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毎日新聞 2003年3月5日

[追跡]静岡 清水市立病院医療事故問題
ローテーション人事の弊害 /静岡

◇背景に医局制度−−「医師は腰掛け」との批判も

 昨年末、投薬ミスで男性が死亡する医療事故があった清水市立病院(重野幸次院長)では、これまでにも多くの医療訴訟を抱えてきた。病院は医療安全管理委員会を設置するなど対応策を講じているが、市民の目から見て体質改善が進んでいるとは言えない。その背景を探ると大学病院の医局に依存した医師派遣制度で医師が頻繁に入れ替わる「ローテーション人事」の弊害が浮かび上がった。【鈴木梢】

■■訴訟2件係争中

 同市立病院を巡っては90年以降、医療事故として同市、担当医を訴える損害賠償訴訟が7件起きており、現在2件は係争中。昨年末には、医師らの思い込みによる投薬ミスで無職男性(61)が死亡したほか、昨年3月にも内科医が心電図を見誤り、同市内の男性(84)の心筋こうそくを狭心症と誤診し、死亡する事故が起きた。
 99年には、医療訴訟が多いことや乳がん手術で多数の患者が腕や肩に障害を残していることなどが医療専門誌などに掲載され、その問題が市議会で取り上げられた。
 00年には病院の治療や対応に疑問を持つ遺族や支援者らが「清水市立病院から被害をなくしより良い病院にする会」(竹下勇子代表、会員83人)を結成。メンバーには、医療関係者もおり、悩みを抱える患者に助言を与えている。患者・遺族と病院の話し合いにも立ち会い、同市や病院に積極的に質問や要望書を出している。
 同会によると、90年以降の訴訟で少なくとも2件が「研修医」によるもので、そのほか病院が患者に医療ミスと認めたなかで、研修医が担当したものもあるという。昨年末の抗生物質の投薬ミスも、主治医は2年の研修期間を終えた「専修医」だった。

■■病院の対応

 重野院長は「病院も一生懸命にやっている。もっと分かってほしい」と繰り返す。医療事故の適切な処理を目的にした「管理会議」のほか、昨年7月には、院内に医療安全管理委員会を設置。医師が治療の手違いなどでヒヤリとしたりはっとする「ヒヤリハット」を経験した時に医務や看護など各部のリスクマネジャーに報告することを義務づけた。
 また院内7カ所には、投書箱を設置した。3年前から懇話会を設け、自治会や弁護士、大学教授を交えて病院の評価や意見も求めている。カルテ開示やリハビリ専門病棟の新設も懇話会での議論を反映させたものだという。

■■慶応大系列

 病院の体質が改善されない背景には「医局制度」がある。同病院は慶応大学病院(東京都新宿区・村井勝院長)の関連病院で、県病院協会発刊の要覧(02年度)によると、64人の医師のうち、重野院長はじめ23人が慶応大出身で、慶応大学病院から紹介されるシステムになっている。
 重野院長は慶応の医局に足しげく通い、人事面などの要望をしている。「人事は私たちでは決められない。この病院の医師が交代するのは、慶応の各診療科の科長が(医師を)循環させているから」(重野院長)だ。
 ローテーションの目安は2年。慶応病院によると、紹介する医師は医学部卒業後6年以内としているため、若い医師が多い。
 96年には同時に6件の訴訟を抱えたが、地方財務協会の地方公営企業年鑑(96年度)によると、同病院の医師の平均経験年数は4年で、県内19の市町村立病院の中で下から2番目。経験年数には改善の兆しがあり、重野院長は「なるべく短期間で人事を回さないようお願いしている」と話す。
 慶応病院の村井院長は「慶応が人を出すということではない。頼まれれば医師に声は掛けるが、本人との契約だ」と説明する。しかし、慶応病院のある医師は「清水は若い医師のローテーション病院の典型です」と指摘する。

■■市も口出せず

 「慶応詣で」は重野院長だけではない。宮城島弘正市長も慶応病院に出向き、「医師派遣」を要請する。しかし、人事には口出しできない。「病院は特別だから。(医師に不満があっても)どうしようもない……」と市幹部は漏らす。
 「清水に来た医師は腰掛け」と批判する同市立病院職員は「短期間で去ってしまうと意思疎通が図れない。(看護師、病院職員と)医師との信頼関係ができれば医療事故を減らすことにもつながると思う」と語る。
 また、1人の医師に対して複数の医療事故訴訟が起こされているケースもあり、元患者らは「同じ医師がミスを繰り返す『リピーター医師』の問題もある」と指摘している。
 「良い病院にする会」の竹下代表は病院側に注文する。
 「身内のかばい合いをせず、職員の研修で被害者の話を聞くなど病院内で問題を共有すれば、事故の教訓が生かせるはずです」

■清水市立病院の医療訴訟と事故

●91年 7月 出産時の陣痛促進剤投与ミスで男児死亡
●92年 4月 抗がん剤誤投与で死亡
●92年 8月 肝不全の誤処置で死亡
●96年 2月 乳がん手術で後遺症と説明義務違反
●96年 3月 脳しゅようの診断ミスで後遺症
●96年10月 出産時の切開ミスで後遺症
◎02年 3月 心筋こうそくの見落としで死亡
●02年 7月 直腸がん手術ミスで死亡
◎02年12月 抗生物質の投薬ミスがあり死亡

 ※●は損害賠償訴訟が起こされた医療事故、◎は病院が認めた事故
………………………………………………………………………………
■ことば

 ◇研修医

 大学医学部を卒業した新人医師は医師法で、通常2年間の臨床研修を大学病院かその関連病院で受ける。厚生労働省は04年4月から、研修を「努力義務」から義務化する。臨床研修を終え、さらに3年程度専門的な技術を学ぶのが専修医。(毎日新聞)

 

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