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近藤誠著『最高の死に方と最悪の死に方』(宝島社)のご紹介     2018年9月4日


 「平穏な死を迎えるために今からできること」とサブタイトルにあります。
 私は42歳で乳がん誤診被害に遭い、手術と抗がん剤の後遺症を長年背負って人生を過ごしているため、終末期に向けて私なりの不安をかかえています。まだ漠然とですが、いろいろ考えなくてはいけないなと思っていたところ、近藤先生が具体的に考えるきっかけを新著で示されているのでご紹介します。


 「はじめに」に、
<本書は、超長寿時代の「最高の死に方」を医療の面から探る、死に方ガイドです。
ただし、亡くなる直前の場面だけを語るものではありません。<いまは元気な人たちが、どう暮らしていったら最高の死に方ができるか>を考える本です。>とあります。(3頁)

 本文は近藤先生が慶應大学病院と近藤誠セカンドオピニオン外来で長年ご経験されてきた具体例や、文献・論文等出典を示してとても丁寧に書かれているのが印象的です。


 例えば、「誤嚥性肺炎の真実」の項(81頁)では、
<日本人の死亡原因として「肺炎」で亡くなる人が年々増える一方で、「肺炎になりやすい」とされる高齢者を不安がらせています。
 しかし、この「肺炎」がまぎらわしい。みなさんがイメージする、風邪をこじらせたあとの肺炎などとは別ものだからです。
 いまの肺炎死亡の大部分は「誤嚥性肺炎」です。——食べたものが食道ではなく気管のほうに入ってしまう「誤嚥」が生じ、肺に入った食物に細菌がとりついて、肺炎になるのです。
 覚えておいて欲しいのは「人工的に栄養補給をしている高齢者に、誤嚥性肺炎が生じやすい」ということ。>(81~82頁)
 <つまり統計上、肺炎が増えているのは、ボケなどによって人工的に栄養補給される人が増えたことの裏返しです。>(82頁)


 近藤先生がご指摘の通り、私も今まで「肺炎」と聞くと風邪をこじらせたあとの肺炎を思い浮かべていました。そうではないことを知ることが対処法を考えるきっかけになります。

 がんについては、私が乳がんの誤診被害に遭っていることから、乳がんについてぜひ知っておいて欲しいことが分かりやすく書かれているので引用します。


 <意外かもしれませんが、がんが増大してもそれ自体で死ぬことはありません。がんから毒がでるわけではないからです。
 たとえば乳がんは、からだの表面近くにでき、乳房のそばに重要臓器がない(肺とは肋骨や筋肉で隔てられている)ので、乳がんがいくら大きくなっても死にません。ぼくは乳がんが10~30センチになった方がたを100人以上診てきましたが、みなさんピンピンしていました。
 では乳がんの場合、何が死をもたらすのかというと、肺や肝臓など、重要な臓器への転移です。その臓器の機能が落ちて、生命維持に必要な機能が確保できなくなり、命が奪われるのです。>(126~127頁)


 ここに引用した数行の知識があれば、私は誤診被害に遭うことはなかったと強く思います。
 当時は予備知識が全くない状態で初診翌日に生検でしこりをとられ、その翌日には「乳がん」と言われて、イコール死をイメージしパニック状態のまま死にたくないために手術を受け入れてしまったのです。その無知ゆえの判断でその後の人生が大きく変わってしまいました。

 「乳がんでは死なない」。重要なことです。肺や肝臓など重要な臓器への転移によって、その臓器の機能が落ちて命が奪われる。しかし、亡くなった時、死亡原因として「乳がん」となるため、有名人が若くして「乳がんで死亡」と報道されると、だから早期発見早期治療のために乳がん検診を―に結び付けられることをとても危惧しています。

 医療を受ける側が正しい知識をもつ努力をしない限り、いつの時代でも私のような被害は繰り返される危険性が常にあると思っています。

 つい、乳がんのことについて熱くなってしまいましたが、巻末にリビングウイルのサンプルもあり、考えさせられることが満載です。
 本文のほんの一部をご紹介しましたが、「終活本」の一冊としてご家族でお読みになることをお薦めします。



                                  竹下勇子(2018年9月4日)

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