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竹下裁判

控訴審書面一覧

 DNA再鑑定決定後、(株)ティーエスエルが鑑定機関として決定した後の書面一覧です。
NO 日付 タイトル 概要

(1)

2004
09/28
上申書 進行協議の内容の確認と追加で協議を要する事項

(2)

11/09 上申書(病院・小坂側) パラフィンブロック薄切に際しての立会いについて

(3)

11/09 鑑定事項に関する意見書 鑑定対象となる組織の同一性に対する確認要求ほか

(4)

12/24 鑑定に関する上申書 鑑定にあたっての留意点と複数鑑定についての意見

(5)

2005
01/14
鑑定に対する上申書
(病院・小坂側)
DNA鑑定にあたって、STR法による鑑定優先要望と、試料の汚染を心配し作業に配慮を求める

05/27 裁判所から鑑定事項

04/05 裁判所から鑑定の進捗状況報告

(6)

06/24 意見書 鑑定の中間報告を受けて今までの経過と今後の方針についての意見

(7)

06/29 補充意見書 鑑定の中間報告からすると鑑定の意味をなしていないためティーエスエルの鑑定中止を求める。鑑定対象となった組織の同一性比較対照のためのプレパラート返還を要求

(8)

07/08 鑑定に関する上申書
(病院・小坂側)
ティーエスエルの鑑定は中止せず、鑑定書を提出させるべき

07/11 裁判所からティーエスエルに対して鑑定続行、鑑定書の作成・提出を求める決定

(9)

07/19 意見書 鑑定続行の決定を受けての意見

(10)

07/25 補充意見書 ティーエスエルに対しての要望事項

(11)

08/31 ティ―エスエル鑑定書(全文)

(12)

09/04 再鑑定申請書 ティーエスエルの鑑定結果では原審鑑定との比較ができないため再鑑定を申請

(13)

10/18 上申書 ティーエスエルが鑑定に用いたプレパラートの返還要求

(14)

10/19 並木意見書
(甲110号証)
原審病理鑑定に使われた標本とティーエスエル鑑定に用いられた標本とで病理診断に疑問があるため同一組織由来か確認できない

(15)

10/31 鑑定申請書 ティーエスエルの鑑定に用いられた試料と原審鑑定に用いられた試料との同一性確認のための病理鑑定を申請

(16)

薄切こぼれ話
(甲111号証)
薄切した標本の連続性をカラー写真で示す

(17)

10/20 鑑定に関する上申書
(病院・小坂側)
これ以上の鑑定は不要

(18)

10/28 中村意見書
(病院・小坂側)
深く切り込んだ標本は切片の面が違ってくる

(19)

10/31 鑑定に関する上申書
(病院・小坂側)
並木意見書に対する反論

(20)

10/31 病理鑑定の申立補充書 病院・小坂側上申書に対する反論と組織の同一性確認のための病理鑑定の必要性

(21)

病理標本の倫理問題
(甲113号証)
「組織マイクロアレー法」の存在

(22)

慶應大学医学部三四会会員名簿(甲114号証) 病院・小坂側主張関係者の関係を示す

(23)

12/26 当事者照会申立書 中村意見書(18)の中村雅登医師についての照会

(24)

2006
1/5
回答書(病院・小坂側) 上記照会(23)に対する回答

(25)

1/11 準備書面(病院・小坂側) 従前通り

(26)

1/11 上申書 現状の説明と審理継続要望

(27)

3/6 控訴審準備書面(1) 事実関係を記し、乳癌と診断したことに根拠がないことを明らかにすると共に、原審の判断が誤りであることを指摘

(28)

3/6 控訴審準備書面(2) ティーエスエル鑑定の問題点を列挙すると共に、支倉・佐藤鑑定の再評価

(29)

3/6 控訴審準備書面(2)補充・PDF版

(30)

3/6 控訴審準備書面(3) 損害について、劣悪な手術によるものと抗癌剤によるものと主張

(31)

3/6 控訴審準備書面(4)・PDF版 控訴されている部分について反論

(32)

3/6

準備書面訂正の上申

(27)、(28)の書面(訂正済み)

(33)

3/6 新たな鑑定申請書・PDF版 地裁鑑定との対比のためにミトコンドリアDNAでの鑑定申請

(34)

ティーエスエル会社概要(甲115号証)・PDF版 エスアールエルの100%出資子会社である

(35)

エスアールエルとティーエスエル合併(甲116号証)・PDF版

(36)

保土ヶ谷事件の概要(甲117-1号証)・PDF版 同じく標本のDNA鑑定が問題となっている事件の概要(外部リンク:保土ヶ谷事件の概要

(37)

保土ヶ谷事件の書証(甲117-2号証)・PDF版 ティーエスエルの同じ鑑定人が標本からの核DNAを解析できず技術不足を認めている

(38)

保土ヶ谷事件原告側最終準備書面(甲118号証) ティーエスエル鑑定は参考にならないと断じている

(39)

ご質問に対する回答(甲119号証)・PDF版 ティーエスエル鑑定で核DNAが検出されてミトコンドリアDNAが検出できなかったことへの疑問と、原告が日本人の特徴的な塩基配列をもっていることを研究結果と比較してのご意見

(40)

当事者紹介申立書(甲120-1号証) 一覧の(23)と同じ

(41)

回答書(甲120-2号証) 一覧の(24)と同じ

(42)

手術写真6人分(甲121号証) 被告医師の乳癌手術を受けた他の患者の写真

(43)

質問及び回答書(甲122号証)・PDF版 地裁鑑定の鑑定人が、今回、ティーエスエルが核DNAが解析できて、ミトコンドリアDNAの検出ができなかったことへの疑問と、前回の鑑定結果を癌の影響では説明が困難であることのご意見

(44)

4/17 弁論再開申立書・PDF版 控訴審終結後、ティーエスエル鑑定について新たにわかった事実をもとに弁論再開を申し立て
(45) 報告書(資料1) 別件でティーエスエルが鑑定を断わっていた事実の報告

(46)

押田意見書(資料2)・PDF版 ティーエスエル鑑定に証拠価値なしと指摘

(47)

警察学論集第49巻12号33頁以下(資料3)準備中

(48)

報告書(資料4)・PDF版 民間検査機関の聴取結果報告

(49)

4/24 弁論再開申立補充書(1) 事実経過をあらためて見直し、控訴人が乳癌である証拠が何も無いことの確認

(50)

4/24 弁論再開申立補充書(2)・PDF版 ティーエスエルが関係した3件の鑑定経過をまとめた表

<控訴審の経過概要・その1 2005年12月30日>

 静岡地裁で行われたパラフィンブロックから切り出された組織のDNA鑑定(東京医科歯科大)では、核DNAは検出されず、ミトコンドリアDNAが検出された。それを解析したところ、解析できた270塩基中、原告竹下の血液とは塩基配列が3カ所異なっていた。そのことから、病院が地裁に提出した、唯一癌である証拠とされた永久標本は「原告のものではない」と、原告側は主張した。
 ところが、地裁判決では何ら科学的根拠を示さず、塩基配列が3カ所異なったのは癌による突然変異によるものだと判断し、原告は癌だったとして原告の主張を退けた。

 控訴審では、地裁でのDNA鑑定結果をはっきりさせるために、原告側は標本にある癌組織と正常組織を分離して、核DNAとミトコンドリアDNAの鑑定を行うよう申請した。もし地裁判決通り、原告が癌であり、ミトコンドリアDNAの3カ所の塩基配列の違いが癌による突然変異であるならば、「癌組織では塩基配列が原告のものと3カ所異なる」「正常組織では塩基配列が原告のものと一致する」という結果になるはずである。

 東京高裁は原告の主張を認め、再鑑定を行うことになった。鑑定人は裁判所が推薦した(株)ティーエスエルに決まり、病院側は標本(パラフィンブロックとスライド標本)を提出した。

 原告側が再鑑定に際し、もっとも危惧したのは、地裁鑑定で提出された標本と同じものが高裁に提出されたのかどうか(同一性)ということだった。スライド標本は地裁判決後に裁判所から病院へ返却され、パラフィンブロックとともに病院に保管されていたため、何らかの工作が施されているのではないかと疑った。(書面一覧の(3)(4)を参照)

 鑑定試料の同一性を確認するために、潟eィーエスエルには病理での確認を求めた。それに対してティーエスエルは、病理医が確認すると言ったが、鑑定人に決まった途端に消極的な発言にかわり、病理医が逃げ腰になっていていい返事がないが、技師でもわかるし、DNAレベルでみるということで、鑑定実施に至った。

 そして、2005年9月に鑑定結果が出た。鑑定結果から原告は、前回鑑定試料との同一性に疑問を抱き、前回と今回のDNA鑑定に使われた標本を病理診断で比較するため、10月に病理鑑定を申請したが、裁判所は却下した。

 地裁での病理鑑定は並木医師が鑑定人となり、スライド標本に基づいて、「浸潤癌」と診断し、顕微鏡写真を証拠として提出した。病院側が高裁に提出した標本が地裁に提出したものと同じであるならば、並木鑑定人と同じ診断になるはずだ。

 ところが、今回、病理鑑定を申請するにあたって、TSL鑑定書にある鑑定試料の2枚のスライド標本カラーコピーを並木医師が診たところ、浸潤癌があったはずなのに写真に写されている部分には非浸潤癌しかないことがわかった。そこで、鑑定試料の同一性を確認するためには標本全体を見なければわからないという並木医師の意見書を原告は鑑定申請書に添付した。それにも関わらず、裁判所は病理鑑定を認めなかった。(書面一覧の(14)(15)を参照)

 TSL鑑定では、ひとつの細胞に1個しかない核DNAが検出され、数百から数千あるミトコンドリアDNAが検出されず、地裁鑑定とは全く反対だった。
 そして、地裁鑑定では原告と標本とではミトコンドリアDNAで塩基配列が一致せずに、今回のTSL鑑定では核DNAで一致したという相反する結果に疑問が生じる。

 

<控訴審の経過概要・その2 2006年5月8日>

 控訴審のほとんどの時間を費やした潟eィーエスエルによるDNA鑑定は、地裁DNA鑑定結果を検証する目的を果たすことができなかったと共に、鑑定そのものにも疑問を生じる結果となった。

 その疑問を解明する過程で、潟eィーエスエルが立場上に問題があった(親会社が被告病院の管理下にあった)ことや、同じ鑑定人が保土ヶ谷事件では核DNAを検出解析できず技術不足を認めて謝罪していたことが判明し、鑑定人として不適切であったことがわかった。(書面一覧の(28)(34)(35)(37)(38)を参照)

 控訴審の終結に向けて、ティーエスエル鑑定の問題点も含め、今までの主張を整理して準備書面を提出。ティーエスエル鑑定で叶わなかった地裁DNA鑑定結果検証のためのミトコンドリアDNAでの鑑定を申請したが却下され、控訴審の弁論は終結。判決日が言い渡された。(書面一覧の(27)(28)(29)(30)(31)(33)を参照)

 ところが終結後、潟eィーエスエルが別の事件で、作成から10ヶ月しか経っていない乳癌組織のパラフィンブロックの鑑定を断わっていた事実が判明した。他方、竹下裁判のティーエスエル鑑定書を専門家が検証したところ、証拠価値ゼロということがわかった。それらの報告書と意見書をもとに、弁論再開申立書を提出した。裁判所に対して、弁論を再開し、ティーエスエル鑑定の見直しを求めると共に、控訴人を乳癌と断定する証拠が何も存在しないことをあらためて確認することを求める書面を提出した。(書面一覧の(44)(45)(46)(49)(50)を参照)

 控訴審で新たに法廷に提出されたものはティーエスエル鑑定書だけといっていい。しかし、この鑑定書は前述したように証拠価値がゼロであることを控訴人は明らかにした。
高裁は、控訴人の弁論再開申立てにどのような判断を示すのか、申立ての訴えを棄却し判決を下す場合、ティーエスエル鑑定書についてどのような判断を示すのか、大いに注目されるところだ。

 

<書面に出てくる用語説明>

パラフィンブロック・・・生検で切り取った組織を薬品処理してからパラフィンで固めたもので、このブロックから薄く切り出してスライド標本が作られます。再鑑定にあたって病院側は厚さが0.2〜0.3oしかないと主張していましたが、提出されたブロックはその10倍程の厚さがありました。

スライド標本・・・・・・顕微鏡でみるためにパラフィンブロックから組織を薄く切り出してスライドガラスにのせた標本。

検乙1・・・・・・・・・初診翌日の生検で切り取った組織から作られたとされるスライド標本で癌組織あり。

並木鑑定人が診た標本・・検乙1と同じパラフィンブロックから切り出された標本。同時に切り出された標本が地裁DNA鑑定で使われている。

スライドA・・・・・・・検乙1と同一であることを前提としている。

スライドB・・・・・・・TSL鑑定(高裁DNA鑑定)に際して病院から提出されたパラフィンブロックからTSLで切り出された標本。同時に切り出された標本がDNA鑑定で使われている。

弁論再開申立・・・・・いったん口頭弁論を終結しても、再開することができる。「すなわち、口頭弁論終結前に主張すべき当該事実を知らず、かつ、知らなかったことにつき帰責事由がないうえ、判決の結果に影響を及ぼす可能性のある重要な攻撃防御方法である場合、その提出の機会を与えないまま敗訴判決を受けると、既判力によってもはや救済が不可能となってしまう。かかる場合、裁判所は弁論を再開すべきである(最高裁56・9・24)」

 

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