股関節痛について
股関節痛は、股関節単独で発症する場合もありますが、腰痛や膝痛を同時に発症したり、腰痛後に発症するケースもあります。日常生活の中で歩くだけで痛い、くつ下がうまく履けないなど、腰痛と同じくらい股関節のトラブルに悩む方々が多くみられます。ここでは、股関節痛の症状の原因、症状の出現部位、当治療室で実施している手技的アプローチによる治療法を紹介します。
股関節痛の主な症状と発痛部位
そけい部の痛みで足をひきづるように歩く 長い距離痛くて歩けない 前傾姿勢になる
起立時痛 歩行時痛 階段上り下り時痛 直立姿勢で長くいると痛くなる 体が前かがみになる(後ろに反ることができない)
ゴキゴキ音が鳴る スポーツをすると痛くなる
脚の長さが違う 仰向けで膝を立てたとき左右差がある 骨盤が歪んでいる気がする
あぐらができない(痛い) 痛くてくつ下がうまく履けない 足の爪切りができない
自転車をこぐと痛い 車を運転しているだけでも痛い
和式トイレが使えない お風呂の浴槽を乗り越えるとき痛む(怖い)
など。
日常生活時の症状。同時に腰痛や膝痛が発症している場合もあります。
■股関節前面(●印 主な発痛部位)
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階段歩行時やボールをキックする動作時に痛む
■上前腸骨棘部
(大腿筋膜張筋 縫工筋 起始部 小殿筋前部繊維)
股関節の屈曲・外転・外旋時痛 あぐら時痛
■下前腸骨棘部
(大腿直筋 起始部)
股関節屈曲時痛
■大腿骨小転子前面
(大腰筋 腸腰筋 停止部)
股関節屈曲時痛
恥骨大腿靭帯
直立姿勢時でだんだん痛くなる
■大腿外側面部 (腸脛靭帯)
(大殿筋 停止部)
股関節の屈曲時痛 長時間直立位保持時痛
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■股関節後面(おしり側)(●印 主な発痛部位)
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歩行時や直立姿勢時でだんだん痛くなる
座っていてもだんだん痛くなることがある
■腸骨外面部
(大殿筋 中殿筋 小殿筋 起始部)
大殿筋は伸展時痛 中殿筋・小殿筋は外転時痛
腸骨大腿靭帯
■仙骨外側部
(仙骨前面 梨状筋停止部)
股関節外旋時痛
■大腿骨大転子部
(梨状筋 中殿筋 小殿筋 停止部)
股関節外転時痛 梨状筋は外旋時痛
大腿骨頭靭帯(深部痛)
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発痛部位は、症状や個人差によって異なる場合があります。
発痛点の名称を専門用語で「テンターポイント」「トリガーポイント」「ジョーンズポイント」などや「人の名前をつけた○○ポイント」などのの言葉を用いて表しています。。また、体表の位置の名称は「筋肉名」や「経穴(ツボ)」などで表しています。。
発症の原因(症状の部位および疾病名)
大腰筋・腸骨筋筋肉痛・肉離れ(後屈時の腰痛)
大腿四頭筋筋肉痛、縫工筋筋・肉痛肉離れ(ボール蹴り動作、走った時、階段歩行動作の筋肉痛)
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯筋肉痛・肉離れ(立っていると痛くなる、動くとゴリゴリ音がする)
大殿筋筋肉痛(お尻の痛み)
骨盤の歪み(左右の筋緊張の差で脚の長さに差がでる
梨状筋症候群(梨状筋の過剰緊張による臀部下肢の痛み・坐骨神経痛)
ゴルフ・テニスなどの回転運動後における腰痛・股関節痛・膝痛(スパイクを履いた状態での回転運動)
骨盤ストレス症候群 鼠径部周辺症候群(サッカー等スポーツ障害や過剰労働による骨盤周囲の筋肉痛・炎症痛)
(成長期では剥離骨折を疑う)
股関節周囲炎(五十股関節・六十股関節)(いわゆる四十肩・五十肩と同様症状が股関節で慢性的に発症し骨頭壊死に移行することがある)
腰椎すべり症に伴う大腿神経痛・坐骨神経痛(原因が特定されにくい症例 急速骨頭壊死型の原因?)
腰椎椎間板ヘルニアに伴う大腿神経痛・坐骨神経痛
腰椎圧迫骨折後遺症に伴う大腿神経痛・坐骨神経痛
脊柱管狭窄症に伴う大腿神経痛・坐骨神経痛
出産後の股関節痛(一ヶ月以上たっても治らない、元々の腰痛が悪化した)
骨盤不安定症(出産後の骨盤周囲の痛み)
股関節臼蓋形成不全
骨盤側凹の変形性関節症)
大腿骨頭変形症(凸部の変形性関節症、薬物による変形、骨粗しょう症による変形)
大腿骨頸部骨折後遺症に伴う股関節筋肉痛(手術をしないで治した症状)
ペルテス治癒後における関節可動域減少と関節筋肉痛
先天性股関節脱臼症(殿筋群の過剰緊張、廃用性障害)
痛風 糖尿病 内科的症状など。
※ 疾病名は過去に医師により診断されたものとなり、当治療室で診断したものではありません。
症状の程度によっては不適応となります。
重複して医師の治療を受診されている場合、医師の治療を優先します。
手技アプローチによる治療法の紹介
整形医師:股関節X−P MRI 股関節臼蓋形成不全 隙間間隔減少。
消炎鎮痛薬による様子観察。
腰X−Pは行っていない。
施術臨床症:軽度股関節臼蓋形成不全+L4腰椎すべり症による股関節周囲筋過緊張(いわゆる六十股関節状態)。疼痛継続・歩行時痛・関節可動域の減少・靴下がうまく履けない状態(写真は実際の患者とは異なります)。
■上前腸骨棘部カウンターストレイン |
■下前腸骨棘部カウンターストレイン |
■大腿骨小転子前面
カウンターストレイン |
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■股関節ストラップモービリゼーション(けん引法)
外側方向90°ヒップを使ってけん引 |
■股関節骨格模型(大腿骨屈曲90°)) |
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■仙骨外側部(梨状筋)カウンターストレイン |
■腸骨外面部カウンターストレイン |
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上記写真は、当治療室で実施している代表的な部位の操作法の紹介です。
操作方法は、発痛部位の位置の違い、症状の程度により患者さんの姿勢(術者の操作支位)が変わることがあります。
カウンターストレイン療法(PRT)は、痛みがある部位を触診しながら、痛みがなくなる方向に操作します。症状が消える位置で静止します。患者さんにとって負担が少ない安全な手法です。
ストラップモービリゼーション(ストラップけん引法)は、仰臥位、股関節90°屈曲状態でループ状にしたベルトを巻き、外側方向に体重を使ってストレッチ(けん引)を行う療法です。通常の腰椎間欠けん引法(機械の物理療法)よりも、短時間で効果が期待されます。患者さんにとって苦痛を伴わずに、安全に関節可動域が拡大され、鋭い痛みの減少に効果を発揮します。
カウンターストレイン、ストラップモービリゼーション(ストラップけん引法)の他に、筋エネルギー手技 筋ストレッチ あん摩・指圧などの手技を組み合わせて実施することにより、より効果が期待されます。熱感がある場合はクライオセラピーを合わせて実施しております。
施術を受ける側の患者さんにとって、療法の名称の区別がつかない場合があります。■手技の色々
股関節痛は、股関節・骨盤に付着する筋肉に関係しているため、それにつながる部位(腰・膝・肩・首)にも同時に症状が発生していることがあります。局所のみならず全体的な治療を必要とする場合が多くあります。
痛みが楽になった後に、自ら低下した筋力を回復させることが重要です。
筋力と柔軟性が回復するのに伴い痛みが発生しにくくなります。
■大腰筋プール内運動
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