竹下裁判
●控訴理由書(2) 〜事実認定について〜
第1 原審の事実認定のあり方について第2 原審の具体的事実認定について
1 平成3年12月27日喜納教授による病理診断
2 家族に対する説明日の設定及び家族への説明について
3 1月6日喜納教授の診断
4 小括
第3 控訴人の鑑定人との接触について
第4 まとめ
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第2 原審の具体的事実認定について
4 以上指摘した点は、判決の結論に重大な影響を及ぼす事実誤認であるが、これは、本書面の冒頭に述べたように、原審判決が、控訴人が乳癌ではないということは否定できないという結論を強引に導くために、証拠に基づかない事実認定を行ったという姿勢の表れである。
判決の結論に重大な影響を及ぼすかどうかは別にして、原審のこうした姿勢が現れている点を以下に指摘することにする。
(1) 初診日の検査内容について
a 初診日である平成3年12月26日に、小坂が控訴人に対して実施した検査について、原審は以下のように判示する。すなわち、
「なお、この日、被告小坂は原告のプロゲステロンレセプター及びエストロゲンレセプター(いずれも女性ホルモン受容体)の検査を行っている(乙1p4、乙12)が、」(原審判決4頁)
b しかしながら、小坂は控訴人に対する初診時には上記検査を実施していない。しかも、以下のとおり、検査を実施していないことを小坂自身が自認しているのである。
小坂調書@482〜484
「これはどういうつもりで書いたんですか。」
「これは、要するに26日でこういうことをやるというふうにしましたので、外科的生検をやるということをしましたので、ここにこういったような形を、処方を、こういったことの検査及び薬剤の投与をしようということで書いたわけです。」
「今後こういうことをやっていくという予定を書いたということですか。」
「予定を書いたということです。」
原審は、客観的資料にも存在せず、小坂自身も実施を否定している検査の存在を認定しているのである。
(2) 術前検査について
a 術前検査について、原審判決は以下のように判示している。すなわち、
「なお、同様の検査は、前日の6日にも、前々日の5日にも行われている」(原審判決13頁)
b しかしながら、術前検査は1月5日には実施されていない。
控訴人は、平成4年1月4日午後1時15分から翌5日午後8時まで自宅に外泊中であった。このことは、乙2号証40頁に明確に記載されている(看護記録)。控訴人が1月5日に自宅から病院に戻ったあと、検査を実施したとの記録は診療記録上のどこにも存在しないし、1月5日が日曜日であることからして、外泊から帰院した日曜日の夜8時以降に術前検査を実施することは常識的にあり得ない。
乙2号証40頁(看護記録)には以下のように記載されている。
「20時 帰院 特に苦痛の訴えなし」
「24時 不眠訴う」
c 記録のどこにも検査を実施したとの記載はない。
(3) 癌であることを控訴人が自認しているとの認定について
a 原審判決は、
「なお、本訴の第5回口頭弁論期日(平成9年1月16日施行)において、原告側は『癌の性状の点を除き、原告が癌であったことは認める』と陳述している。」(原審判決17頁)
と判示している(原審判決17頁)
b このことを、原告が癌であることを認定する根拠の一つにしているとすれば、原審の不当性は極めて大きいといわなければならない。平成9年1月16日に実施された口頭弁論期日以降、控訴人は乳癌ではなかったことに重点をおいて主張を詳細に展開してきたわけであるし、乳癌ではなかったことを立証するために鑑定手続を行ったのである。こうした裁判手続を一切無視して、平成9年1月時点での口頭弁論調書に基づいて、控訴人を乳癌と認定する原審の態度は、本書面第1で論じたとおり、初めに結論を決めていたといわなければならず、厳しく非難されなければならない。
c 貴庁に対する2004年(平成16年)6月9日付上申書において、このような記載が調書になされた経緯を説明したとおり、「ガンの性状の点
を除き、原告は標本がガンであったことは認める。」という内容が正しいものである。
原審も、被控訴人側も、上記のような経緯を十分に承知していたはずであり、原審が上記のような調書記載を「控訴人が乳癌であること」を認定する一資料としたことは極めて不当であるといわなければならない。
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