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毎日新聞 2005年2月8日朝刊

清水病院の医療事故:2年余を経て、遺族と示談成立へ
ミス一部覆し成立遅れ/静岡

 静岡市立清水病院(当時・清水市立病院)で02年12月に点滴すべき抗生物質が投与されず、旧清水市内の男性入院患者(当時61歳)が死亡した医療事故は、事故後2年余を経て示談が成立する。事故の発覚後、記者会見で病院側は診療ミスなどがあったことを認めていたが、遺族との話し合いで一部を覆し、示談の成立が遅れた。「病院に誠意があれば、こんなに長引くことはなかった」。病院で何が起きていたのかはっきりつかめぬまま、遺族は示談の日を迎えることになる。【鈴木梢】
 男性患者は同年10月12日に肺炎で入院したが、症状が回復したとして11月30日に退院した。だが、血圧や体温の低下でショック状態になり、12月23日に再入院した。感染症と診断され抗生物質の点滴を始めたが、注射指示伝票に記載漏れがあり、点滴は4日間投与されず同30日に死亡した。
 翌年1月15日の記者会見で、重野幸次院長は点滴ミスがあったことを認めた。さらに、細菌に対する炎症反応の血液検査では正常な状態の50倍の数値が出ていたにもかかわらず、退院させた主治医の判断をミスと認めた。しかし、そのわずか1週間後に開かれた遺族との話し合いでは、一転して「退院させた主治医の判断は誤っていなかった」と文書で示した。
 遺族はその書面に納得できず、病院あてに質問状を出し始めた。宮城島弘正市長(当時)にも面会し、原因究明への協力を求めた。死亡する以前から病院の治療に疑問があった遺族は、治療に対する不審点を記したノートや開示を受けたカルテを基に病院側代理人の弁護士を含めて7回、質問と回答のやりとりを繰り返した。だが、「改めて回答する必要はない」との代理人の返答で真相究明の努力は行き詰まり、最終的には遺族側が立てた代理人との話し合いで示談が決まった。
 7日の記者会見で、病院側は「抗生物質が注射されなかったことが症状を悪化させる要因になった」と述べた。退院の判断ミスもあったという点を覆したことについては「会見後に院長や主治医らで院内検討会を開き、退院はおおむね妥当だったと判断したため」という。示談まで2年余を要した理由は「文書のやりとりを繰り返したので時間を要した」としたが「遺族の質問にはきちんと答えた」と話した。
 同病院を運営する静岡市は、遺族に対し慰謝料1100万円を支払うことを市議会2月議会に提案する。しかし、「なぜ、死ななければならなかったのか」という遺族の疑問は消えないままだ。

 

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