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「富士見産婦人科病院被害者同盟から、前回期日(判決)の報告がきました」

 富士見産婦人科病院元院長北野千賀子が医師再免許を求め提訴した裁判の判決(平成25年6月27日)の報告が送られてきましたので、以下引用掲載します。

********

医師再免許の交付を求めた裁判で

  北野千賀子敗訴

       そして控訴

 富士見産婦人科病院の元院長北野千賀子が、医師の再免許を求めて起こした行政訴訟は、提訴から2年3か月たった去る6月27日、東京地裁で判決が言い渡されました。

 【事件番号・事件名】 
 平成23年(行ウ)第167号
  医師再免許交付処分の義務づけ請求事件

【主文】

@   本件訴えのうち、平成22年4月8日付けでした医師免許の交付申請について医師再免許の交付の義務付けを求める部分を却下する。

A   原告のその余の請求を棄却する。

B   訴訟費用は原告の負担とする。

  @にある「却下」とは、訴えの内容を実質的に判断するための前提条件が欠けているため、訴えそのものが成り立たないという場合に出される判決で、「門前払い」判決とも言われています。

「却下」は北野千賀子の完敗を意味しますが、7月9日、それでも千賀子は控訴しました。今後は東京高等裁判所に舞台を移して裁判は続くことになります。 

 判決までの経過

 元院長北野千賀子は、2005年に医師免許取消の行政処分を受けました。必要のない手術をした、というのがその理由でした。しかしそれから5年が経つと、千賀子は再免許を求めて申請をしました。医師法7条3項に医師免許取消から5年が経てば再交付を申請できるとあるからです。しかし厚労省は千賀子に対して医師免許を与えませんでした。 

経 過 年 表

2004.7.13  被害者同盟原告団が千賀子らを訴えた民事裁判の勝訴判決が確定2005.3.2   北野千賀子が医師免許取消処分を受ける
2005.3.11  北野千賀子が処分の取消しを求めて行政訴訟
2008.6.17  東京地裁が千賀子の訴えを棄却
       (同12.18控訴棄却、2009.5.28上告棄却)
2010.4.8   北野千賀子が医師再免許を求めて申請
2010.9.22  厚労省が再免許を与えない旨の決定
2011.3.16  北野千賀子が、再免許を与えないのは不当だとして国を相手に
      訴訟を提起

2011.5.17  第1回口頭弁論
       〜
2013.4.16  第11回口頭弁論
2013.6.27  判決
2013.7.9   千賀子が控訴  


「処分の義務づけ」とは

厚労省の決定を不服として千賀子が起こした裁判の名前は「医師再免許交付処分の義務づけ請求事件」となっています。

「処分」と聞くと私たちは、罰として「………を禁止」とか「………を取り消す」といったイメージを持ちます。しかし千賀子がこの裁判で求めた「処分」は医師の再免許の交付をするという「処分」です。「処分」を「行政の決定」と置き換えるとわかりやすいかもしれません。

次に「義務づけ」という言葉ですが、これは行政事件訴訟法という法律の中にあります。行政に処分を求める裁判を「義務づけの訴え」と呼ぶのです。

千賀子はこの裁判で、医師再免許の交付という処分を行政に義務づけよ(義務としてさせよ)といっているわけなのです。 

蒸し返しに終始した主張

 裁判で千賀子は、「手術は必要なものだった」と言い張り、カルテや鑑定書の内容、医学論まで引っ張り出してきました。千賀子は、「そもそも最初の免許取消処分が間違っていた」と言いたいのです。

しかし、この裁判に先立って、重要な二つの判決がすでに出ています。一つは、私たちが起こした民事裁判です。この裁判では、手術が不当なものであったことが数々の証拠から立証されており、判決は「およそ医療とは言えない」「犯罪的医療」と千賀子らの行った行為を厳しく断罪しました。

もう一つは、2005年に千賀子が医師免許取消処分を受けた直後に、「免許取消処分の取り消し」を求めて厚労省を相手に起こした裁判です。判決は、「厚労省の免許取消処分は正しかった」と認定し、千賀子が敗訴しています。

これら二つの裁判は最高裁まで争われ、それぞれ千賀子の敗訴が確定していますが、千賀子はこれらの判決を真っ向から否定した主張を繰り広げました。 

再免許交付の判断基準は?

 今回の判決では、再免許を交付するかどうかを判断するに当たっては千賀子が行なった医療行為の「種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響」を考慮するだけでなく、千賀子の「性格、処分歴、反省の程度等、医師免許の取消処分に当たって考慮した諸般の事情を前提としながら、当該取消処分後における事情をも併せ考慮して、医師としての適格性を有するに至っているといえるかどうかを、医師法7条3項の趣旨に照らして判断すべきである」と言っています。

そのうえで、北野千賀子のケースについてそれぞれ検討した結果を示しています。以下はその要約です。

 ○取消処分の根拠となった4名の患者らは、いずれも手術適応にある病態にあったということはできないから、手術はいずれも必要性のない手術であった。

○本件各手術については、単に個々の事例について生じた偶発的な医療事故であると評価することは到底できない。

○傷害罪不起訴処分になったことにより、本件各手術の違法性はいささかも減じられるものではない。

○別件民事判決や別件行政訴訟判決がいずれも確定しているのに、それらの裁判と同様の争点を蒸し返し、医師免許取消処分の有効性・相当性を争っていることに鑑みれば、取消処分を真摯に受け止めているとは言えない。反省の有無・程度という観点からは、原告(千賀子)に有利にしんしゃくすべき事情は全くないと言わざるをえない。

○原告(千賀子)は、医師としての技能、知識等に欠けるところはないとも主張しているが、そもそも取消処分は、特定の技能、知識等が不足していることを理由としてされたものではない。

○手術の適応がない本件患者らに対して手術を実施したこと自体、医師としての資質ないし識見を疑わせる重大な事情であるし、原告が一貫して本件手術に必要性があった旨の主張を繰り返し、全く反省していないことに鑑みれば、医師としての適格性に重大な疑問を抱くのは至極当然である。

○被害者への損害賠償については、破産手続きでその1・5%の配当が実施されたほかは、特段の支払をしていない。

○患者は、謝罪の言葉もなく損害賠償責任を果たすこともしていない千賀子に対して、医師再免許を交付することに強く反発している。

(原告の)年齢や経済力により今後、臓器摘出等の手術に関与することはなく、不適正な医療行為を行なう可能性はないというが、再免許を交付した場合、医師として行い得る医療行為に特段の制約が及ぶわけではない。

このような検討結果を踏まえたうえで、判決は次のように結論づけています。「(厚労省の)再免許を交付しないとの判断が、重要な事実の基礎を欠くとか、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとかいうことはできず、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認めることはできない」 

千賀子の完敗

 行政事件訴訟法37条の3第1項2号では、行政のおこなった処分が「取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在である」ときに限り、「義務づけ請求の訴訟を提起することができる」と定められています。

今回の裁判でいうと、医師再免許を与えなかった厚労省の決定は、裁量権を逸脱していない正しいものだったと認定されました。つまりこの処分は「取り消されるべきもの」ではないと認定されたのです。このことを言っているのが主文のAの「棄却」です。

主文のAで行政の行なった処分が「取り消されるべきもの」ではないと認定された以上、その結果として、「義務づけ請求の訴訟を提起する」ための法的根拠は失われ、裁判を提起したこと自体が不適当だったという結論になります。

それで、主文の@にあるように、処分の義務づけについては「却下」となったのです。 

再免許を与えてはならない

  口頭弁論は合計11回開かれましたが、私たちは第2回口頭弁論からずっと傍聴してきました。被害者同盟だけでなく、いつも20人ほどの人が傍聴に訪れています。だれもが、「千賀子に医師の資格はない。5年が経ったからといって再び医師免許を与えるようなことがあってはならない」との思いを強く持っての傍聴です。

 北野千賀子と厚労省が争うこの裁判では、私たち被害者は原告でも被告でもありません。しかし、私たちは事件の「当事者」としてこの裁判を見守ってきました。今回の判決では、富士見産婦人科病院事件は「30年以上経っても、社会的影響を軽視することはできない」と、裁判所が明言しています。控訴審ではこれまで以上に内容に注視し、行動していきたいと思います。

これまで傍聴に足を運んで下さった皆さまありがとうございました。引き続き控訴審での傍聴もお願い致します。

 

控訴審期日決定

10月22日(火)10時30分から

東京高等裁判所 717号法廷

  東京メトロ丸の内、日比谷、千代田 各線霞が関下車徒歩3分


ニュースでは

読売新聞(YOMIURI ONLINE)6月27日(木)21時8分配信

富士見産婦人科の元院長が敗訴
            …免許再取得訴訟

 不要な手術で患者の子宮などを摘出したとして、2005年に医師免許を取り消された「富士見産婦人科病院」(埼玉県所沢市、廃院)の北野千賀子元院長(87)が、免許再取得を認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁(川神裕裁判長)は27日、元院長の訴えを全面的に退ける判決を言い渡した。

元院長側は「問題とされた手術は正当だった」と主張したが、判決は「違法性が極めて大きな手術だった」として、免許再取得を認めなかった処分を適法とした。

 *********(以上、引用終わり)


                               2013年8月19日 竹下勇子



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