身体の反射とは?
近頃マッサージなどの療法で「反射」という言葉をよく耳にするようになりました。わたしたちの身体は日常生活動の中で生理学的に反射運動(反射活動)が行われています。ここでは名称のついている代表的な反射を紹介します。
身体の反射運動定義 「特定の刺激に対して高い確率で起こる反応」。
反射 < |
体性反射 <
↑ |
表在反射 |
深部反射 |
↓
内臓反射
(自律神経反射) |
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反射運動による反射活動は、以下に載せる5つの要素が不可欠となり、重要な要素となります。
@ 感覚受容器 (刺激の入力)
↓
A 求心性神経継続
↓
B 反射中枢 (脳または脊髄)
↓
C 遠心性神経継続
↓
D 効果器 (刺激の反応) |
主な反射の種類
■ 姿勢反射
重力と身体の位置関係からなる反応。体位・平衡・移動動作を含む。
乳児期における姿勢反射の推移は中枢神経系の発達状態や損傷状態を推測できるため
乳児診察、発育診断の臨床にに広く応用されています。
1.局在性静位反射 |
・伸張反射 |
筋を他動的に伸ばそうとすると力が入り収縮する反応。 |
・屈曲反射 |
筋を他動的に曲げようとすると力が入り抵抗する反応。 |
・陽性支持反射 |
起き上がると下肢に支える力が入る反応、足を浮かすと抜ける反応。 |
2.分節性静位反射 |
・交叉性伸張反射 |
歩行時の交叉反応。 |
・交叉性屈曲反射 |
歩行時の交叉反応。 |
3.全身性静位反射 |
・緊張性頚反射 |
正常乳児1〜4ヶ月にみられう首がすわらない状態。スポーツ選手の最大筋力時。 |
・緊張性迷路反射 |
正常乳児で仰向けで四肢の緊張が増加、うつ伏せで減少。正常で5〜6ヶ月で反応減少。 |
・立ち直り反射 |
元の姿勢に戻ろうとする反応。頭・頚・体の運動反射。視性反射等。 |
4.平衡運動反応 |
・踏み直り反応 |
立位で押された時に踏ん張って転ばないように直る反応。 |
・跳び直り反応 |
押された反対方向に跳び跳ねて姿勢を保つ反応。 |
・シーソー反応 |
片足立ちで浮かせた足を引っ張ると、転ばないように力を入れて踏ん張り姿勢を保つ反応。 |
・傾斜反応 |
体位や姿勢に関係なく傾いた地面でも重力に対して平衡を保とうとする反応。 |
・保護伸展 |
突然の危険状態で手足を伸ばして頭や体を防御する反応。 |
■ 腱反射
筋の付け根部分(腱)を叩くことによって起こる反応。ピックと関節が動く反応。
臨床的に脊髄とその上位中枢、神経、筋の働きを調べるのに応用されています。
機能低下、焼失では、末梢神経、脊髄後根、脊髄前角、神経伝達部及び筋の障害を意味する。
機能亢進、は、中枢神経(脳)錐体路障害を示唆する。
1.上肢の腱反射 |
・上腕二頭筋反射 |
C5 C6(筋皮神経) |
・上腕三頭筋反射 |
C7(橈骨神経) |
・腕橈骨筋反射 |
C6(橈骨神経) |
・円回内筋反射 |
C7 C8(正中神経) |
2.下肢の腱反射 |
・膝蓋腱(大腿四頭筋)反射 |
L2 L3 L4(大腿神経) |
・アキレス腱(下腿三頭筋)反射 |
L5 S1 S2 S3(坐骨神経の枝、脛骨神経)
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バケンスキー式打腱器 |
膝蓋腱反射 叩打テスト |
■ 内臓ー体性反射
内臓器に異常があるとき、その反応が関連する神経を介して特定の体表面に知覚過敏や圧痛として現れる反応。
痛みとして現れた症状を関連痛と呼びます。
臨床では、内臓ー体性反射の逆の作用(体性ー内臓反射)が応用されています。
主な解剖医学的反射部位 |
起立・血管運動 |
C1〜L2 全て脊髄神経 |
・心臓 |
右T2〜T3 左T2〜T7(左胸・左肩、肩甲間部等) |
・肺 |
横隔膜C3〜C5 胸部呼吸筋・気管支T1〜T5 (頚部・肩・胸背部全体) |
・胃 |
右T7〜T8 左T6〜T9(上腹部・肩甲骨下角部主に左側) |
・肝臓 |
T6〜T11(左肩・肩甲骨下角背部) 全身倦怠感 |
・胆嚢 |
T6〜T11(上腹部・肩甲骨下角背部) |
・膵臓 |
T6〜T11(左上腹部) 全身倦怠感 痛みとしてほとんど感じない。 |
・腎臓・尿路 |
腎盂T10〜L1 尿管T11〜L3 膀胱S2〜S4 膀胱出口L1〜L2(腰部・側腹部・下腹部・内股) |
・虫垂 |
右T11〜L1(右下腹部、ランツ点、マックバーネー点) |
・卵巣・子宮 |
T10〜T12(下腹部・上腰部・) |
・精巣・前立腺 |
T10〜T12 S2〜S3(内股・上腰部) |
■ 視覚の反射
・対光反射 |
目に光があたると瞳孔(光彩)が収縮する反応。光反射とも呼ばれる。 |
・近見反射 |
ピントを合わせる調節反射。 |
・輻輳反射(ふくそう) |
野球のボールが近づくと寄り目(輻輳)になり瞳孔が収縮する反応。
速い物体が近ずいてくるときにピントを合わせようとする反応。 |
・角膜反射 |
目にゴミが入ったときに瞬きして涙を流す反応。表在反射。 |
・毛様体脊髄反射 |
脳幹が障害されているときに、頚部などの痛み刺激で瞳孔が散瞳する反応。病的反射。 |
■ 心臓の反射
心臓反射 |
自動的に心臓を動かしている反応活動。 |
圧受容器反射 |
・アシュネル反射 |
眼球を圧迫すると瞬間的に血圧が下降する反応。 |
・頚動脈洞反射
(ツェルマーク・ヘーリング反射) |
総頚動脈と椎骨動脈の分岐部にある頚動脈洞を圧迫すると血圧が下降する反応。
柔道などの締め技に用いられる反射。 |
■ 呼吸の反射
・ヘーリング・ブロイエル反射 |
無意識で行われる呼吸運動。肺迷走神経(自律神経)反射。
自家調節反射とも呼ばれる。 |
■ 足の反射(病的反射)
・バビンスキー反射 |
足裏外側を棒で下から上に向かってこすると母指が背屈し指が扇状に開く反応。
脳障害を示唆する病的反射。乳児では生理的。 |
・オッペンハイム反射
(オッペンハイム現象) |
母指または示指で下腿内側を脛骨縁にそって上から下に向かってこすると
母指が背屈する反応。脳障害を示唆する病的反射。 |
・ホフマン反射
(ホフマン現象) |
中指の中節背面を叩くと母指が内向運動する反応。脳障害を示唆する病的反射。 |
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