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体験談「自分のからだは自分の頭で考える」

― 「静岡県健康生きがいづくりアドバイザー協議会」第9回定時総会での活動紹介で発表(2012年5月19日) ―
                         静岡県産業経済会館 第1会議室において


 私は20年前に旧清水市立病院で乳癌誤診の被害に遭い、裁判と平行して2000年に被害をなくす会を立ち上げて、今は主にホームページで活動を続けています。私の体験を通して自分の身体を守る大切さを伝えたくてアドバイザーになったので、このような機会をいただいて感謝しています。

  皆様が「健康生きがいづくりアドバイザー」として活動をするには、健康が基本となるわけですが、平和な日本の公立病院と裁判所で、癌ではないのに癌患者にされた私の体験を知っていただいて、これからの活動にお役立ていただければ幸いです。

  私の事件は、最近では201012月に発刊された『あなたの癌はがんもどき』の本の中に「がん患者を作り出す病院」「「医療詐欺」のカラクリ」の小見出しで、慶應病院放射線科の近藤誠医師が清水病院に勤務されたことがあるお立場から私のことを実名で書いていらっしゃいますので、参考にしていただければと思います。

 「癌の誤診」には癌の見落しと、良性なのに癌だとされるケースがあります。見落しの場合は、癌が大きくなったり再発や転移が生じてくるので誰でもわかりますが、良性を癌と誤診され誤切除された場合、再発や転移もないので真実が明らかになるきっかけがなく、真相は永遠に闇に葬られるし、かえって、医者のおかげで癌が治ったと感謝され、名医になってしまいます。私の場合はこの後者の、患者が気付かなければ発覚しないことを利用した事件でした。

  前置きが長くなりましたが、私は旧清水市立病院(今の静岡市立清水病院)で乳癌と言われて手術を受けましたが、どういう癌だったのかという私の問いに、「神のみぞ知る」としか答えてもらえず、真実を知りたくて主治医と清水市を相手に1996年に裁判を起こしました。最高裁まで12年間の裁判を経験しましたが、結局は知ることはできなかったし、私のDNAと一致しない、しかも日本人のものではない癌の標本で裁判所でも癌にされてしまいました。

  当時、私の主治医は、「医者がすすめる専門病院」の本やランキング本で紹介されたり、「ストップ乳がんキャンペーン」でテレビにも出ていたので県内では乳がんの名医として有名でした。提訴後に、「乳癌は清水の風土病」と病院職員の間で言われるほど手術件数が多かったことを知って愕然としましたが、私が体験した手口ならばいくらでも乳癌患者を作れると思っています。

  裁判は説明義務違反と腕の機能障害に対する損害賠償を求めて提訴しましたが、提訴後に明らかになったいろいろなことから、癌ではないのに癌だとして手術したと故意傷害の主張を加えました。元は単純な内容だったのですが、裁判になってから病院側が私を癌だとする根拠のない主張を次から次へ出してきたため、それらを覆すために複雑怪奇なミステリーもどきになっていき、地裁だけで8年かかりました。

  裁判の経験がないとわかり辛いと思いますが、民事裁判は、勝手に提訴と言われるように、誰でも裁判を起こすことができますが、訴えた人(原告)が証拠に基づいて主張を証明して裁判所を説得する作業です。ですから、裁判に勝ったとか負けたとかは、正しいかどうかは別にして、裁判所を説得できたかどうかということになります。

  裁判を起こす前、「嘘をついてはいけない」とか、「後出しジャンケンはいけない」は当たり前すぎて考えもしないで過ごしてきたので、裁判になってから病院側が嘘(根拠のない作り話)や後出し証拠を出して反論してきた時は本当に驚いたし、まさか裁判所がそれらを認めるとは考えもしませんでしたが、全部通用するのです。

  裁判についてはとても短時間で話せる内容ではないので、機会があればどうやって癌患者に仕立て上げられたのかお話ししたいと思いますが、きょうはポイントだけ紹介しておきます。

  私が遭遇した癌患者捏造のポイントは、「空白のカルテ」「初診翌日の生検」「病院側の弁護士」です。カルテは記載して書き直せば改ざん問題が生じますが、空白ならば改ざん問題も生じないし、後からいくらでも主張できます。そのために何も書かずに証拠を残さなかったとしか思えませんが、空白のカルテを見た時は恐怖だったし、それがまかり通っていた病院の体質にも驚きました。

  そして、初診の翌日に生検のためにしこりを採られたのですが、それは後から考えると、良性の証拠隠滅はできるし、病理標本を作るアリバイ作りはできるし、他人の癌の標本を登場させる機会もできるしで、名医が私を騙すとは夢にも思っていなかったので、2日間で癌患者に仕立て上げるシナリオにまんまと引っかかってしまいました。

  もう一つのポイントは病院側の弁護士です。当時、清水病院は複数(5件)裁判を起こされていて、どの裁判も地元の同じ弁護士を2人とか3人とか複数で選任していました。ところが、私の裁判だけ病院側の弁護士が東京から1人で来ていました。原告同士お互いに傍聴しあっていたので「なぜなのか?」みんなで不思議に思っていました。

  インターネットが使えるようになってから弁護士の名前で検索して驚きました。「ヒトゲノム解析研究に関する共同指針(案)検討委員会」や「戦没者遺骨のDNA鑑定連絡会議メンバー」というDNAに関する国の政府委員の1人だったのです。弁護士ではただ1人です。

  地方に住む一主婦が提訴した時点で、病院側はDNAについて国のトップにいる弁護士を単独で選任していたのです。ということは、訴えられればDNA鑑定になることがわかっていたとしか思えないし、情報漏れを心配して単独で選任していたと考えられますが、市が彼を選任した経緯は謎です。

  裁判の経緯はお時間のある時に会のホームページを読んでいただくことにして、きょうは私の裁判結果がもたらす影響についてお話しします。

  高裁になってから医師向けの乳癌専門誌の編集長が傍聴に来ていました。その理由は、「乳癌学会で竹下さんの裁判を注目している。癌の所見がなくても切っていいという裁判所のお墨付きが出るかどうか」ということでした。そのお墨付きが出たので、影響を心配しているわけです。上告棄却は2007です。

  もともと乳癌は病理診断が難しく誤診が多いと言われています。先ほどの編集長は乳癌と診断された標本を信頼できる病理医にセカンドオピニオンで診てもらうと3分の1は癌ではないとおっしゃっていました。しかも前述の『がんもどき』本で乳癌の1期は、モドキが9割と書かれていますから、本物の癌はほんとに少ないはずです。

  ところが、私の裁判の結果、癌の所見がなくても手術していいし、診断の根拠となる癌の標本は外国人の癌の標本で本人のDNAと一致していなくても、「癌によって変異」で、通用してしまったわけですから乳癌患者を増やす道が開けて大喜びする人たちが裁判結果を待ちかねていたわけです。

  ところで、「ピンクリボン」とか、私が被害にあった時代は「ストップ乳癌キャンペーン」でしたが、いろんな癌がある中で、乳癌検診だけ、どうしてキャンペーンをやって大々的にPRするのか考えたことがありますでしょうか?

  私は売り上げに結び付けやすいからだと思っています。乳房は一人に2つあるし、内臓と関係ないため切っても命に関わらないから切りやすいこともあるし、それに、手術に付随して関連業界がたくさんあります。薬や検査はもちろん、乳房再建があるし、リハビリ、リンパ浮腫のスリーブとか、カツラ、下着などなど。そして、一番重要なのは、女性は乳癌手術を受けたことを人には絶対に黙っていたいために、問題が表面化しにくく、医者はやりやすいから乳癌が売り上げの標的になっていると思っています。それで、キャンペーンで検診を促し、病院へ足を運ばせる。乳癌は増えていると言われますが、女性の弱みに付け込んで増やしているのは誰だと言いたいです。

  検診を推進する人たちは、医療者も受診者も「見落し」を心配してのことだと理解できます。検診の時なぜ見落したのかと、後から必ず責任問題が生じるからです。でも、検診が広まることで良性を悪性とされる誤切除が増えることを憂いています。

  実は良性を「悪性」と診断された場合、早期発見を喜びながら、手術を含めて、それなりの治療に進むはずです。その後、何らかの事情で良性だったとわかったとしても、よほどのことがない限り、患者には事実を知るすべがありません。世間一般では「良性を悪性と診誤る」ことは有り得ないと思い込んでいることや、被害者の情報がないことも、誤切除に気づきにくい一因かもしれません。

  私は疑問をそのままにしないで裁判を起こしたために誤切除を知ることができましたが、私が特別ではなく、病院側とすれば運悪くバレてしまったくらいの程度だと思います。

  患者予備軍のみなさまにとって私の話はとても違和感があって変な人に思われるかもしれませんが、標本のDNA鑑定のことで相談に行ったある国立大学の法医学教室の教授は「外科医が外国旅行にでも行った際に入手したんでしょ、切れば儲かりますから」といとも簡単におっしゃって呆気にとられました。

  「外国旅行の際に」というのは、私のものだと言って病院側が出してきた癌の標本が外国人のものだったことを指していますが、そんな標本を使うことも、「切れば儲かる」もごく当たり前の体質が医療界にあるということです。

  この発言をした教授は、病院側の弁護士と同様、DNAに関する国の政府委員の1人だったことを後から知りました。現在は科学警察研究所所長です。

  医療を受ける側からは想像がつかない考え方があるのです。だから、私たちは医療側からの一方的な情報を鵜呑みにしないで、自分の身を守るために自分の頭で考えて行動すべきです。

 ちなみに私のような誤切除から身を守る唯一の方法は「経過観察」です。見落としや手遅れを心配される方は、近藤誠医師が4月に出された『がんの放置療法のすすめ』をお読み下さい。癌は本物とモドキしかないことを知れば、あわてずにすむはずです。

  会のHPには乳癌検診に警鐘を鳴らすために、全国の誤診被害(良性を悪性)を15件載せていますが、これらは表面に出たほんの氷山の一角で、誤切除は特別なことではなく、全国であるし、また、病院によって対応が全く違うことを知って欲しいと思います。

  最近の乳癌誤切除のケースは、HPを通じて相談を受けたケースで、これから法的手続きをとるところなので今はまだ詳しくは話せませんが、乳癌と診断されて手術を含めて数年間治療を続けて、主治医が突然亡くなったことがきっかけで、乳癌ではなかったことを知った人がいます。関西在住なので大阪の弁護士を紹介しましたが、主治医の急死がなければ良性だったことを知る機会はなかったはずです。

  乳癌誤切除の被害者は手術を含めて治療の後遺症と精神的な苦しさで声を上げられる人はいないために、情報が一般に伝わることはなく、みなさんは知らないだけで、私は自ら情報発信しているために何人かの被害者を知っていますが、人間不信になって何年も外に出られない人もいます。私自身も口と外見は元気ですが、手術と抗がん剤の後遺症で一生苦しんで生活しなければならない状態です。だから、誤切除被害を若い世代に繰り返してはいけない、今伝えねばという強い気持ちでいます。

  HPには清水病院に関係した報道記事も載せています。その中に、昨年、子宮摘出手術で尿管を損傷した患者に損害賠償金を支払った記事がありますが、それを読んだ人が、母親が子宮の手術で同じように尿管損傷を受けたが医者はこんなことは初めてだと言ってるけど、同じ事例があったことをHPで知って驚いたという投稿が最近ありました。

  HPは、私の事件を風化させないこともそうですが、情報提供することによって、同じような被害を受けることがないよう注意を促す一助になればと思って活動を続けています。

  医療被害にあうと元に戻れないし、解決方法はないので、安易に医療機関に足を運ぶことを慎んで、みなさまが被害にあうことなく健康で生きがいを満喫して、天寿を全うできるようお祈りしています。


                               2012年5月19日 竹下勇子



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