかけに来てくれました。事故の状況から再びバイクに乗る事は難しい(当初、通常の生活も難しいと思われていました)と考えられていた中でのライダー復帰だったので、とても嬉しかったです。
 そして「二度と、事故は起こさない」と心に誓ったのでした。


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