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雑記帳
近藤誠著『がん治療の95%は間違い』のご紹介
2015年12月16日 近藤先生の新刊本『がん治療の95%は間違い』(幻冬舎新書)の「はじめに」の一部を引用します。 <人は、ある日突然、がん患者になります。 たとえば人間ドックで、肺や胃に「何か影が見えます。専門医のいる病院へ行ってください」と言われ、愕然とする。紹介された大学病院やがんセンターでは、初対面の医者に「肺がんですね」「おそらく胃がんでしょう」などとズケズケ言われ、フルコースの精密検査を予約させられ、入院と手術の日を指定されてしまう―――。 僕の外来に来られた患者さんは「まるでベルトコンベアーのようだった」「野戦病院みたい」と口々に語ります。 しかし悲しいかな、初めてのことだし知識が乏しいので、医者の言うままにするしかない。がんと宣告されたショックのあまり言葉を失うことも多く、「放っておいたらどうなりますか?」「私の余命は?」と聞けたらいいほうです。>(引用終わり) 予備知識のない一般人にがん宣告される場面がまざまざと目に浮かびます。がん初心者にとっては、23年前に何の知識もなく乳がん手術に応じてしまった私が一番悔いている場面と何ら変わらない状況が今もあるようです。 この本は近藤先生が2013年4月に開設された「近藤誠セカンドオピニオン外来」に相談に訪れた人たちとのやりとりが再現されています。相談者はあらゆる種類のがんの、さまざまな進行度(=病期)の人たちなので、がん治療のことで悩んでいる患者や家族にとって考えるきっかけになると思います。 私は今年のはじめに知人のTさんから検診(マンモグラフィー)で乳がんと言われて生検をすすめられたと聞かされた時はびっくりしました。しこりはなく、マンモグラフィーだけでがんと言われ、ショックで食事ものどを通らないと言われました。 私のような誤診被害者になって欲しくなかったので、Tさんにはあわてなくて大丈夫だから落ち着いて図書館やインターネットで乳がんについて情報を集めて知識を増やすことが大事だと伝え、近藤先生の本を数冊渡しました。 その後Tさんから「予約を断って様子をみている。病院へは行ってないけどなんともない」と聞かされほっとしました。予約を断ることもどうしようどうしようととても悩んでいたのに知識を得ることで強くなれたのだと実感しました。 秋になって、そのTさんから、「知り合いのSさんが乳がんと言われて全摘手術を受け、抗がん剤治療を受ける」と聞かされてびっくり。「北斗晶さんが全摘して抗がん剤だから」迷わず即決みたいな話に衝撃を受けました。治療の選択に「有名人が受けたから」という項目が加わってしまった感じです。 全摘手術や抗がん剤の後遺症で苦しんでいる私が声を上げて注意を促してもなんの力にもならない、有名人の影響力の大きさに無名の素人の力の無さを痛感して落ち込みました。 日本での乳房温存療法の普及に尽力された近藤先生が何らかのご意見を発表されないかと思っていたところ、新刊本『がん治療の95%は間違い』にありました。 「北斗晶さんの乳房全摘は不可避だったか」の項で病状や手術、抗がん剤治療を検証した後、 (38ページ12〜14行目引用) <だから、芸能人ら乳がん経験者に心からお願いしたい。検診を推進するピンクリボン運動に肩入れしないでほしい。運動の背後では検診ワールドがほくそ笑んでおり、結果として乳房を全摘される患者と抗がん剤による死者を増やしているのですから。> この3行を読んだとき、Sさんのことで沈んでいた私は飛び上がって喜んでしまいました。近藤先生が有名人のがん治療の影響力を心配されていることがわかって安心しました。 目の前の医者からすすめられる治療に自分の頭で考えて対応できる患者になるためにご一読をおすすめします。 竹下勇子(2015年12月16日)
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