温か?冷か?
痛みの症状を解決するには
温める(温熱療法)?それとも 冷やす(冷却療法)?
どっちがよいの?
(物理療法)
温熱療法とは?
冷えた身体を温める療法。マッサージと同じく人類と同じくらい歴史があり古くから行われてきています。
主に寒冷刺激による冷えた部分を直接的(物理的)に温めるほか、交感神経(自律神経)の亢進を抑制し、副交感神経を働かせることにより、筋緊張の緩和・血管の拡張を促し、本来の新陳代謝を取り戻すのが目的です。
主に慢性症状の痛みの緩和に多く用いられています。自律神経?
医療器具
・ホットパック(湿性・乾性)
・ホットマグナー(温熱+磁気+振動刺激)
・光線療法(赤外線・遠赤外線・カーボン灯・レーザー)
・マイクロ波(電子レンジと同じ電波)
・超音波(マッサージ+熱)
・水治療法(お湯や温泉などで温める)
・パラフィン浴(融解したろうで温める)
・泥浴(温めた泥水につける)
他にも低周波+温熱の作用をもつ器具など様々なものが開発されています。しかしながらレーザー以外は医学応用に限界がきています。弱いレーザー光線は温熱効果があります。強いレーザー光線は温熱効果ではなく火傷を起こさせ、切除・接着などに応用されています。例:眼科では不可欠。
家庭器具
・使い捨てカイロ
・あんか(湯たんぽ・電気・豆炭)
・電気毛布(敷き・掛け)
・コタツ(赤外線・遠赤外線・炭)
・ストーブ(赤外線・遠赤外線・セラミック熱・ガス熱・灯油熱・炭・蒔)
・エアコン
・ドライヤー
探せばまだありそうですが、要するに温める道具で使い易ければ何でもOKです。過熱ぎて火傷・低温やけどに注意。
冷却療法とは?
熱をもった部分または全身症状を冷やす療法。
歴史は温熱療法に比べて非常に浅く、基本的に冷蔵庫が開発されてから(1950年代以後)。これ以前は湿布(湿らせた布)以外に冷やす療法はほとんど行われていませんでした。
炎症(熱)を伴う症状に対して、物理的に冷やすことにより、、正常な状態により早く回復することを目的としています
主に打撲・捻挫・筋肉痛(生理的炎症)などの急性症状に使われます。また、○○炎とつく慢性症状に対しても有効です。
冷却療法の別名に、アイス、アイシング、クーリング、クライオセラピーなどの呼び名が存在しています。
医療器具
・クライオ5(商品名)
(冷凍庫のような機器に掃除機のホースのようなものが付着し−20℃の冷気を噴射する装置)
・アイシングシステム(商品名)
(機器とアイスパックが接続され、電気で5℃〜13℃位冷却調節ができる装置)
・クライオパック(医療専用に開発された冷却パック、冷凍庫で5時間以上の冷却が必要)。
家庭器具
・氷枕
・アイスパック
・氷嚢(ひようのう)
・熱さましシート
・冷えるカイロ(30分程度冷却可能)
・コールドスプレー ・馬肉(昔薄切りにして湿布代わりに使用していたそうです)
冷やせるものなら何でもOKです。硬いものより柔らかいものが皮膚に密着しやすいです。また柔らかいものは落下させても安全性が高いのが特徴です。適宜にタオルなどを巻いて使用。
冷却療法は、運動器(整形外科)部門以外にも脳卒中後遺症の治療(脳低療法)や、外科手術(凍結切除法)など様々の療法に応用されてきている新しい療法です。温熱療法に比べて今後高い可能性を秘めた療法です。
クライオパック温度センサー付 |
家庭用冷却枕アイスパック |
ペットボトルなどでもOK |
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注意) 医療器具は医療従事者の指示の元にご使用ください。自身で使用される場合、取り扱い説明書をよく読まれてからご使用ください。家庭用器具において、人体への使用を目的とされていない製品においては自身の責任において使用されてください。
どちらを選ぶ?
ホ乳動物であるわたしたちの身体は、環境の変化や様々な刺激に対応して、体内の諸臓器組織が互いに連絡調節し合い、常に身体全体として最良の状態を保つ機構を備えています(ホメオスターシス=生体の恒常性)。
異常刺激や環境の変化に適応できなかった場合、身体が異常を感じ局所や全身に痛み・しびれとともに熱感・冷感などの症状を発生させて警告し身体の休養を促します(冷感の後に痛み・しびれが起きる場合もあり)。
ここでは、不調に陥った恒常性機能に物理的温熱冷却刺激を与え、痛みなどの症状から回復または緩和を目的としてまとめてみました。
痛み・触診による体表温度・本人の感覚を評価 |
痛み |
温感覚 |
冷感覚 |
処置 |
その他 |
○ |
○ |
× |
冷却 |
主に急性症状 |
○ |
× |
○ |
温熱 |
主に神経痛など |
○ |
× |
× |
冷却叉は温熱 |
主に慢性症状
どちらかよい方 |
× |
○ |
× |
冷却 |
環境温度に関係 |
× |
× |
○ |
温熱 |
環境温度に関係 |
× |
× |
× |
必要なし |
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・急性症状で熱感を伴うものは → 冷却(打撲・捻挫など)
・運動または労働作業後ぼ筋肉は →冷却(野球ピッチャーの肩など)
・疾病名で○○炎とつくものは → 冷却(肩関節周囲炎いわゆる五十肩・腱鞘炎など)
・慢性症状で温めても効果が得られないものは → 冷却+手技が効果的
(変形性膝関節症など)
1回の冷却時間は10分〜20分程度。炎症が強いときは繰り返して数回行う。
冷却により身体が寒く感じるときは、回りを毛布その他の温熱器具で温める。
膝関節の炎症(冷却)
いわゆるみずが溜まった状態 |
上下方向より包み込み
(症状により異なる)
ベルトで少し圧を加える
屈曲25°が楽な状態 |
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・身体が冷えたときの疲労感 → 温熱(背中の冷え・腰の冷え・足の冷えなど)
・臀部や大腿後側などのしびれ(神経痛) → 腰部の温熱(腰痛がない場合)
(腰痛がある場合腰部の冷却+下腿の温熱)
医療機関では温熱療法の時間が10分〜20分程度と短めですが、基本的には症状がおさまるまで温め続けるのが効果的です。
湿布(シップ)について?
湿布とは本来湿らせた布です。古くから行われている冷却療法の一種で、布に水・お酢・アルコールなどを湿らせ、熱を持った患部に当てることで、気化熱による冷却作用をねらった療法です。
現在では湿布=湿布剤・湿布薬を意味しています。これは布に消炎鎮痛剤などを含ませたもので、冷湿布・温湿布と二種類存在しています。しかしこれらは正確には直接的(物理的)に体温を変化させる作用はなく薬剤の効果のみとされています。冷感湿布薬・温感湿布薬と呼んだほうが正しい表現となります。ちなみに、効果はどちらも同じで使うひとの気分で選択されています。
注意)湿布薬の処方は医薬品のため医師・薬剤師によります。
炎症を温めていませんか?
炎症=発熱状態を温めることは、一時的に血管を拡張させ痛みがなくなり心地よい感覚となります。しかし炎症に対しては症状を悪化させたり、変わらない場合がほとんどです。実際温めることを止めるとすぐに痛み出したり、慢性の炎症(痛み)に陥ってしまうことが多くあります。プロでも間違えているのが現状です。
痛み=炎症=熱⇔冷却が回復への近道です(余分な熱を取り除く)。
冷え→痛み(しびれ)⇔温熱が回復への近道となります。
温泉大国日本では、古くから温めることを多く行ってきているため、冷やす行為をタブー視されていました。
野球選手を例にとると、昔は肩を冷やすのは良くないとされていまいたが、今は試合後必ずといって良いほと冷やすようにまりました。これは、温めるか何もしないのに比べて、冷やすほうが筋肉痛・故障の予防に大きな効果を上げているからです。
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