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竹下裁判●『判決の真実』米本和広はじめに1.争いのない事実および標準診断 2.判決文の構成にみられる偏頗性 3.証拠採用の偏頗性 4.手術と傷害の関係について 5.「65万分の1」の確率 6.死人に口なし 7.竹下裁判控訴審の意義 2.判決文の構成にみられる偏頗性<注>判決の問題点の各論に入る前に、判決文の構成上の問題点について触れておきます。 通常の判決文の構成は、以下のようになっています。 「主文」 判例タイムスなどを見ればわかりますが、だいたいがこのような構成になっています。双方の主張の中でまず「争いのない事実」を特定したうえで、「争いのある事実」について争点整理し、争点ごとに客観的に原告と被告の主張をまとめ、そして最後に裁判官が自由心証形成主義に基づいて判断を指し示す。この構成は、原告被告双方に対して公平であり、理論的にも認識論的にも納得できるものです。 これに対して、今回の判決文は、以下の通りです。 「主文」 この判決文の「第二、事案の概要等」では、通常の判決文にある「争いのない事実」は省略されているばかりか、双方の「争点整理」とそれぞれの「主張の整理」は行なわれておらず、いきなり裁判所の認定記述となっています。「第四、原告の主張について」で竹下さんの主張のごく一部を恣意的に取り上げていますが、客観的記述ではなく、ここでも裁判所の解釈・判断を交えて記述しているのです。「第四,原告の主張について」は、正しくは「第四、原告の主張、それに対する当裁判所の判断」とすべきです。 判決文は、一読すれば実にストーリー性に富んだものになっており、竹下さんの訴えは根拠のないものという印象を受けるはずです。それはその通りで、判決文のほとんどが裁判官の恣意的認定・解釈・判断によって構成されているからです。逆に言えば、この判決文を読んで、竹下さんと市・小坂氏双方の「争いのない事実」「争いのある事実」はなにか、争点に対するそれぞれの主張はなにかを客観的に知ることは困難です。おそらく、法律家でも列挙することは難しいでしょう。それほど偏頗的な構成になっているのです。 <注>偏頗(へんぱ)は控訴理由書に使われている用語です。意味は「上に立つ者の、人の扱いなどがかたよっていて、公正さを欠く様子」。難解な熟語ですが、判決文にはまさに「偏頗」の言葉がふさわしいと思います。 |
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