昨今オール電化住宅が増えてきている。ガスは危険だ、クリーンじゃない、配管が必要だ、だから電気で全部やってしまおう。気持ちは良くわかる。ガス給湯器VS電気温水器ならば、両者のメリット・デメリットを比較して考えて、どちらの選択をしてもあながち間違いではないと感じる。
ガス給湯器
メリット:占有面積・体積が少ない。湯切れが無い。電源を入れたら、すぐにお湯を供給可能。追炊・暖房機能つきもある。給湯単能ならば機器費用はきわめて安い。全自動・追炊・暖房機能が付加しても実売価格20万円強。水道直結なので水圧が高くシャワーの勢いが良い。二階や三階にも給湯可能である。
デメリット:爆発事故の可能性がある。特にLPガスの単位体積あたりのエネルギー量は、都市ガス(13A)の二倍以上で怖い。ガス配管が必要。排気ガスが出る。60ppm以下だけどNOxも発生する。効率は決して100%にならない。通常の給湯器で効率は80%くらい、潜熱回収型でも効率は95%くらい。ガスの単価は意外と高い。ガス欠の可能性もある。(ゼロに近いでしょうが)
電気温水器
メリット:爆発しない。深夜電力の安い電気を使用できる。ガス配管工事費が不要。
デメリット:貯湯タンクを有するため設置面積・体積が結構大きい。湯切れしたらパニック。放熱ロスがある。減圧弁を必ず用いるため、給湯圧力は低い。したがって、二階への給湯は少ししょぼい。追炊機能がない。イニシャルコストは安くない。よーいどんで通電を開始しても、お湯が出てくるまでひたすら時間がかかる。効率は100%に限りなく近いのかな?
しかし、昨今はやりのエコキュートはちょっと話が違う。COPが3とか4である。(効率が300%とか400%だとイメージすれば良い) 電力会社の試算を鵜呑みにすれば光熱費がガス使用に比べて1/5くらいだそうである。こんなおいしい話を聞いたらガスを選択する人は皆無になってしまうのではないかと感じてしまう。ただ、電力会社は都合の良い部分しかアピールしていないだろうから、一般ユーザーが気づかない問題点もあるのかもしれない。エコキュートシステムの仕様を眺めてみると素人でも少し不安を感じるような点が、いくつか見受けられる。例えば、まず90℃の貯湯である。常温とはかけ離れた温度であるため放熱によるロスが心配である。当然しっかりとした断熱をタンクに施してあるだろうが、冬場ともなると外気温との温度差が90deg近くになる。これじゃ放熱しないわけが無い。次にもう一つ90℃出湯の不安要素がある。それはミキシング弁の耐久性だ。90℃の湯を給湯管に流すわけにはいかないので、エコキュートのなかで水と混ぜて温度を下げて出湯している。ミキシング弁の方式も知らずに偏見で語っているのだが、だいたい、こういう混合する弁が壊れやすいのはものの常であると、私は思っている。
エコキュートは、冷媒こそ違うもののエアコンと同じだと考えれば良いだろう。するとエアコンの宿命とも言うべき外気温の低い時の冷媒の気化が十分にされるのだろうかという疑問ももってしまう。冷媒が気化しなかったら水を加熱する能力は損なわれてしまう。貯湯タンクの水を90℃まで加熱するつもりが、そこまで加熱できなかったなんてことも起きるのでは?寒冷地向け仕様の製品がラインアップされているということは、外気温の影響を多分に受けやすいということだ。
次に気になるのは、エコキュートが商品として熟成していないことが挙げられる。一般への市販が開始されてまだ数年しか経過していない。フィールドにおいて様々な問題点が発見されて、それがフィードバックされてより良い製品へと改善されていくわけだが、エコキュートはまだ途上にあるのではないか。だいたいエコキュートそのものが何年くらい使えるのかがわからない。電気代が減っても製品の交換サイクルが著しく短くなってしまうのでは堪らない。ガス給湯器は、外れの商品に当たらない限り最低でも十年、うまくいけば二十年近くもつだろう。一方エコキュートの交換サイクルが、どのくらいになるのか?すぐに答えは出てこないだろうが、知りたい情報である。
エコキュートは貯湯方式で、だいたい400g前後の貯湯タンクを有している。この貯湯量を少ないという方もいるようである。90℃で貯湯しているので四〜五人家族ならば400g前後で十分なのではないかと私は思うのだが、昼間の高い電力を使って不足分を加熱しているというユーザーさんの報告もあるので実際のところはどうなのでしょう?
また、エコキュートに内蔵される減圧弁は170kPaに調圧されているようである。一般的な貯湯タンクを有する設備は80kPa程度なので、エコキュートの給湯圧力は決して低くない。したがって、二階への給湯も十分できそうな感じをうけるが、カタログ上では二階への給湯能力は十分でないような記述がある。おそらくミキシング弁の圧力損失が大きくて適温に混合した湯の給湯圧力は低くなっているのではないでしょうか?このあたりは、水道直結のガスには勝てない部分かもしれない。
若旦那は仕事の関係からガス給湯器にする選択肢しかなかったが、もししがらみが無ければ、今使い始めたガス給湯器の買い替えタイミングにおいてエコキュートにするか、再度ガス給湯器にするか検討したいと思う。ただ問題点としては、風呂のそばにエコキュートを設置するスペースが無いことが挙げられる。効率よく使うには一番お湯を使う風呂のそばに貯湯タンクが設置されるべきだろう。この距離が離れれば、適温のお湯が蛇口から再出湯されるまでの死に水の量が増えてしまって、無駄が増えることになる。この点だけは何とか良い方法を見つけ出したいものである。また、ガス給湯器からエコキュートへの転換は、使用電力量のアップに繋がるため電気配線の変更も必要になるだろう。したがって取替え時に莫大な設置費用がかかってしまうかもしれない。そういう面を考慮すると新築時にあきらめたエコキュートへの転換は、未来永劫陽の目を見ないかもしれない。しかしながら、ランニングコストの安さと、風呂の追い焚き機能だけでなく温水循環方式の床暖房にも対応できていることも併せて考えると、初期のイニシャルコストは高いものの非常に購買意欲をそそる商品である。
|