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雑記帳
潰瘍性大腸炎再燃――腸内フローラ再移植 2017年10月12日
25年前、乳がん手術後に服用を強要された抗がん剤。副作用がきつく、自主的に服用をやめたため服用期間はごくわずかでしたが直腸炎を発症してしまいました。 毎年のように炎症を繰り返しているうちに潰瘍性大腸炎となり、加齢とともに重症化して2015年には大腸を全摘出するしかないと言われました。 手術を回避するために漢方にも助けられましたが私には合わず、2016年夏、最後の砦として腸内フローラ移植(以後、「移植」)を「まことクリニック」(大阪市)で受け、寛解(症状が消えた)。移植体験記を雑記帳に記しました。 ところが2017年春、潰瘍性大腸炎の症状がまた出現してしまいました(再燃)。前年に移植を受けて寛解後、安心しきって過ごしていたので、症状が出てきた時には「まさか…」と、再燃を認めたくない思いと、「なぜ?」という戸惑いや不安で現実を受け止められない心境でした。 症状が出たのが土曜日で、時間を追ってひどくなる(炎症によって便を作れなくなるので、頻回のトイレ等)ため、「まことクリニック」の清水副院長にメールで伝え、月曜日を待ちに待ちました。私にとって、症状を止める手段は移植しかないからです。 月曜日の朝、清水副院長がすぐに対応して下さいました。移植菌液の調整に通常8時間かかるそうですが、午後には移植を受けることができました。 清水副院長から「大きなストレス」を受けたかと問われ、その時は即座に思い出せませんでしたが、確かに心身ともに影響を受けた大きなストレスに思い当たりました。そのことによって腸内細菌のバランスが崩れて再燃したと思われます。 過去に、乳がんではないのに乳がん手術を受け、抗がん剤で痛めつけられた私の身体は、身を守るために我が身に起きたことに敏感に反応するようになっているようです。 そのことが、今回の再燃や長引いた再移植の過程に大きく影響したように思います。 昨年、初めて移植を受けた時には1回で潰瘍性大腸炎の症状は消え、念のために続けて2回移植を受けて寛解を維持することができました。 今回も緊急移植を受けてすぐに固形便が混じるようになりましたが、症状はなかなか消失せず、寛解まで約7ヵ月、20数回の移植を受けました。 便の状態を日々記し、清水副院長にメールで伝えて、症状改善目的に調整した菌液の移植を受けることを繰り返しました。 特定の時間にお腹が苦しくなることを伝えると、次の移植では見事に改善でき、的を絞った菌液のブレンド技術に驚かされることが多々ありました。 ところが、しばらく移植を繰り返しているうちに、症状が悪化・逆戻りしたと思うことがありました。清水副院長から「必ず(症状を)止める」と自信をもって断言されていたので、症状が悪化しても不安は一切ありませんでしたが、なぜだろうと理由を知りたいと思いました。 移植を受けているのに、なぜ悪化するのか…。身体の声に耳を澄ましてよく考えてみると、移植で入ってきた腸内細菌たちを私の腸内細菌たちが拒絶しているように思えてきました。過去のできごとで敏感になっている私の身体が「よそ者」に対して敏感に反応しているように感じたのです。 そこで、私の感じたことを清水副院長に伝えたところ、菌液の濃度を下げて(薄く)移植することを試みて下さいました。すると、移植された菌たちを私の腸内細菌たちが「身内」と判断して歓迎してくれたようで、症状は見事に消えていきました。 移植菌液は、濃度を高く(濃く)すれば効果が出るという単純なものではないことがわかりました。 今は症状消失から1か月以上が経過し、落ち着いた状態が続いているので、すでに寛解状態に入ったと思っています。 それにしても、症状がひどい時と治まっている時とを経験すると、同一の腸とは到底思えず、別物と入れ替わった感覚で、腸とは何と不思議なものかとつくづく思います。腸内細菌の働きにほんとうに驚かされます。 炎症が起きている間は突然の便意に我慢できず、トイレに駆け込むなり破裂ガスとともに花火のように飛び散る粘液状で血が混じった便だったのが、移植によって腸内細菌のバランスが整い腸管壁が修復された今では、りっぱなバナナ状便が出てきます。ほんとうに同じ腸から出てきたの?と尋ねたくなるくらいの差です。 腸内細菌や移植のことを知らずに外科医の言うままに腸を全摘出していたら、炎症が起きる場所もろとも腸内細菌のすみかも奪われてしまうことになり、元には戻れず、その後の人生が大きく変わってしまうところでした。 今回、再燃から寛解まで長くかかりましたが、移植を受けるたびに生き物と生き物の出会いの面白さ(私の腸内細菌が移植された腸内細菌を拒絶したり歓迎したり)を実感でき、貴重な体験をしながら過ごすことができました。まるで実験観察をしている気分でした。 寛解するまで病気や移植に対する不安がいっさいなく余裕ある気持ちで過ごせたのは、清水副院長の腸内細菌移植に対する絶対の自信に励まされ続けたこと、患者の声に耳を傾けて下さるため、私の身体が発する声を素直に伝えることができ、状況に応じて菌液のブレンドを工夫して下さる技術を体感できたこと、それと、何よりもいつでも移植を受けられるという安心感が大きく、精神的にとても楽でした。 移植に出会う前は、治療薬物が私の身体に合わず、治療法がない不安から毎日が命と向き合う日々で精神的な負担は計り知れないものでした。 やっと寛解導入できた今回の経験を生かし、これからは腸内細菌たちとうまくつきあって、つまり私の腸内細菌たちをびっくりさせない程度に随時移植を取り入れて、普通の生活が終生できればと願っています。 症状が出てしまうと私がつらいだけでなく、まわりの人たちにも迷惑をかけてしまうので老後が心配ですが、将来的には自宅で手軽に移植できる浣腸式の移植キットができるのではと期待しています。 トイレを気にしないで外出できる「普通の生活」を私に実現して下さった「まことクリニック」のみなさまに心からの感謝を申し上げます。 <追記> 今年になって身近な友人が乳がん手術を受けました。術後、彼女は「副作用が出たら、その時にやめる」と、抗がん剤を服用し始めました。 私が抗がん剤の後遺症である潰瘍性大腸炎で長年苦しみ、症状が出るたびに抗がん剤を飲んだことを悔いていることを知っているにも関わらず…です。 人それぞれ考え方も身体の状態も違うので、私の移植体験記は「私の場合」であって、ひとつのケースとして読んでいただければ幸いです。 竹下勇子(2017年10月12日)
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