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竹下裁判●並木意見書(甲110号証)甲第110号証 意 見 書 今般、東京高等裁判所での株式会社ティーエスエルによる鑑定書を見せていただき、スライドAとスライドBとの同一性について問われました。その点についての回答とともに、私の若干のコメントを付するものとします。 記 1 スライドAとスライドBとの同一性は、これだけみてもすぐにはわかりません。追加検索のため深く切り込んだ標本ですので、切片の面が異なりますから違いはあるとしても、組織の配置が異なっているように思えます。これだけでは判断出来ないというのが正直なところです。 2 次に私の気がついた点についてコメントします その結果は私のご提出している鑑定書のとおりでありますが、私の病理組織診断は、当時のWHO分類(第2版、1981)に従い「乳管内成分が優位の浸潤性乳管癌」でした。この診断名は新しいWHO分類(第3版、2003)ではなくなり、「非特殊型の浸潤性乳管癌」に一括されました。日本の乳癌取扱い規約では「乳頭腺管癌」です。 具体的な所見は以下のとおりです。 「本例の場合、腫瘍全体の面積が最大割面でほぼ12×7=84muであるのに対し、浸潤癌の部分は2ヶ所ありますが、3×2=6muと2×2=4muの合計10muでありますので、乳管内癌対浸潤癌の比は74対10で、この条件を十分に満たしています」。つまり、およそ8分の1の部分が浸潤癌であったわけです。これは大変重要な所見です。 これに対して、今回のTSLが提出した記録を見る限り、スライドB(これが今回薄切して作成した標本)には、浸潤癌の部分がまったく出ていません。『(2)パラフィン包埋組織「3-3817」から作成したHE染色標本(スライドB)』の写真にある癌組織はいずれも非浸潤癌です。 私が提出した鑑定書の最後に「付図」として添付した4枚の写真がありますが、この中の図1の中の中央やや右寄りにみられる浸潤癌を接写したのが図4です。浸潤癌と非浸潤癌の違いはこの図をみても一目でわかります。ですから、標本全体をみれば直ちにこの存在は判明する筈です。浸潤癌があるかどうかで、病理組織診断は全く異なります。 以上の理由から、TSLが提出した写真だけでは、私が鑑定した対象と同一の組織に由来するものであるかどうか確認ができません。仮にTSLの診た標本に浸潤癌が全く存在しないということであれば、それは別の組織と言わざるを得ません。 以上 並木 恒夫 |
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