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「乳がん誤診について」

 神奈川県にある病院で乳がんと言われて手術を受けたものの、手術後に良性腫瘍だったと言われて、7年経過した現在も精神的に立ち直れず苦しんでいる人がいます。

 同じように苦しんでいる人がほかにもいるのではないかと思い、グーグルサイトで「乳がん、誤診」で検索してみました。

 検索した結果、誤診にはがんを見落されたケースと、良性を悪性として手術されたケースが出てきました。

 冒頭に書いた被害者と同様の、良性を悪性として手術されたケース(誤切除)について調べたところ、全国各地の病院で14件(内1件は私の手元にある朝日新聞記事)も出てきました。そのうちの1件は検体の取り違えのケースでした。
 それぞれ病院側が誤切除を認めていても、解決結果の違いに驚きます。

 冒頭の神奈川県のKさんも、私も、上記14件に含まれていないし、病院側が誤切除を正直に伝えなければ患者側は知ることはないので、他にどれほどあるかと思います。

 がんを見落された場合はがんが進行して誤診に気づき、患者の声から乳がん検診を促進する動きにつながっているようですが、ピンクリボンキャンペーンなどで検診が広まることによって、何人の人たちが私たちのような誤切除にあうのでしょうか。

 乳がん手術は一般的に女性としての外見的なことが話題となりますが、手術によって心身ともに後遺症をもたらされます。

 手術方法や手技によって程度の差はあるでしょうが、外形の変化はもちろん、手術箇所に痛みを生じたり、全身のバランスをくずしたり、リンパ節隔清によって腕が重苦しく、リンパ浮腫を増長させないために荷物を持てなかったり、化膿しやすいため上肢に怪我をさせられなかったり注射をすることもできなかったり、肩関節が術前のように動かすことができなくなったりなど、生涯にわたって後遺症のケアと苦しみが続きます。

 手術から17年たつ今の私は、背中の凝りやゆがみから坐骨神経の痛みにまで影響が出てきているし、抗がん剤がきっかけで発症した直腸炎は、毎年季節の変わり目に出現し、今年になって直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されました。
 後遺症は、今後、加齢によりもっとひどくなることは目に見えています。

 がん宣告を受けることは精神的に大きな衝撃ですが、それを乗り越えて医師の診断を信じて手術を受けた後に、がんではなかったと言われたら…。手術の前提がなくなってしまいます。しかし、元に戻すことができない手術痕と後遺症は残っているので、精神的に身体の状態を受け止めることがひじょうに困難になります。

 誤切除された被害者の声が伝わってこないのは、冒頭の神奈川県のKさんが7年経っても閉じこもりから抜け出ることができないように、やり場のない憤りや後遺症の苦しさ等に沈みきって声を上げるどころではないからだと思います。

 乳がん検診を勧める運動をする際は、誤診(がんの見落しだけでなく、良性を悪性と見誤られることもある)があることをくれぐれも念頭に置いていただきたいと心から願います。

                                   2009年5月19日 竹下勇子



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