2004/10/16

Worms
 
 
 
試合の翌朝早く、私はスーツケースを持ってホテルを出て、ツォー駅へ向かいました。引き続きベルリンに留まるさとさんと別れて、ここからは一人旅です。
親切にツォー駅まで送ってくれたさとさん。色々教えてもらったので、お礼に「kicker」をあげて、「またね〜!」とホームに来たICEに。これから5時間弱かけてマンハイムに行き、そこから地方鉄道に乗り換えて「ラインの古都」ヴォルムスまで行くのです。
実は、旧西ドイツ地域を旅するのは初めて。ワクワクしながら車窓を眺めました。
 


さて、今回私が「ヴォルムスに行こう」と思った理由は幾つかあります。
まずはバッハファンとして「ルターが異端とされた宗教会議のあった町を見たい」ということ。前回の旅行で、アイゼナッハ・ヴァルトブルク城の「ルターが聖書を翻訳した部屋」や、その他ルターの説教した教会などをたくさん訪れていた私。その元となった「ヴォルムス公会議」のあった場所。この公会議で、ルターは神聖ローマ皇帝からも「異端」の烙印を押され、一切の法的保護を受けられなくなってしまいました。ルターにとっては「もう後戻りはできない、自分の取った道を進むしかない」と覚悟を決めた場所だったでしょう。
そして、ここはまた「ラインの古都」といわれるとおり、ドイツでも最も古くから文化の栄えた街でもあります。東方から移動してきたゲルマン民族が現在のドイツに「ブルグント国」を作り、その都に定めたのがこのヴォルムス。後にブルグント国を舞台にして作られた有名な叙事詩「ニーベルンゲンの歌」は、前半はこのヴォルムスが舞台です。英雄ジークフリートが活躍し、非業の最期を遂げたのもこのあたり。中学の頃からこの話が大好きだった私には憧れの場所です。
そして・・・ヴォルムスは、あのティモ君の生まれ故郷。ティモ君、素敵な街が故郷なのね!
 
というわけで、聖なる憧れから何から(何だよ)いろいろ期待でいっぱいの私がヴォルムスに着いたのは午後2時過ぎ。
またしてもホームの階段をスーツケースを抱えて昇り降りした私。(ううう、ここも田舎だった)ホテルまで歩こうかと思いましたが、どうも石畳の道はスーツケースがうまく転がらず・・・時間が惜しいので、タクシーを拾いました。「ホテル・クリームヒルデにお願い」。
そう、今夜のお宿は「ニーベルンゲンの歌」のヒロインの名前と同じなのです。さすがヴォルムス!


ルター・デンクマール
「ニーベルンゲンの歌」のクリームヒルデは、前半は「可愛くて可憐でちょっぴりおしゃべりの素直な姫君」、後半は「復讐に燃える氷の心の王妃」。さあ、このホテルの女将さんは?と思ったら、「たくましいオトコマエの結構美人なおばさん」でした。まあ、ドイツの女性に多いタイプ。(笑)
カギを受け取り、ホテル客用の出入り口を教わって(一階はレストランなのです)、荷物を部屋に置いて外へ。ガイドブックを見ながら、まずは「マルティン・ルター記念像」を見に公園へ。
ベゴニアの咲き誇る公園の中、19世紀半ばに作られた記念像がありました。ルターだけではなく、周りにはこの記念像を作るのに協力した領主達の像、都市の紋章の入ったレリーフ。真ん中の大きなルター像を取り囲んで座っているのは、ルター以前に教会に対して改革運動を試みた「ヤン・フス」「サヴォナローラ」「ピエール・ヴァルドー」「ジョン・ウィクリフ」の4人。この4人があってこそ、ルターの宗教改革があった・・・ということを表しているんでしょうね。
じっくり見ながら、「破門されるってどんな気持ちだったんだろうな」と考える私。怖かっただろうか?当時は「教会から破門される」ということは、世の中全てを敵に回すのと同じことだったんだもの。神聖ローマ皇帝からも突き放され、ルターはこの街で相当な覚悟を決めたはずです。「もう引き返せない、最後までやるしかない!」と。心のよりどころは聖書、そして神様だけ。
ベンチに座って、彼の作ったコラール「我らが神は固き砦」をそっと歌ってみました。この街に一番ふさわしいコラールだと思ったので・・・。
 
公園を後にして私が向かったのは、街のデパート。本屋さんで「ニーベルンゲンの歌」の原書を探そうと思って♪
この物語は「叙事詩」なので、多分本来のドイツ語版では美しい韻を踏んだ言い回しが多用されているはず。それが読みたくて原書が欲しいと思ったのです。意味は・・・まあ・・・日本語訳本見ればいいし。(コラ)
しかし、見つかりません。日本で言えば「源氏物語の元のまま」を探すようなものだし、やっぱ無理かな・・・くすん。
しかし!私はデパートで「別のウハウハなもの」を見つけてしまいました。地下のキッチン用品売り場で、日本では売っていない「さくらんぼの種抜き器」を発見!うわーさすがドイツ!これ、前から欲しかったのよね。これでフレッシュのさくらんぼを使ったお菓子が作りやすくなります。「ヴォルムスでお菓子作りの道具」これって重要よね♪(笑)
さらにお菓子売り場をのぞいたら、金髪の3〜4歳くらいの小さな男の子と、その5歳くらい年上のお兄ちゃん、そして兄弟のお母さんが。チョコの売り場で「これほしい〜」とねだるおチビちゃん、何やら優しく諭すお兄ちゃん・・・うっ、この光景はっ!そのうちお母さんとお兄ちゃんが見えなくなったのに気付いた坊や、キョロキョロしながら「おかあさん、どこ〜?」(うっ可愛い)。すると別の棚の前にいたお兄ちゃんとお母さん、その坊やの名前を・・・「ティモー!こっちおいで」
・・・いつの間にタイムマシンに乗っちゃったんだ、私は!うははは♪(怪しいヤツ)
ヴォルムス大聖堂
そのデパートでは他に、一階の文房具売り場できれいなグリーティングカードと可愛いくまちゃんのキーホルダーを買いました。そしていよいよこの街のシンボル「ヴォルムス大聖堂」(正式名は「聖ペーターズ・ドーム」)へ。うわー、大きい!
このドームは俗に「三大カイザードーム」と呼ばれるもののひとつ。あとの2つは、マインツとシュパイヤーに。神聖ローマ帝国皇帝のお膝元のドームです。ドイツには珍しい「ロマネスク様式」で、西側には美しい丸いステンドグラス「バラ窓」があります。東側の祭壇にある「黄金の祭壇」は修復中でしたが、とても美しいもの。
中に入るのに入場料はいりませんが、「文化財保護のためにご協力を」とのことで、小銭を寄付。中は人はまばらで、ゆっくり見学することができました。
中の装飾は割と質素。落ち着いた感じです。本当に「祈りの空間」という感じ。その中でやはりバラ窓が目を引きます。確かこの大聖堂、「ニーベルンゲンの歌」にも出てきて、ここに礼拝する順番を巡ってブリュンヒルデとクリームヒルデがケンカになって、クリームヒルデが夫(ジークフリート)と王様の秘密をしゃべっちゃったんだっけ。こんなところでケンカするなよな・・・(でもそれが女ってもの?)
バラ窓の下には聖歌隊席が。そういえばさっき、聖歌隊がちょっとだけ練習してたっけ。人が少なかったので、私もちょっとだけ歌ってみました。バードの「アニュス・ディ」。誰もこっちを見ない。アレ?似合いすぎました?教会内だと、どこから歌ってるのか特定できないんですよね。音が上から降ってくるから。
南側の出口近くには、キャンドルをお供えするコーナーが。50ユーロセントでキャンドルを買い、大きなろうそくから火をもらってお供えしました。お祈りを捧げて。
そのそばには「あなたの願い事を書いて」という大きなノートが置いてありました。ドイツ語で書かれた色々な人たちの願い事。私はペンを出し、日本語で書きました。「この街で生まれた美しい心の人に大きな幸せがありますように。そして私の家族にも幸せを」。そして日本語とローマ字で名前を書きました。
まあ、私ってば〜♪しかもそっちが先か。(笑)
出口の横にある売店では、本とCDが売られていました。ここでも記念に1枚CDを。この大聖堂のオルガンで演奏されたCDです。弾いているのはここのオルガニスト、ダン・ツァーファスさん。まだ若いのですが、13歳から演奏会キャリアがあるという名オルガニスト。写真も載っていましたが、ティモ君に横顔が似ている素敵な方。さすがヴォルムス!ええ、演奏も素晴らしいですよ、もちろん♪
 
ドームから出た私、今度はドーム前の小さなお土産物屋さんに入りました。入るといってもホントに小さくて、屋台みたいなお店だったんだけど。ポストカードに始まって絵皿やコップ、シンブル、ブローチやピンズ・・・おしゃれな小物がいっぱい。モチーフはドームだったり、紋章だったり。その中で目に留まったのが、中世の騎士の小さなブローチ。槍を掲げたプレートメイルの騎士に、「Worms-Rhein」の文字の入った旗を組み合わせたデザイン。「あ、これいいかも」と思い、中のおじいさんに「すみません、このブローチ下さい」と言ったら、在庫がなかったらしくて展示してあったのをそのままはずしてくれました。
で、ちょっと茶目っ気を出した私、おじいさんに「これ、ジークフリート?」と言ってみました。一瞬きょとんとしたおじいさん、すぐに「そう、ジークフリート!知ってるの?」と。「知ってるよ。素敵ね!」と言ったら、おじいさん大喜び。東洋人が地元の英雄を知ってるとは思わなかった?私も通じて嬉しかったです。
ティモ君はこの街の出身なので、ドイツの某メディアでは「若きジークフリート」と書かれていました。ワーグナーの「ニーベルングの指環」で、ブリュンヒルデがジークリンデのお腹にいる子供に思いを込めて「この子の名前はジークフリートに」って名付けるシーンは感動的だっけ。
ティモ君とはキャラが大違いですが。(笑)
 
その辺を散歩したあと、さすがに寒くなってきたのでホテルに戻りました。
少し部屋で休んでから、一階のレストランへ。ここはレストランメインのホテルだから、食事も楽しみ。そしてここヴォルムスはあの有名なドイツワイン「リープフラウミルヒ(マドンナ)」の産地でもあります。それを地元で味わうのももちろん楽しみ!レストランが契約しているワイナリーの新酒があるということで、それとチキンソテーをオーダー。素焼きのゴブレットに入れて出された「リープフラウミルヒ」はなんと・・・ろ過前の「濁り酒」状態。うわー。こんなの初めて飲むよ!
一口飲んでみると・・・「え?これ、ワイン?ブドウの絞り汁じゃないの?」というほどフルーティー。ブドウそのままの味です。でもやっぱりワイン。アルコールという感じがほとんどしないのに、ふんわり包み込まれるような心地良い感じで酔いが回ってきます。これ、美味しすぎ。ちょっと・・・マズイかも。美味しすぎて。
運ばれてきたチキンソテーもとっても柔らかくて美味♪料理も美味しいし、ワインも美味しいし、天国〜!ホテルフント(やっぱここにもいた)のヨークシャーテリアちゃんが下から見上げています。珍しい?
気分よくソテーを平らげると、美人のウェイトレスさんが「ワイン美味しいでしょ、もう一杯どう?」と。「ヤー」と答えてから「あ・・・250mlとか書いてあったっけ。2杯は多いかも?」と気がつきました。いくら美味しいからって・・・。でも、やっぱり飲む!もう、美味しすぎです、このワイン。
さすがに出来上がった私でしたが、とりあえず表向きは平静を装いしっかりチップ込みの代金を支払い、上のホテルの部屋へ。あんなお酒があるのならもう一晩ここに泊まっても良かったな〜なんて思いつつ、ベルリンのさとさんに電話。(よくちゃんとフロントに取り次ぎが頼めたもんだわ)今日の「萌え萌え〜♪」話でまた盛り上がったのでした。
ごめんねさとさん、酔っ払ってたんです私・・・(オイ)
 
この日のヴォルムス巡りはここでおしまい。
次の日は「ニーベルンゲン鉄道」でちょっとお出かけして、またヴォルムスに戻ってきました。
先に次のページを読んでから、こっちの残りを読んでくださいね。
 
次の日、ロルシュから戻ってきた私。駅前から続く歩行者天国の通りに「シュメルカー」というカフェがあるので、そこに入ってケーキとコーヒーをオーダーしました。ここは先にショーケースでケーキを品定めしてからオーダーし、席についてから飲み物をオーダーするやり方。他もこの方式の所が多かったです。(大きなカフェでは違う所もあったけど)私が頼んだのは「黒い森のさくらんぼケーキ」ドイツだし、ヴォルムスだし(笑)まずはこれでしょ。ここのは、生クリームとココアクリームを両方使ったアレンジ版。さくらんぼがたっぷり入っててとてもおいしかったです。一切れが大きいので結構おなかいっぱいに。このカフェで残りの絵ハガキを書きました。
カフェを出て、まだ電車の時間まで結構あるので、またルター像のある公園へ。ルター像の場所から道を挟んだ向こうにも、細長い公園が続いています。昔の堀のあった場所を埋め立てて作った公園なんだそうです。周りから少し低くなっていて真ん中には散歩道が作られ、その両側には色とりどりの花を植えたボーダー花壇が。きれい!散歩道の始まるあたりには、イングリッシュローズが2種類植えてありました。黄色の「グラハム・トーマス」と、ソフトピンクの「ヘリテイジ」。ヴォルムスで「ヘリテイジ」!何てツボなの!?誰が選んだのか知らないけど、グッジョブ−−ー!!(しっかり写真を撮る私)この薔薇の茂みの上には、何と「寿司屋さん」が。ガラス張りのお店に、大きく漢字で「寿司」の文字。どんな人がここに食べに来るんだろう。日本人は見かけなかったですが・・・。(もしかしてドイツは寿司ブーム?)
この公園の周りには栗みたいな実のなる木がたくさん植えてあり、ちょうど実りの季節で、芝生や歩道の上にはたくさんの実が落ちていました。拾っていく人もちらほら。そんな中、10〜12歳くらいの男の子が2人、布袋に一生懸命実を拾って詰め込んでいます。私も幾つか拾っていたので、片方の子に「集めてるの?これあげるよ」と袋に入れてあげると、ニコッと「ありがと〜!」。「これ、何?」ときいたら「エーゼル」。あ、へーゼルナッツね。「食べるの?」ときいたら、「ううん」。何に使うんだろう。投げて遊ぶのか?
しばらく拾うのを手伝った後、駅へ。ロッカーから荷物を出してリュックの中の住所録を出し、カードに住所を書いて駅にあったポストへ。ドイツのポストは黄色です♪
そして、時間通りにやってきた電車に乗り、またマンハイムへ向かいます。いよいよシュトゥットガルトに向かうのです。
 

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