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資料● 静岡新聞2012年6月8日付朝刊3ページ掲載東電OL殺害再審決定 静岡新聞2012年6月8日(3)面 □□再現実験 「最高裁はばかじゃないかと思った」 取り組んだのは、現場アパートで見つかり有罪の状況証拠となったコンドーム内のマイナリさんの精液が、犯行時のものかそれ以前のものかを突き止めること。複数のネパール人と日本人に協力を求めて再現実験し、精子の劣化状況を顕微鏡で観察する地道な作業の結果、犯行日より10日程度前のものと判明した。 しかし最高裁は03年、この鑑定に言及しないまま有罪判決を支持してしまう。「科学軽視」とも言える姿勢が生み出した悲劇だが、同様のケースは足利事件でもあった。 1997年、無期懲役判決を受けて最高裁に上告中だった菅家利和さんの毛髪を使って押田名誉教授がDNA鑑定したところ、菅家さんを犯人と同一とした警察庁科学警察研究所(科警研)の鑑定とは異なる結果に。この時も最高裁は有罪と認定したばかりか、後に不正確さが明確になった科警研の当時の鑑定方法に「信用できる」とお墨付きまで与えた。 押田名誉教授は「あまりに科学鑑定に無知な裁判官が多い。また、客観的に見て能力に疑問がある鑑定人が捜査機関に重宝されたりもする」と、司法の現状を批判する。 「率直に言って、科学鑑定の専門的な内容は、われわれには分からない」とベテラン刑事裁判官は打ち明ける。 “素人”の裁判官が最も戸惑うのは、複数の鑑定結果が食い違う場合だ。静岡地裁で死刑囚が再審請求中の「袴田事件」では昨年12月、検察側と弁護側がそれぞれ推薦した2人の専門家によるDNA鑑定が相反する結論に。地裁は2人に対し、追加でDNA鑑定を依頼する事態になった。 「裁判官はこれまで、DNA鑑定が抱える問題点などに必ずしも十分に精通していたとはいえないが、裁判員裁判が実施され、市民への分かりやすい説明が必要となってくることもあり、より精緻な知識が求められている」。元東京高裁裁判長の門野博法政大法科大学院教授は指摘する。
こうした現状を踏まえ最高裁は、科学鑑定を刑事裁判でどのように扱うべきか、裁判官と専門家による共同研究をスタート。その結論は、今夏にもまとまる。
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